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地域の担い手育成 若者への伴走支援 鍵に(河北新報 座標 2021.8.21掲載記事)

白河市では2012年から、ゆかりの大学生が実行委員会を務めるイベント「Shirakawa Week」が開催されている。今年(2021年)は「白河若者会議」と称したフォーラムを開き、高校生と大学生、鈴木和夫市長、有識者らが登壇し、若者と地域というテーマで議論した。

フォーラムには、現地とオンラインを合わせて約200人が参加。白河市出身の小林友里恵さん(東京大文学部4年)が、若者と地域を巡る政策や事業の担い手に、若者の「イノセンスな感覚」と向き合うことを主張した。


小林さんが引用したイノセンスな感覚は、社会評論家芹沢俊介氏が唱える根源的な受動性を指す概念だ。子どもは生まれてくる社会を選べない故に、その社会課題を引き受けられない、という心の在り方だ。この考えを基に東日本大震災からの復興や地方創生が、若者の社会観にどのような影響を与えているか、検証の必要性を訴えた。

その上で小林さんは、人口減少の解決策として若者のUターン移住が推奨され、規範化してしまっている現状のほか、「震災の被災地出身の子どもは復興を背負わなければならない」という責任感と葛藤があることを指摘した。

私も同感である。若者自身が、どうありたいか、どう生きたいか、という以前に復興や地方創生という巨大な社会課題の担い手として「あるべき姿」が設定されている。そのことが、若者が社会に対して無力感や無関心を抱くことにつながっていると思う。

若者には生まれる以前の地域を巡る過去の政策や出来事に関しては責任がないはずなのに、その課題の解決を若者に背負わせるという構図が生じている。 私たち大人は、そうした中でなお、復興や地方創生を、若者に期待せざるを得ないという現実の矛盾を認識することが必要だ。

若者が社会課題の「責任を引き受ける」という思いに至るには、社会の中で周囲に承認される経験を通じて、自分が人間関係の中で重要な存在である、と確信できることが不可欠だ。その環境を提供することなしに、若者が地域社会の課題に対して無関心であることを批判できない。

若者が伸び伸びと地域に関わり、地域社会と互恵的につながれる未来を私は望む。その鍵となる概念が「ユースワーク」だと思う。若者に寄り添い、問題を抱えた際に自らの力で解決できる力を獲得できるような伴走する支援だ。

私と小林さんとは、彼女が高校生の時に、わが法人が運営する高校生の地域における活動拠点「コミュニティ・カフェ EMANON(エマノン)」で出会った。そこで私は、高校生に対するユースワーカーを務めている。高校生を個人として尊重し、対話することを出発点に、意見表明や自己表現できる場をつくることを目標にしている。

まずは「あるべき姿」をいきなり押し付けるのではなく「ただ、そこにいていい」ということに若者が気付くことができる場をつくりたい。その手段がユースワークだ。若者が、かけがえのない固有の存在として社会の一員であると感じられる地域を目指していきたい。


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