2020年9月最新 プレーモデル作成において成功できた5つの作成手順 作成スピード2倍
※まず初めに今回の記事に書かれている内容はあくまでも個人の見解・フレームワークとなっていますのであらかじめご了承ください。
本日紹介する内容は、題名にもある通り【プレーモデル作成のフレームワーク】の紹介となります。
実際に現役指導者の私が、現役コーディネーターいわゆるクラブのプレーモデルを作成する立場の人間から話を聞きながら自分なりに少しアレンジを加えたプレーモデル作成のフレームワークとなります。
これから、指導者キャリアをスタートさせたり監督を務めていくあなたに必要となる【プレーモデル】作成をスムーズにする5つの作成手順となります。
指導現場でも即役立つ、そして今すぐにでも活用できるフレームワークを発信しますので是非最後までご覧ください!
プレーモデルへの考え方
そもそも本題に入る前に、この「プレーモデル」に対して多くの意見があることも事実です。
「そもそも必要なのか?」「選手の判断を妨げてしまうのではないか?」など多くの意見があります。
私自身も、以前にバルセロナの指導者学校での学びを終えた後はプレーモデルの重要性をかなり教えられたことから、プレーモデルは絶対に必要なものなんだと思うようになり翌シーズンに自分が率いたチームでもそこだけを実現さえようとした結果、選手たちのその場その場での判断がなくなってしまい失敗した経験があります。
他にも、以前「イニエスタの恩師」でも有名なアルベルト・ベナイジェス氏とお話をさせていただいた際も、彼は「プレーモデル」への反対意見を語られていました。(その当時の詳しい内容は下の記事からご覧ください。)↓↓
様々な意見が飛び交うことは事実ですが私は一定のプレーモデルの存在は選手のプレー判断を促進すると考えています。
今回はそんなプレーモデルの作成プロセスの内容となりますので必要と思う方はぜひご覧ください。
プレーモデル作成の前に知っておくべき3つのコト
それでは早速作成手順の紹介に入っていきたいところですが、実際にプレーモデルの作成に入る前にみなさんが知っておくべき重要なコト3つを順番に話していきたいなと思います。
①プレーモデルには2つある
まずは、プレーモデルには2つの種類が存在することを理解する必要があります。
一つ目は、「❶クラブが所有するプレーモデル」と二つ目は「❷チームが所有するプレーモデル」です。
これらの二つのタイプは全て背景(コンテクスト)によって変わるものになります。
例えば、FCバルセロナのようなクラブだと❶のタイプのようにクラブに所属する全てのチームが同じプレーモデルを活用します。
なぜなら、背景にトップチームに選手が昇格したときに同じアイデア・コンセプトを理解しておいて欲しいといった意図があるからです。
もちろん、FCバルセロナのような"プロフェッショナル"ではない小さな街クラブでもクラブとして共通したプレイモデルの所有は可能ですが、意識するべき点としては各チームがカテゴリーによって戦術的バリエーションを持てるようにする必要があります。
あくまでもトップチームまでたどり着くための共通したモデルを持つ必要はないと言うことです。
そしてこの、クラブとして所有するプレーモデルはあくまでも”クラブのコーディネーター”が作るものです。
次に❷の各チームのプレーモデルですが、これはもちろん”チームの監督”が作成していくものであくまでも自チームが今シーズンを通してトレーニングしていくものでなければなりません。
ただその作成時に注意しなければいけないことは、クラブの”背景(コンテクスト)”とクラブが掲げている”プレーアイデア”を考慮する必要があります。
②「プレーモデル」と「ゲームモデル(プラン)/チーム戦術」の違い
次に、今回の記事の本題でもある【プレーモデル】と皆さんもよく耳にする【ゲームプラン】の違いをはっきり定義をし、この言葉達を使う必要があります。
まず初めに【プレーモデル】の定義ですが「チームが持つ方向性や在り方」を指します。
ただここの在り方や方向性というのは先ほどでも述べたとおり、そのチームやクラブが持つ哲学や文化・もちろん持ち合わせる選手の特徴のような"コンテクスト"を考慮することが重要になります。
次に【ゲームプラン】ですが、ここでは目の前の試合においてどのような戦い方をするのか、もしくはどのようなプランを持って戦うのかを示します。
当然ながら、毎週末の試合での相手の特徴やシステムは変わるわけですから毎回の試合ごとのここのゲームプランは変わっていくことになります。
③シーズン中のプレーモデルの変更
さて、最後はこの【プレーモデル】のシーズン途中の変更はあるのか?と言うことです。
結論から言うと、プレーモデルの変更は行われることです。
ではどのような要因からプレーモデルの変更が行われるのでしょうか?
