見出し画像

守備戦術理解の欠如

スペイン人指導者がアジア人選手の印象という問いに対して、口を揃えていう事の一つに【守備戦術理解度の欠如】があります。

トップの正解を見ても、ここにつまずく日本人選手がほとんどなのが現状です。

2シーズン前に、私が帯同するチームに11歳のフォワードの韓国人選手がいました。足元は天下一品で、コーディネーション能力も高いですし、みなさんが想像するようなテクニックがあるタイプの選手です。

しかし、チームのプレッシングの行方を左右するフォーワードのプレスの掛け方が理解できず、監督からすると「使いにくい選手」となっていました。

日本人の選手たちも同じ傾向にあると私は考えます。やはり、プレーしていて楽しい攻撃のセッションが増えたり、テクニックアクションのトレーニングが増えがちですが、やはりこれは共通することですがバルセロナのチームを見渡しても、結果を出しているチームはまず【守備戦術】が徹底されていて失点数が少ないチームです。

プレシーズンに行うトレーニングの割合も守備とセットプレーが80%、攻撃が20%と言ったところでしょうか。

私自身も、バルセロナでの1シーズン目はそこで失敗しました。

やはり自分のやりたい理想のサッカーを求めるばかり、守備戦術の浸透が疎かになり失点数が増え悪循環となっていました。

そんな守備戦術、小学生年代の学年から徹底してトレーニングすることは重要なことだと感じます。

今回は少し実際に私が小学生年代の現場で行っている一日のセッション(トータル3つ)の紹介をさせて頂きます。

テーマは「個人戦術」。その中でも守備のモーメントで多く見られるアクション「カバーリング」をテーマとした1日のセッションの紹介をしていきます。

さて、今回のテーマ「個人戦術」ですが皆さんの中でのこの言葉の定義はどのようなものとなっているでしょうか。

SNS上でも、【個人戦術】やら【集団戦術】やら【グループ戦術】やら言葉だけは飛び交っていますが、実際のところ各戦術の定義・状況をどこまで自分の中で整理できている指導者は少ないように思います。

ちなみにカタルーニャサッカー協会の資料では、「個人戦術とは、ボールと相手が関わった基本的な状況(1vs1 2vs1 1vs2)の中で行われる個人のアクションのこと」と定義されています。

こちら、バルセロナのクラブではこの「個人戦術」に掲げられるアクション項目は大抵のクラブで、小学生年代(7人制サッカー)の間に身につける必要があるとして認識されています。


セッションテーマ 【カバーリング】 ※7人制サッカー


さて、それでは実際のセッション内容に入っていきます。尚、セッションの様子動画は一番下にリンクを貼っておきますのでそちらと照らし合わせながらご覧ください。

◆セッション 1

メソッド:アナリティック
トレーニング形式:サーキット
プレー状況:1ライン間の関係性
フェーズ:守備
局面:組織的守備
戦術的意図:前進を防ぐ・ゴールを守る
戦術アクション:カバーリング
テクニックアクション:コントロール・パス
自チームシステム:1-3-2-1

画像1


キーファクター:

 【選手個人のコーディネーション】
●カバーリングをする際に体の向きを整える。何のために→ボールとマークの位置の両方を認識するため。
●センターバックのカバーリングの位置は、サイドバックに対して斜めにポジションをとるが、サイドバック側に張り付いてしまうのではなく中間ポジションをとる。何のために→相手フォワードのマークとの距離感も保ち見失わないため。
●逆サイドのサイドバックは、センターバックと同じ高さにポジションをとるかもしくは、少しだけ後ろのポジションをとる。何のために→もしサイドチェンジがあった際に、センターバックに対して斜めうしろにポジションを取りすぎるとプレッシャーに出る際に間に合わない。(試合をするグランドのサイズ次第でこのキーファクターは変化あり。)


説明
オレンジ色の三枚は、センターバックと両サイドバックの設定です。真ん中にいる黒色がコーチで、1人に対してパスします。例えば、ボールが左サイドバックに渡った場合、残りの二人はボールがある位置に対して各自、カバーリングの動作を行います。ボールを受けた選手は2タッチ目でコーチに返した後、再度ポジションに戻ります。コーチの掛け声があったと同時に、一斉に3人ともが前にでて、各場所に設けられているコーディネーショントレーニングを行います。真ん中選手はコーチと壁パスをし、シュートまでいきます。(コーディネーションはお好みで変更可能)


◆セッション2

メソッド:システミック
トレーニング形式:オレアーダ
オレアーダ形式とは?
• 基本的に2チームに分かれて行い、一方方向的に一方のチームが攻撃し、もう一方のチームが守備をする形式。
• プレーの継続性がない
• 実際の試合中の、非常に具体的な局面を強調してトレーニングするのに有効
• 出てくる現象や局面が限定される
※3つのOleadaの実現方法
① 最大1つのプレー局面
例)敵なしで行う(アナリティコ)、ボールを奪われたら終了
② 最大2つのプレー局面まで続ける
例)ボールを奪われても、奪い返すかボールが外に出るまでプレーを続ける
③ 最低4つ、最大6つのプレー局面まで続ける
ボールを奪われても、奪い返しにいく。もし奪い返すことができたら、再度プレーを続ける

