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「自分の絵」を見つけるまで

私が現在の絵に至るまでに、自分の絵について悩み、試行錯誤した時期があったので、今回はそれを記事にしたいと思います。
拙い文章の上、長文になりますが、読んでいただければ大変嬉しいです。


1.きっかけ


転機となったのは、2018年の3月、装丁家の鈴木成一さんが講師を務められている「鈴木成一装画塾」(当時:鈴木成一装丁イラストレーション塾)を受講したことでした。

もともと小さい頃から絵を描くことが好きでしたが、どこかの学校に通って絵を学んだわけではなく、完全に独学で絵を描いていた私。

師事する先生もいないため、一度自分の絵を客観的に見てもらい、講評を得る機会がほしいと思っていたこと、そして何より、私がイラストレーターとして活動する上で一つの目標としているのが書籍の装画を描くことだったので、思い切って受講を決意しました。

鈴木成一装画塾は、実際に刊行される書籍の原稿を課題とし、実際にその書籍の装画を受講者が制作、それを鈴木さんが講評しブラッシュアップしていき、書籍の装丁として採用される可能性もある実践的な講座です。
ポートフォリオファイルの講評もあり、私も当時の絵を見てもらいました。

当時の私の絵は現在とは絵柄もタッチも異なっていて、少し恥ずかしいのですが、現在の絵と比較する意味でも掲載します。

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↑こんな感じでした。


そして、それに対する鈴木さんの講評がこちらです。

「画力はあるが、絵に既視感がある」
「法則的で型にはまりきってしまっている」
「説明的すぎて読者の想像力を邪魔する」
「描き込みすぎて抜けがない」

などなど…。

鋭いところをズバズバとご指摘いただいて、自分がまだまだ未熟だったことを痛感しました…。

「絵に既視感がある」「型にはまっている」というのは、自分でも少し自覚していた部分があり、指摘されて「やっぱり…」という感じでした。

漫画などの影響が強い絵だったため、既視感があることは否めませんし、思えば今のイラストはこういうのが流行っているという固定観念があったため、流行りの描き方や塗り方に固執していた部分があったように思います。

装画に正解はありませんし、漫画や流行りの絵が悪いわけでももちろんありません。

ただこの講座を受講して、鈴木さんの講評や他の受講者の方の絵を色々拝見するうちに、「絵の表現というのは本来はもっと自由なものだ」ということを思い出しました。

それから、改めて「自分の絵」とは何かということを考えていくようになりました。



2.悩み、そして気づく


しかし、「自分の絵」とはいったものの、
私らしい表現ってなんだろう?
私の個性ってなんだろう?
私の絵はどういうふうにすれば装画に使ってもらえるんだろう?

と思い悩むことになります。

やっぱり私の絵ではダメなのかなぁ…と、どんどん自分の絵に自信を持てなくなっていく日々…。


そんな私を救ってくれたのが、Twitterでみつけたこちらのツイートでした。

ベテランのイラストレーター・山田博之さんの言葉です。


自分の好きな絵」「自分が楽しめる絵」という考えは、この時まで頭にはありませんでした。
イラストレーターなのだから自分の好きな絵ばかり描いていてはいけないと思い、まさに私は仕事に繋がる絵というのを求めて悩んでいました。
自分が楽しい描き方でなければ、途中で苦しくなって結局は長く続かないものだと気づかずに…。


さらにこちらの言葉にもハッとさせられます。


タッチは作るものではなく、もともと持っていて作品に表れるもの。
どう描いてもそうなってしまうもの。
人格から滲み出るもの。
そして、それが「個性」

目から鱗でした!


今までの描き方は果たして楽しかっただろうか?
私の好きな描き方だっただろうか?
思い返せば苦しかったように思います。

こういう塗り方をしたら綺麗に見える。
絵が上手い人、売れてる人はみんなこういう描き方をしている。
だからこうすべき!

やはりそういう固定観念があって、自分と他人を比べてばかりいたような気がします。
それが逆に私自身のいいところ(個性)をつぶしていたのかもしれません。


個性はすでに持っている。
じゃあ後は好きなものを楽しく描けばいい。


そう思って、もう一度素直に好きなもの、描きたいものを描いてみることにしました。

着物、日本髪など和風なものが好き。
猫が好き。
日本画の表現が好き。
人物を描くのが好き。


そうやって当時描いていたものがこちらになります。

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3.成長


そしてその年(2018年)の夏頃、装画塾でお世話になった鈴木成一さんの装画コンペが開催されたので挑戦してみました。
どんまい』(著:重松清 氏)という小説の装画を描いて、採用されれば実際に本の表紙となって刊行されるコンペでした。

小説を読んだイメージを素直に描いてみようと思いながら制作し、応募した作品が以下の2枚です↓

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結果は落選でしたが、後日メールで送られたコンペに対する鈴木さんの総評や講評を見ると、なんと私の作品を優秀作品の一つとしてあげてくださっていたのです!

装画塾を受講したあとの数カ月間、悩んだ日々は決して無駄ではなかった、と純粋に嬉しく思いました。

落選はしたものの、このコンペは私にとって成長を実感できた意義のあるものとなり、大変良い経験となりました。


それ以来、描いていきたい方向性も見えてきて、これが「自分の絵」なんだと自信を持てるようになりました。


その頃描いた絵で、個人的に今でも気に入っている作品がこちらです。

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オリジナルイラスト:「寝子守り」


自分の好きを詰め込んで、とても楽しくかけたのを覚えています。
そしてこの作品が今でも絵を描く上での指針になっています



ちなみに、次の年の2019年にもう一度鈴木成一さんの装画塾を受講したところ、前年とは打って変わって好評価をいただくことができました。
(前年と絵柄が違いすぎていたので「去年ってどんな絵だったっけ?」と困惑もされましたが(笑))

「こうすべきだという観念がまだある」など、まだまだ改善点はあるのですが、「自分が『好き』なものは大事だから、得意なものを伸ばしなさい。」というお言葉をいただき、とても励まされました。


好きなものを大切にする。楽しく描くことを忘れない。


やはりそれが「自分の絵」に繋がっていくのだと実感できました。


お仕事では、時には苦手なものや描いたことのないものを求められることがあると思います。
それでもこのことは常に心に留めて置こうと心がけています。

今では絵を描くことが前よりももっと好きになり、とても楽しいです。
他人の絵と比べて苦しむこともなくなりました。


大切なことに気づかせてくださった鈴木成一先生、
イラストレーターの山田博之さんには感謝の気持でいっぱいです!
本当にありがとうございます!


そして現在の私はというと、イラストレーターとしてお仕事を得るために、営業を地道に続けているところです。
昨今の情勢で、なかなか積極的な営業はできませんが、そんな今だからこそこうして改めて当時のことを思い出し、記事にまとめることで初心に帰ることができました。


あくまでこの記事のことは私個人が経験して感じたことなので、他の方の参考になるかどうかはわかりません。
別の考え方やご意見もあるかと思います。

ですが、少しでも同じように絵について悩んでいる方の解決の糸口になればとても嬉しく思います。


最後まで読んでいただきありがとうございました!



いただいたサポートは、イラストレーターとしての活動費として大切に使わせていただきます。