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ダメ元で起業したら三年も生き残れてありがたかった話

こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)というHoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。

 先日3回目の確定申告が終わり(14日提出)、放心状態のまま過ごしています。エイプリルフール起業なので本日が記念日となります。実際3年目はどうだったのかを去年の差分に着目して書いてみようと思います。今回も去年同様、「なぜか生きてるあの人の活動の裏側」みたいな感じでとらえてもらえればと思います。

「バイトした」

 今年度の一年でお仕事をさせていただいた相手も去年に引き続き、株式会社金星さま、株式会社ホロラボさまです(2022年8月で終了)。ありがとうございます。活動は去年のスタイルの継続という感じでした。

「バイトしなかった」

 去年に少しお世話になった北海道大学URAステーションさま、北海道立総合研究機構(道総研)さまについては、お仕事を発生させるには至りませんでした。

収益構造の変化:札幌にいるけど札幌からの分が完全に0に

 2021年度→2022年度の収益の状況を帳簿で見てみると、総収入は4割程度減りました。総支出を3割強減らしてがんばって対応したものの、結構しんどい状況でした。一日二食とかね。
 収益源の地域分布の変化は、2020年:東京8割、北海道2割 → 2021年:東京9割9分、北海道ほぼ0 → 2022年:東京10割 という状況です。北海道に仕事を作る事が出来ないスタイルを継続したため、順当な結果と言えます。
 去年に引き続き、アカデミアをよりデジタル活用な方面へという目的を掲げて続けているにもかかわらず収益がそこからあげられていないのもひとえに私の怠慢です。

心がまえの変化はあんまりない(と思う)

お仕事を頂ける以上は価値を提供して効果を実感して頂かないとダメでしょうというのはもちろんですが、それ以上にフリーランスとして猛烈に心がけている事があります(正しいかどうかは知らない)。「人のまねをしない」「競争にしない」「ステークホルダ(関係者)を最少にする」の基本3つと、『痕跡を残す』『あらゆる仕事をコミュニティまたぎの構造にする』『Not sell "to" the community』などのコミュニティならではもののセットです。私がパラレルワークで疲れないために実践しています。

https://note.com/jun_vr/n/ne68c0101300c#WRW79

去年までの6項目(以下それぞれ説明)は変わらず継続して活動しています(↑記事に細かい解説もあります)。それぞれについて今年分のコメントを新たに付け足すとしたら以下な感じです。

人のまねをしない
 正直ちょっとこまっています。Meta社が改名して変なブームを作ったり、アカデミアサイドのDX予算の活用が進んだりで、自分が本来やりたかったことが事例として出てくるようになってきました。私の、情報源としての優位性があんまり無くなりました。一方で、Developer Relationsコミュニティとの連携が昨年以上に強まった結果、つなぎ役としての活動に無二感が出てきているようです。XR以外のコミュニティ(特に運営者)から頼られることがチラホラ出てきています。

競争にしない
 ここ3年の停滞で、私のXRエンジニアとしての技術レベルは東京圏から大きく引き離されたように感じています。技術では到底キャッチアップできていないので、「全国各地、特色を持ったいろんな人を知ってて話が出来る」という路線を強めています。これだとオンラインの良さをまだ活用できますし、私も勉強になって楽しいです。焦って自滅するのが一番良くないと考えています。

ステークホルダ最少を目指す
 今年は巨大コミュニティとの密な関係は減らして、別の地方の技術コミュニティ立ち上げを手伝ってみたりしています。地方コミュニティだと、運営者1人パターンがほとんどなので、結果的にステークホルダはその人の周辺くらいに収まります。連絡体制で疲弊することはないです。

『痕跡を残す』
 図らずも、今まで通りに発信しているだけなのに、発信効果が上がってきている実感があります。理由はオンラインイベントの参加者減少とオフラインイベントの復刻の二つあり、参加者が減って実況ツイート発信がもともと減っているところにさらに現地参加組が現地での交流に夢中になってツイートしないという状況が見て取れます。マイペースにスライド見てつぶやいてるだけなのにイベントツイート数トップとかになるので、なにかの意味が出てきそうな気がしています。イベントへの貢献の形が増えるのかもしれないです。

『あらゆる仕事をコミュニティまたぎに』
 昨年度はDevRel方面にコミュニティ間越境をしてた一方で、今年度はDevRelを通じて知り合った個人の行先にも顔を出してみることにしました。夏に@sumina_inxr さんが紹介してくれたMIERUNE社の位置情報技術コミュニティイベントに参加したり、普段道内外を飛び回っている@tomio2480さんの行先にカンファレンスがあれば視聴するようになりました。直接xRには関係ないですが、「地方」という軸が各活動に共通していたりもするので取り入れるものが多いと感じました。

『Share through the Community』
 おととしから使い始めたこの言葉を継続しています。他のコミュニティで得た良い知見の中から、別のコミュニティで共有できそうなタイミング・文脈で紹介することで、そちらのコミュニティで拡散してもらえるという現象について精度を磨いているところです。

これらを活動の軸として、これらから外れることはやらないと決めています。やる事とやらない事を決めて、軸がブレないようにしています。テレビとか絶対出ないと思います。

一石六鳥システム→Community Relations?