プレー状況:1ライン間の関係性
フェーズ:守備
局面:組織的守備
戦術的意図:前進を防ぐ・ゴールを守る
戦術アクション:カバーリング
テクニックアクション:コントロール・パス
自チームシステム:1-3-2-1
相手チームシステム:1-2-3-1

画像5

キーファクター

【選手個人のコーディネーション】
●カバーリングをする際に体の向きを整える。何のために→ボールとマークの位置の両方を認識するため。
●センターバックのカバーリングの位置は、サイドバックに対して斜めにポジションをとるが、サイドバック側に張り付いてしまうのではなく中間ポジションをとる。何のために→相手フォワードのマークとの距離感も保ち見失わないため。
●逆サイドのサイドバックは、センターバックと同じ高さにポジションをとるかもしくは、少しだけ後ろのポジションをとる。何のために→もしサイドチェンジがあった際に、センターバックに対して斜めうしろにポジションを取りすぎるとプレッシャーに出る際に間に合わない。(試合をするグランドのサイズ次第でこのキーファクターは変化あり。)

【グループ間コーディネーション】

●サイドバックがボールに対してプレッシャーに出た時、センターバックは斜めにカバーリングのポジションをとるが、必ず相手のフォワードのポジションを確認する。
●サイドバックの選手は、ボールに対してプレッシャーに出る際、必ず一度背後を確認し、センターバックのカバーリングが間に合ってるかを見る。もし、間に合っていない場合はボールに対して奪いに行くのではなくセンターバックがポジションにつくための時間稼ぎをする。間に合っている場合、積極的にボールに対してプレッシャーに行く。

説明
4対3+キーパーのオレアーダ形式。攻撃チームは、もしフォワードの選手にパスが渡りゴールすると、2ポイント。サイドのコーン間を通過しゴールした場合1ポイント。守備チームは奪った後、ライン通過を試みる。

◆セッション 3

メソッド:システミック
トレーニング形式:試合
プレー状況:2ライン間の関係性
フェーズ:守備
局面:組織的守備
戦術的意図:前進を防ぐ・ゴールを守る
戦術アクション:カバーリング
テクニックアクション:コントロール・パス
自チームシステム:1-3-2-1
相手チームシステム:1-2-3-1

画像4

キーファクター

【選手個人のキーファクター】
※ 前セッションと同じ

【グループ間コーディネーション】
●サイドバックは、ボランチの選手がプレッシャーに間に合っているかどうかで相手のフォワードとサイドハーフに対して取る距離感を判断する。もし、間に合っていて、相手ボランチがフォワードの選手に対してパスコースを持っていなかったら、相手サイドハーフとの距離感を縮めてサイドでボールを奪うことを試みる。しかし、初めのポジショニングは常に中を閉じながら相手のフォワードへのパスコースを閉じ、ボールが動いている間にサイドハーフに対してプレッシャーに行く。

説明
4対4の試合形式。チームの選手の数によってはフォワードをもう一枚加えても良い。
ノルマ:
両サイドのレーンには攻撃側の選手は1人しか入れない。守備側にはこのノルマは無し。



今回紹介させていただいた、トレーニングはアナリティックな要素が多いため、プレシーズンなどに行うことが多いです。

本当に基本的な部分ではありますが、ここの基礎を備えずに11人制に上がってしまい苦労してしまう選手も多いことも事実です。

特に、守備戦術に関してはアジア人に最もかけている部分だとも言われています。
上のカテゴリーに上がり、そこで選手が苦労しないよう、小学生年代からのアプローチが優先されることだと私は考えます。





画像2

画像3

【MLT】
公式HP:https://www.barcelonamltcamps.com
公式IG:https://www.instagram.com/mltcampsbar...
公式FB:https://www.facebook.com/Mltbarcelona...
公式TT:https://twitter.com/mltbarcelona19

日本人とスペイン人のスタッフで構成されるMLTは、バルセロナを拠点に置くスポーツ団体です。日本のサッカー発展に貢献するため、バルセロナと日本を繋ぐツールになるべく活動しています。日本サッカーが発展するためには、①育成年代の改革 ②サッカーを見る・学べる環境作り ③指導者のレベルの底上げ が優先して必要だと思っており私たちのコンセプトでもあります。

現在は、バルセロナで小学生年代に向けたMLT テクニフィケーションスクールを開催したり、夏に日本で指導者向けカンファレンスやサッカーキャンプを開催しております。詳しくは、我々のホームページにて活動内容を掲載しておりますのでどうぞご覧ください。

MLT 創設者 紹介

【高田 純】
2014 年高校を卒業後、バルセロナに渡り2015年には、スペイン指導者ライセンスレベル2(日本のA級相当)取得。近年では、クラブUEコルネジャで小学生年代チームの第一監督を務める。

-指導経歴-
2014-2015 CLUB フピテルU-12 セカンドコーチ
2015-2016 CLUB フピテルU-12 セカンドコーチ
2016-2017 UE コルネジャ U-12 第一監督
2017-2018 UE コルネジャU-11 第一監督,U-12 第二監督兼アナリスト
2018-2019 UE コルネジャU-11 第一監督,U-14第二監督兼スカウティング
2019-2020 UE コルネジャU11 第二監督

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?