主に以下の三つの要因が挙げられます。
①チームの目標達成
②選手の分析ミス(できるだけ避けるために、プレシーズンでの分析作業が重要)
③新たな発見
①のチームの目標達成というのは、シーズン前に掲げる 昇格・残留・〜位フィニッシュのようなチームとしての目標がシーズン途中に達成された場合ということです。
②の選手の分析ミスは、通常はプレシーズンに各選手の特徴を見ながら選手の分析を行いそれを踏まえてチームの強み・弱みを分析しながらプレーモデルを作成していきますが、その際に行う分析においての適切な作業ができずにシーズンを開始してしまい後になって、プレーモデルの変更をしなくてはいけなくなるというケースです。
③の新たな発見というのは②の選手の分析ミスと関連してくるところもありますが、要するにシーズンが開始してから当初は気づかなかった才能をチーム内で発見した場合を指します。
以前は気づかなかった選手の強みを発見することになれば、それに伴ってプレーモデルの変更もしくは付け足しも行われるということです。
前置き作業
それでは皆さんに、事前に知っておいて欲しい情報を共有したところで次は作成手順に入る前の一歩手前の前置き作業の説明です。
メインテーマのプレーモデルの作成手順の前に、前置き作業として押さえておかなければいけないポイントが2つあります。
一つは「背景(コンテクスト)の考慮」と二つ目は「プレーアイデアの設定」です。
この二つの分析・設定をしっかりと押さえておかなければ後の作成段階において上手く進めることができなくなるのでとても重要な作業となります。
①背景の考慮
まず一つ目の背景の考慮から説明していきます。
ここでは、プレーモデルを作成する際に考慮すべき点がいくつかある中でそれらの点をしっかり把握・分析して考慮しながらプレーモデルを作成していくことになります。
例えば、そのクラブの歴史・文化・哲学・もともと存在する攻撃の構造、他にも担当するチームのレベル・カテゴリー・どのディビションに位置するかそしてクラブから与えられる目標(昇格・残留・3位以内フィニッシュなど...)が考慮ポイントとして挙げられます。
もちろんですが、各選手の特徴もこの背景の一部に入ります。
例えば、今シーズンにユベントスを指揮したサッリ監督の例を挙げると、ナポリを指揮していた頃はかの有名な人々を魅了する美しいポゼッションサッカーを展開していましたが、次に指揮をとったイングランドのチェルシーではベースになるアイデアは変わらないものの、センターバックのダビド・ルイスから一本のロングキックで前線にボールを放り込んで前進するシーンも増えていました。
これも背景として、プレミアリーグの文化やファンが求めるものを考慮しこのようなビルドアップのやり方をとっていたと言う見方もできるでしょう。
②プレーアイデアの設定
次に「プレーアイデア」です。
プレーアイデアとは一言で言うと、自チームの選手たちに与えたい、集団もしくは個人戦術の「パターン」のことを指します。
下の図にも書かれていますが、戦術的アクションの型,2ライン間,1ライン間,そして個人,チーム及び選手それぞれが異なるモーメントの中でお互いの関係性・パターンを得ることを指します。
以上これら2つが大きく分けて、実際にプレーモデル作成に入る前に考慮すべき重要なポイントとなりますので頭に入れてから次の作成手順に入っていただければなと思います。
作成段階① モーメント・原理原則・サブ原則・コンセプトの理解と設定
それではようやくですが、ここから本題となるプレーモデルの作成手順に入っていきたいなと思います。
まず初めに監督が理解して設定していく必要があることはこの【モーメント・原理原則・サブ原則・コンセプト】になります。
まず初めに設定をするモーメントですが、前提にプレーというものは一つの"集合体"として理解をする必要がありますが、その集合体の中に存在する異なったモーメントのことをここでは指します。
まずはプレーのモーメントですが一般的に考えられるモーメントには4つがあります。
皆さんも既にご存知でしょうが以下の4つになります。
❶組織的攻撃 ❷守攻の切り替え ❸組織的守備 ❹攻守の切り替え
表現の仕方(トランジションやネガトラなど)は、指導者によって変わりますが主にこの4つの局面が定義されています。
4つの局面全てが重要になりますが、どんなクラブに所属しているかや、クラブが所有するプレースタイルの背景によっては、特定のモーメントに対して一定の優先順位が設けられることもあります。
ここに加えて5つ目の局面として【セットプレー】を定義している指導者も近年増えていますね。
そして、その存在する各局面ごとに定義される原理原則の理解と設定も必要不可欠です。※下の画像参照
ここでも、先ほどのモーメントの話でも出てきたようにそのクラブが所有するプレースタイルによって時間をかけてトレーニングしていく原理原則が存在することになります。
例えば、あなたがバルサのようなクラブに所属してるとしたら攻撃のモーメントに存在する【ビルドアップ】や【攻撃の構築】により時間を費やすことになるでしょう。
