古代の薩摩940年 #4

第一部 不老不死の妙薬 徐福の独白(2)
この3カ月は本当に忙しかった。近郷近在の村々に病人が出るとすぐ駆け付けた。薬草畑も作ることが出来た。竹林が近くで見つかり、多くの人が竹簡づくりに協力してくれている。
これから先、私は何をなすべきか?この国には文字がない。やりたいことは山ほどある。何から手を付けるべきか。まずこの国に名前を付けよう。熟慮して「倭」(わ)に決めた。慎み深く、優しく温かいこの人々にはぴったりではないか!
我が国は数千年の歴史があり、とりわけこの千年はかなり正確な著述が多い。夏の「兎王」殷の「湯王と伊尹(いいん)」、周の「太公望呂尚と周公旦」、晋の文公「長耳」、管仲・妟嬰(あんえい)・楽毅・孫武など、大政治家や名将が数多く歴史に名を残している。ところがこの倭には何も残されていない。そんな大人物は必要ないのである。
何か困難にぶつかったら、各村の長者が集まってすぐ善後策を話し合い、みんなで乗り切っていく。国家なんて大権力はいらないのである。

今、秦は始皇帝と名宰相呂不韋(りょふい)による前例のない法治国家が生まれようとしている。李斯(りし)や韓非(かんぴ)などの有能な官僚によって国家体制が整えられていく途上である。
私はいまだ妙薬の手がかりすらつかめていない。このままでは帰るに帰れない。そこでしばらく旅をすることにした。部下の中から専門技術者を4名、農業の崔高・土木の馬永・陶工の公劉・弟子の毛定六、それに通詞で市松。市松は23歳の若者だが、わずか3カ月で我が国の言葉を話せるまでに成長した将来が楽しみな俊英である。持参するのは薬と道具。この国は盗賊の心配はまったくないと確信している。武器は一切持っていかない。食料はきっと道々で提供してくれる。この国には馬も牛もいない。ゆっくり、のんびり美しい自然を満喫しながら北を目指そう。

この物語は、薩摩の古代の歴史をドキュメンタリー風にしてみました。
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いつか映像にしてくださる方がいると嬉しいです。 吉峯盾

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