黒い雨
あくびも引っ込む。気味悪い夜。
電気を消して布団に篭り、夢を待つ。
ふと目が痒くなり、擦ると小さな粒が取れた。
(うわっ… 目垢取れてなかったんか…)
日中ずっと目垢を残したまま、昼食目当てで外出したことを後悔した。
でもおかしい。
朝食を終え、歯磨きした後に顔を洗ったはず。
もし取れてなかったのだとしたら、お化け屋敷のカップルのようにしっかりとしがみついていることになる。
そんなことを考えていると、また目に粒のようなものが現れた。
(これは目垢ではない… 頬にも、顎にも、髪の毛にも現れてくる)
正体を知るために明かりを付け、布団を見渡す。
そこには数百ほどのごま粒のような羽アリがびっしりと蠢いていた。
天井を見上げる。
そこにも大量の羽アリ。
屋根があっても部屋に雨が降る。
環境汚染の影響のように、黒くて小さい。
疲れ切った身体を起こし、ドットのように散らばる黒胡麻をつまんで外に逃がす。
抑えすぎて潰れてしまう者、
手を床に置いたとき潰された者、
痒みで身体を掻いてるうちに潰された者
この部屋で羽化した者の運命なのだ。
何匹か見ていると必死に生きるために動いている様子に感動してしまった。
そのせいか、蛍光灯の裏に殺虫剤を撒きながら罪悪感が湧いた。
作業が終わり、窓を見る。
この部屋で生まれ、外へと旅立っていった羽アリ達に、なぜか応援していた自分がいた。
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