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今年の抱負は『もう一度、耳をすます』でした。–2019年の終わりに お礼の言葉に代えて

今年の抱負『もう一度、耳をすます』

こんばんは、青砥です。2019年の1月「みちのく事業ブラッシュアップキャンプ」で、自分の抱負を問われてスケッチブックに記入したのが、「もう一度、耳をすます」という言葉でした。

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2019年は、2015年にコミュニティ・カフェ EMANONの取り組みをはじめて5年目。運営の中で、思うように高校生が集まらない、スタッフへの意思疎通がうまくいかない。組織が続き、人員も入れ替わる。

5年前に作った仕組みで続けてきたカフェ。人員も利用者も入れ替わる中で、仕組みをアップデートしなければいけないと感じていました。そしてアップデートするからには、どこかのコピーではなく、当事者である「地域の高校生」のニーズに寄り添うことからはじめるべきだ。そう考えて書いてみたのが『もう一度、耳をすます』なのでした。

わたしは復興ボランティアから事業をはじめたわけでもなく、スタートアップ起業家として事業をはじめたわけでもありません。人文地理学と農村社会学のインタビュー調査をベースに、個々人の当事者性から浮かび上がる社会と地域の問題を解決するためには何ができるのかを考え、至ったのが現在の「高校生びいきのカフェ」。巨大で構造的な問題はすぐには解決できないけども、実践的な仕事をすることで、目の前の当事者の抱える問題だけでも解決したい。その出発点は、目の前にいたひとりの高校生であり、地方の高校生だった自分自身でした。

ひとりの限界、だから次の場所へ

そのためにできることはやってきたけれど、そのために生まれた問題のために、目の前の高校生といられる時間がここ数年はどんどん短くなってきました。組織を安定させるために、新しい業務を取る。地域の中で意義を伝えるために、できる限り頼まれる役割を果たす。スタッフの教育のために時間をとる。目的のために時間をかけるが故に、出発点である当事者に向き会うことができない。目的のためにつくった仕組みを続けるための労力が、雪だるま式に大きくなっていった感覚がありました。

しかし、個人に向き合う時間がないと感じる一方で、もっと多くの高校生のために働きたいという思いもあります。小さなカフェで接することができる高校生は、個人名にすれば毎年十数人。

メディアの人から、学術の人から、行政の人から、地域の人からかけられる期待の声は、一人でも多くの高校生のために頑張って欲しいという応援の声だと感じてきました。2019年は、NHK Eテレデビューさせていただいたり、ついに首都大院で地理学の修士号をいただいたり、福島県庁の雇用労政課や社会教育課や広報課の方とお仕事をご一緒させていただいたり、西郷村川谷の集落の方や白河本町商店街の方と議論をさせていただいたりしました。

自分一人が、個人個人に向き合うのは、限界がある。

だから、今年こそ必要だと確信したのが、高校生にとっての先輩を、増やすこと。青砥やカフェのスタッフだけじゃなく、高校生の声に耳をすましてくれる先輩が、常にこの街に関わり続けてもらう仕組みをつくること。

そうして生まれたアイデアが、「何度でも戻ってくるゲストハウス」こと、ゲストハウス ブランです。高校生に寄り添ってくれる、歳上の大学生や社会人が街にいるためには、大学がない街に大学生が集まりやすい、居心地の良さが必要じゃないか。車がなくても、あまりお金がなくても、白河に滞在できて、白河の街の人と出会える宿があれば、きっともっと、地元の高校生にとって、プラスになると思ったのです。もちろん、これから白河に関わりたい都市部の住民にとっても。

「僕は白河を信じたい。だから、ゲストハウスをつくる」

アイデアがあっても、お金はない。エフライフの小笠原さんの支援を受けて、クラウドファウンディングに挑戦することを決め、2月に本格的な準備をはじめました。

そして、一緒にクラウドファウンディングに挑戦してくれたのが、中井と春山の2人のインターン生でした。自分のアイデアの構想を伝えれば、プロジェクトの想いは伝わるだろうと思っていた自分に、「本当に室長が伝えたい言葉はなんですか?」と突きつけてくれた21歳と20歳は、後にも先にも2人だけです。

自分の自画像写真をクラウドファンディングのチラシに載せることになるとは思わなかったのです。自分に自信がないわたしに、クラファンの応援メッセージを地域の人から集めてくれた中井と春山が、「室長自身が、言葉を書かないとダメです!」と突きつけてくれました。

そして最初に出てきたのは、「僕はまだ、信じていない白河を」という言葉でした。カフェを続けてきた僕もまだ、この場所が永遠に続くとは、信じられない。そんな言葉が自分の中から出てきたのです。

そこでチラシのラフを作っていた時、叱責してくれたのが、法政大の藤代裕之先生でした。「それはリーダーの言葉じゃない」「人にお願いをするときは、その人自身が(達成後の)未来を信じていないのはありえない」という趣旨の声をかけていただき、決まったのが「僕は白河を信じたい。だから、ゲストハウスをつくる」でした。

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自分が責任をもって、自分の写真を添えたチラシとサイトで、自分が信じる未来の街へ協力をお願いする。迷いながらも、背中を押してくれたインターンとスタッフのおかげで、クラウドファウンディングをはじめられました。

ありとあらゆること(地域の会合への出席、母校の同窓会でのスピーチ、NHKとJ-WAVEをはじめとするメディア出演、SNSでのシェア、メールでのお願い、地域の人への挨拶回り、いわき・郡山・東京・横浜での各種イベント企画etc..)をさせていただき、結果的に350人、目標金額140% 420万円のご支援をいただきました。

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個人のキャリアに寄り添う地域と社会を目指そう

自分一人が、個人個人に向き合うのは、限界がある。

そのためのアイデアのひとつがゲストハウス。その片鱗は、まわりの大学生たちがもうすでに見せてくれました。夏のシンポジウムと進学相談カフェイベントで、進学した大学生たちがボランティアとして白河でがんばってくれました。東大に進学した富井くんが、授業の仲間を白河に連れてきてくれました。インターンの高田は、次のインターン生を2人も連れてきてくれました。

そして、もう一つ必要だと考えて身につけたものがあります。国家資格のキャリアコンサルタントです。自分にとっては教員免許以来となる国家資格を12月に取得しました。地域で高校生が学ぶ意義をきちんと定義し、専門家としてその意義を伝えることで、もっと多くの人に高校生・若者の声に耳をすませて欲しい。そして、それを促すリーダーとして、自身の事業や主張に責任を持ちたいと考えて、資格試験の勉強を進めました。

耳をすますという目標は、必ずしも果たせませんでした。やっぱり今年も忙しくて、高校生の声に耳を傾ける時間は、どうしても長くとれませんでした。

でもその代わり、湯澤・沢田をはじめをするスタッフとボランティアの大学生たちが、耳を傾けてくれました。でもその代わり、ゲストハウスプロジェクトをはじめることができ、すでに都市部からたくさんの若者が白河を訪れてくれました。でもその代わり、専門家になるための第一歩として、国家資格を取得することができました。

ということで、2020年の抱負は、なんとなく見えてきました。ひとり、ひとつの組織の限界を感じたからこそ、やりたいことがあります。具体的には、来年になってから書き出します(笑)

すべてのご支援いただいた方、一緒に働いてくれた仲間、施設を利用してくれた皆様にお礼を。そして、いつも身近で支えてくれた大切な人が、今年のすべての仕事の背中を押してくれました。本当に、いつもありがとう。

皆様よいお年を。そして、2020年も、よろしくお願いします。



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