逆に、アトレティコ・マドリーやイタリアのチームのように守備コンセプトの意識が高いようなクラブでは守備のモーメントに存在する原理原則に費やす時間が増えることになるでしょう。
モーメント・原理原則の設定の後に同じく設定していく必要があるのが【サブ原則】と【コンセプト】になります。
この2つは先ほど設定した【原理原則】をより具体化していくために重要となります。
※サブ原則とコンセプトの例は次の工程【マップ化】に記されています。
作成段階② マップ化
次の作業は【マップ化】になります。
①の工程で定義した内容を実際に表(マップ)にまとめていくといった作業となります。
このようにしてしっかり図式にしていくことでより整理されるといったメリットがあります。
※以下に各原則に合わせて定義されたサブ原則とコンセプトをまとめた表を掲載していますがあくまでも内容に関しては一つの例として解釈いただけると有り難く思います。
このようにして4つのモーメントごとの原則・サブ原則・コンセプトを定義した表を作成していきます。
作成段階③ ドキュメント化
各モーメントのマップ化の後に行う作業は各局面のマップを一つの画面にまとめ上げた【ドキュメント化】となります。
これを行う大きな理由は、クラブの全ての人間がこのまとめられた図を見ることによって共通認識を持ち、プレーモデルを現場に落としこむことを可能にさせるためです。
作成段階④ グラフィック化
これまでの工程で、文字化してプレーモデルをオーガナイズした後は、それらを【グラフィック化】してさらにわかりやすくする作業を行う必要があります。
テキストに起こしたものを、このようにグラフィックにして表記することでより深い理解へと繋がることを可能にします。※以下参照
作成段階⑤ プログラムセッション化
最後の作業はシーズン全体の【プログラムセッション化】になります。
この作業を行う目的は、各チーム・クラブが掲げるプレーモデルのコンセプトをひとつ足りとも欠かさず、しっかりとシーズンを通してトレーニングを行うために、年間のプランニングをオーガナイズしたものとなります。
しかし、そうやってプランニングをしつつも、週の中でチームが抱える課題や種末のゲームに向けたチームとして準備も必要でしょうから、あくまでもこの図を作る最大の目的は、クラブやチームが掲げるテーマを各指導者が見失わずに少しでも遂行できるようにするためとなっています。
まとめ
以上で計5つのプレーモデル作成プロセスの説明が終了です。
最後にまとめとして伝えておきたいことは、プレーモデルには二つのタイプがあることを理解する必要があるということです。
❶クラブを通した共通したプレーモデル ❷クラブの中に存在する各チームのプレーモデル
もうひとつ大事なことは、プレーモデルというものはコンテキスト(背景)に適応しなければいけないということです。
バルサが展開するようなサッカーを、バルサでプレーモデルとして掲げるのと、同じアイデアをイタリアのクラブで遂行するのは大きく異なってくるということです。
いかがでしたでしょうか?
少し長い内容となりましたが少しでも、みなさんにとって有意義な情報となっていれば光栄です。
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【MLT】
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日本人とスペイン人のスタッフで構成されるMLTは、バルセロナを拠点に置くスポーツ団体です。日本のサッカー発展に貢献するため、バルセロナと日本を繋ぐツールになるべく活動しています。日本サッカーが発展するためには、①育成年代の改革 ②サッカーを見る・学べる環境作り ③指導者のレベルの底上げ が優先して必要だと思っており私たちのコンセプトでもあります。
現在は、バルセロナで小学生年代に向けたMLT テクニフィケーションスクールを開催したり、夏に日本で指導者向けカンファレンスやサッカーキャンプを開催しております。詳しくは、我々のホームページにて活動内容を掲載しておりますのでどうぞご覧ください。
MLT 創設者 紹介
【高田 純】
2014 年高校を卒業後、バルセロナに渡り2015年には、スペイン指導者ライセンスレベル2(日本のA級相当)取得。近年では、クラブUEコルネジャで小学生年代チームの第一監督を務める。
-指導経歴-
2014-2015 CLUB フピテルU-12 セカンドコーチ
2015-2016 CLUB フピテルU-12 セカンドコーチ
2016-2017 UE コルネジャ U-12 第一監督
2017-2018 UE コルネジャU-11 第一監督,U-12 第二監督兼アナリスト
2018-2019 UE コルネジャU-11 第一監督,U-14第二監督兼スカウティング
2019-2020 UE コルネジャU11 第二監督
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