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”事前調査”がチームにもたらすものとは

バルセロナの街クラブの小学生年代では一般的に存在する“スカウティング”の役職について少し紹介したいと思います。

今、SNSなどをみていてもよく”アナリスト”や”スカウティング”のような言葉が自分の役職ということで飛び交っているのをよく見かけますが、皆さんの中でしっかりとした役割の分別はできていますか?

私は大まかに下のような形で分別化をしています。

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チームによっては、スタッフの人数に余裕がありビデオの撮影をするようなアシスタントも構えているかもしれません。

自分も3シーズン前、クラブのU12のAチームにスカウティング(アナリスト)兼アシスタントコーチとして1シーズン帯同させてもらい、とても貴重な経験と学びがありました。

小学生年代におけるスカウティングの役割・仕事内容と11人制の上のカテゴリーにおけるスカウティングでは少し違いがあるかもしれませんが、今回は自分が経験したものをもとに7人制年代における、スカウティングの役割について紹介します。

主なスカウティングの仕事内容としては、
① 自チームの試合ビデオ分析・資料作り
② 相手チームの試合ビデオ分析・資料作り
③ 毎週月曜日に行う練習前のビデオセッション
の大きく分けて三つがあります。

自分が行っていた内容としては、①の自チームの試合分析では5つの局面(攻撃・守備・攻守の切り替え・守攻の切り替え・セットープレー)に分類し分析をし、ロンゴマッチ(ビデオ編集ソフト→指導者学校で使い方の授業が行われる)でビデオをカットしパワーポイントとして作成し月曜日のビデオセッションまでに準備していた形となります。

週に3日(月曜日・火曜日・木曜日)1時間15分の練習時間だったのでこの分析をし、見えた課題を月曜日の練習で修正するのに活用し、火曜日・木曜日は週末の相手を想定しながらのセッションを行うといったルーティンとなっていました。

②の相手チームのビデオ分析というのは、週末対戦する相手の分析となります。
自分は第一監督から最低2試合は見て分析するようにと言われていたので、相手チームのカレンダー表を見て2・3試合逆算し試合を見に行き、ビデオを撮影していました。(バルサは5試合強制的に見るらしいです。)

この対戦相手の分析も①と同じで、撮影しにいったビデオを元に5つの局面に分けて資料を作成してから第一監督に提出し、スタッフ全員で1週間のプランニングを立てるといった流れです。

そして最終的にはそれぞれ作成したものを③のビデオセッションで選手の前でプロジェクターを使い練習前に見せるようにします。(カタルーニャのクラブではビデオルームを設けているチームが多くそこでビデオセッションや、トップチーム監督の記者会見などが行われたりする)。

このビデオセッションは週の一番頭の月曜日の練習前に30分間行い、先週末に起きた課題と修正点をチームとして確認し、それと同時に週末の対戦相手のインフフォメーションをチームとして共有します。
しかし、注意する点として相手チームの情報を週の頭に与えすぎないということがあります。

あまりにも具体的すぎるインフォメーションを子供達に与えすぎると、セッション中にそればかりが頭に残ってしまい、選手の中で混乱が生じてしまうからです。
相手のビデオも行いますが、本当に基本的な相手のストロングポイントやウィークポイントがどこにあるか・ビルドアップもしくはプレッシングの基本的陣形の共有のみを行い、大まかな1週間のプランニングを伝える形となります。

具体的にどのようにしてビルドアップ・プレッシングを行うかに関しては、実際の練習中にピッチで選手たちにアプローチしていく形となります。
※1週間の流れは図参照

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ビデオ分析を行うことのメリット

僕が実際スカウティングとしてチームに帯同しこのビデオセッションを1シーズン行った中で見えたメリットというものが大きく2つあります。

1つ目は、「チームとしての情報の共有化」です。

このビデオセッションを行うことで、選手たちの間で週末の試合で持ちたい狙いというものがより明確化され、1週間の練習の中でもやらなければならないことを自然と把握することができます。

もちろん、サッカーというスポーツは複雑性が多く伴われ、予想した状況が起きることも多くなく、相手チームもこちらが用意したビルドアップに対してすぐにシステム変更を交えて対応してくるのですが、大事なのは4パートしかないこちらの7人制サッカーの中で、大事な1パート目試合の入りの部分で相手のインフォメーションを獲得しながらプレーができ、試合をコントロールできる確率が上がるということです。

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2つ目は「セットプレー対策」です。
昨年行われたロシアW杯でも注目され改めてその重要さを再認識されたセットプレーですが、ここバルセロナの小学生年代でもその重要さはかなり高く、1週間のどこかのタイミングで最低でも15分間をセットプレーの練習に費やします。

各チーム、いくつかのパターンを持ちサインプレーで試合でも行うのでそういったセットプレーの相手の行うパターンを試合前から把握し、対処法を練習から行うことで、実際に失点を防ぐ回数が増えたりセットプレーからの得点が上がったことは結果として表れていました。

正直自分も3シーズン前に小学生年代におけるスカウティングの役割を知るまでは、ここまでのことが小学生年代から行われているとは思っておらず、必要性も低いものだと考えていました。

しかし、実際にやってみた中で多くのメリットが発見できチーム・選手にとても役立つものなんだなと感じました。

日本の現場ではなかなかリーグ戦が整備されていない環境の中で、相手の分析というものは難しいものなのかなと思います。

しかし、自チームの試合分析はビデオを使いながら行えるものかもしれません。
その日に起きた課題・修正点次の週に改善するサイクルを1年間続けることで、選手個人またはチームとしての改善につながると思うので、ピッチ内で見えるものとはまた違った角度から試合を見ることのできるビデオ分析は推奨できるものだと思います。


※貼った画像はセットプレー時の相手の守備・ダイレクトプレー時のシステム変更・相手プレッシングの掛け方です。これらはあくまで例ですが、だいたい各試合の資料を作る際、パワーポイント20ページほどの量となります。(5つの局面・基本フォーメーション・ストロング,ウィークポイント・各選手の利き足情報etc...)

これらの作成した資料をもとにスタッフ間でミーティングを行いプランニングを作り上げていきます。

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【MLT】
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日本人とスペイン人のスタッフで構成されるMLTは、バルセロナを拠点に置くスポーツ団体です。日本のサッカー発展に貢献するため、バルセロナと日本を繋ぐツールになるべく活動しています。日本サッカーが発展するためには、①育成年代の改革 ②サッカーを見る・学べる環境作り ③指導者のレベルの底上げ が優先して必要だと思っており私たちのコンセプトでもあります。

現在は、バルセロナで小学生年代に向けたMLT テクニフィケーションスクールを開催したり、夏に日本で指導者向けカンファレンスやサッカーキャンプを開催しております。詳しくは、我々のホームページにて活動内容を掲載しておりますのでどうぞご覧ください。

MLT 創設者 紹介

【高田 純】
2014 年高校を卒業後、バルセロナに渡り2015年には、スペイン指導者ライセンスレベル2(日本のA級相当)取得。近年では、クラブUEコルネジャで小学生年代チームの第一監督を務める。

-指導経歴-
2014-2015 CLUB フピテルU-12 セカンドコーチ
2015-2016 CLUB フピテルU-12 セカンドコーチ
2016-2017 UE コルネジャ U-12 第一監督
2017-2018 UE コルネジャU-11 第一監督,U-12 第二監督兼アナリスト
2018-2019 UE コルネジャU-11 第一監督,U-14第二監督兼スカウティング
2019-2020 UE コルネジャU11 第二監督

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