古代の薩摩940年 #2

第一部 不老不死の妙薬2 徐福の独白
昨夜は久しぶりにぐっすり眠れた。王さんとこの国の人たちについて話しているうちに眠ってしまったらしい。
今朝、目を覚ますと、もう家には誰もいない。それにしても驚いた。嵐に遭い、部下達とちりじりになって何回ももうだめかとあきらめかけた時、この島が見え、海岸までたどりついた。遠くにチラッと人影が見えたと思っていると、いつの間にか何十人も集まってきた。中に私たちの同胞がいることに驚いたが、もっと驚いたのはこの島の人々のことである。王さんによると助ける算段をしているというではないか!
私の常識では、まず、よくて奴隷、さもなくば皆殺しにして財宝を奪うのが普通である。我が国はと言えば、秦はつい最近始皇帝による統一がなり、大きな宮殿ができ、皇帝の周りには美女数百人がいる。国家体制が整備され、全国各地に役人が派遣され、法による国家運営が始まったところだ。これまで多くの戦いに勝ち、ようやく平和が訪れたかに見える一方、始皇帝は万里の長城の建設に着手した。多くの住民が重労働と酷な税に苦しむことになるだろう。数十年前の長平の戦いでは英雄白起将軍は20万人の降伏した敵兵を穴埋めにして殺害している。これが私たちの歴史である。それなのに、この国の人々はまるでどこの誰ともわからぬ輩をなんの疑いもなく助けようとしている。言葉はわからないがどの顔も穏やかで親しみに溢れている。ひょっとするとここは桃源郷か!

私は46歳の今日まで20年以上薬師(くすし=医者)の仕事を続けてきた。どこで始皇帝の耳に入ってしまったのか、幸運にもか不幸にもか、恐ろしい密命がくだった。「不老不死の妙薬をさがせ。」そんなものがあろうはずがない。とはとてもじゃないが言える雰囲気ではない。
今の始皇帝に意見を言える者はひとりもいない。たとえ勇気ある大夫(たいふ)がいても即処刑される。私は一計を案じた。無理な条件を出して諦めさせようと。1000人の部下、5隻の船。贈り物としての財宝など。ところが好きなようにしていいという。これには今度は私が参ってしまった。もうやるしかない。である。そして今日にいたった次第である。
このままおめおめと帰れるはずはない。どんな言い訳も通用しない。しかし私はこの国の人に接して、この国ならひょっとしたらあるのではと思い直した。
外では住まい作りが始まったようである。この国の住まいは見たことのない形だが、私の部下達はどうするのだろう。日々を記録するための木間や竹簡もほしい。どうやらこの国には文字はないようだが。

この物語は、薩摩の古代の歴史をドキュメンタリー風にしてみました。
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いつか映像にしてくださる方がいると嬉しいです。 吉峯盾

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