「お先真っ暗な日本の科学技術研究」

   日本の科学研究に関する人材が急速に縮小している。
文科省研究所がまとめているデータでは、2018年(17~19年の平均値)の科学論文の影響力や評価を示す指標でインドに抜かれて10位になった。一位は中国24.9%、米国は22.9%日本はわずか2.3%だ。
90年代は3位だったが、00年代半ばから急落している。これは5年前のデータだから、まだ落ちているはずだ。
低迷のきっかけは04年の国立大学の法人化を挙げる声は大学関係者の中で多い。博士号取得者も日本だけ減少している。中国が研究者の数も最多の210万人、米国の155万人を大きく放す。19年の研究開発費は54.5兆円と10年間で2倍以上、首位のアメリカ68兆円には及ばないが増加ペースは上回る。中国は米欧の大学などに積極的に若者を留学させ、08年には「千人計画」を開始し、海外在住の優れた研究者を招聘した。
日本は人口100万人当たりの博士号取得者数が米英独韓4か国を大きく下回る。この時期に減少しているのは中国を加えた6か国中日本だけだ。
英国(6,390人)、韓国(6,338人)、米国(6,156人)日本(4,539人)
OECDは22年10月、日本の高等教育費のうち学生の家計が負担している割合が52%で、OECD平均(22%)の2倍超だとする報告書を出した。政府支出に占める小学校から大学までの教育機関への2019年の公的支出は7.8%でOECD平均(10.6%)を下回った。GDPに占める割合でも日本は3.0%でOECD平均4.4%より低かった。
 政府は教育に金を出さない。高等教育は家庭で負担させるという方向を辿ってきた。その結果、教育の場での格差がグングン広がっているのだ。
そして、大学などで研究に携わっている人たちは、研究費などが年々削られていく現状にあえいでいる。その結果、研究現場では様々な物騒なことが起こっている。
 例を挙げると、岡山大学教授が執筆したガンの研究論文で113か所に亘る数値の改ざんやデータ捏造が見つかった。さらに、JAXAでも研究論文に多数の不正が見つかり、責任者の宇宙飛行士が懲戒処分を受けた。こうした種類の不正が最近、頻繁に新聞を賑わすような事態に陥っている。
 それは、研究領域での資金が削減されたうえ、成果を上げられないとさらに削減されることにある実態が、このような不正に手を染めざるを得なくなっているのだ。そして、そのような研究の場に進む若者の意思を挫き、博士課程に進学する学生数が減らざるを得なくなっているのだ。
 資源のない国日本の将来展望は、高度な科学技術というのが、戦後一貫した考えだったと思うが、今や政府首脳は、そんな考えは一切持たず、ひたすら教育に関わる予算、研究に関わる費用を削減しようとしているのだ。
 

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