 大学・研究機関・xR・DevRel・音楽・ビジネスの6領域を瞬間的に行き来しながら影響を及ぼし続けていました。研究機関の領域でVRコミュニティの成長をサポートした経験を、他の地方のコミュニティの立ち上げ時期のサポートにつかってみたりという事が今年は新たにありました。前は「参加者」としていろんなコミュニティに出入りするだけだったものが、この場合は「運営者」の属性も持って活動できる状態になっていて、役割の変化を感じています。これをもうちょっと突き詰めていくと、コミュニティとコミュニティ同士を結びつける案内人的なポジションが出来たりしないかな?と考えています。

地元の意思決定層からは自分達は見つからない問題

よく、コミュニティマーケティングの領域で「想起される存在を目指しましょう」という事が語られます。「〇〇といえば△△さんだな」と思い出してもらえる状態を指しますが、5年間地元で活動してこの状態へのほど遠さを感じているのが最近の課題です。
理由はいくつかありますが、地元でのxRイベントが少なすぎて、偉い人とxRの文脈で話す機会が作れない事と、大型イベントがあっても一般人に情報が降りてこなくて気づかないうちに終わる事などが起きています。また、役所系の若い人と知り合えた際に活動内容を紹介して一定の支持を得ることはできますが、上の階層の人に伝えてくれるまでは至っていないような感じもあります。したがって直接もダメ、人づてもダメという構造に陥っています。この辺の問題は5時間くらいしゃべれると思うので興味のある方は連絡ください。

勉強会のハイブリッド化は長期的にはコミュニティの内輪化を加速させると思う

 ハイブリッドイベントが日本各地で開催されるようになり、オンライン側の参加者体験が下がる事を今年予想しています。今参加している学会(3/22-26)もハイブリッドですし、ちょっと前の顕微鏡学会もそうでした。現地会場がある場合は、従来の運営の心情として現地参加者の体験を良くさせようとするはずなので、いろいろな仕掛けがそこにはあるはずです(運営が私だったとしても多分そうします)。
 この流れが各領域で進むと、オンライン参加者の現地側からの顔の見えなさは今以上に進むことが予想され、オンライン側から現地側に仲良くなりに行く事が激ムズになります。会場の外からのネットワーキングはもともと難しかったので2018年までは手っ取り早く私が現地に遊びに行って知り合いを増やしていましたが、今は前の様にノーリスクというわけに行かないので、どうしようか考え中です。

https://note.com/jun_vr/n/nd8393004783c#Qo8nw

オフラインイベントが関東圏に戻ってきました。どのジャンルも同様に小~中規模の集会を開催し始め、楽しそうな様子です。もともと活動に熱心だった層の人が現地会場に駆けつけ、そうでもない人がオンライン配信を見る構図になっています。会場の人数規模が大きくなるにつれて、オンライン参加者の事を気に留める人が現地会場からは減っていき、運営者くらいしか見てない状態になっていきます。運営コストが上がる事を嫌ってオンライン配信をやめた研究会もあります。
 私が学会であらかじめ体験したそんなことが、IT系の集まりでも再現しているように感じられます。楽しそうなごはんの映像ばかりが流れてくる勉強会には私はあんまり行きたいと思わないタイプなので、実際の勉強会の内容がよくても敬遠しちゃいます。なにより本編の情報が流れてきにくくなっているので、自分が新参の立場で行ってみたくなる会がこれから減ります。エンジニアの層に私のような人が多いとすれば、オフライン偏重に戻ったコミュニティへの新規参加者は減るのではないでしょうか。勉強会を運営する人には、今まで以上に「初心者をちゃんとあつかう」メッセージの発信が求められていくだろうと考えています。

支出の構造をいったんリセットして出張に行ける体にする

 具体的には実家へ引っ越しをしました。札幌駅付近に住んでた分の家賃・生活費を減らして、浮いた分の資金でこれからは札幌以外への出張の機会を増やします。現在の収益源が東京のみになった時点でこの決断は予想していましたが、それも減ってしまったので予定を早めました。これにより、月一回は一週間程度の道外出張ができるようになりました。4月は福岡に行きます。
 去年の確定申告の時に経費計上を少しさぼったツケが出てしまい、晴れて非課税世帯じゃなくなったことで皆さんが払っている社会保険料などがまとめてのしかかってきたのがトドメになりました。持続化給付金的な救済措置って適切なものは私のケースになく、先日提出した健康保険料の減免措置くらいしか受けれないという事で生存の道を別に探すはめになっています。私のようにならないように、就職できる道があるのならみんな就職した方がいいですよ(切実)。

実験家としては、アクションの起きる所と信頼関係を深めていきたい

 前職を辞めてからずっと思っていることですが、「やるやる詐欺」のような、口だけ言ってて何も起きない人と楽しく仕事をすることはできません。それよりは、つたないながらも始めていて、地道に積み上げる気質のある人と活動したいと思っています。
 なので、私自身もそういう人から興味を持ってもらえるように常にフットワークを軽く保って、すぐ動ける状態で発信し続ける態勢を今年も作っていければと思っています。

 2022年の一番うれしかった出来事は、ワンフットシーバス田中正吾さん(@1ft_seabass)さんが札幌に遊びにくる際にxR関係者との交流会を希望して名指しで私に相談してくれたことでした。HoloLens1の時から開発ブログを読ませていただいたりしていた方です。そんなプロの方から認知されてお呼びがかかったのが、活動の進歩を感じるポイントかなと思っています。まだ北海道も終わっていないぞ、と今後見せていけたらいいと思っています(無理かもなので期待しないでほしい)。

まとめ

 よくこんなリスクだらけの経営(?)スタイルで3年持ったなというのが率直な感想です(持ってないから札幌中心を撤退したともいえますけども)。
 コロナが流行ってオンラインのコミュニケーションスタイルが増えた結果、xRの事例が当初思っていた以上にアカデミアにも入ったようです。反面、強烈な外圧の下で自発的に変革が進んだせいで、私がそこに入り込む余地が消えて宙ぶらりんの状態で今に至っています。あと生ガキ体験がいろいろ生まれてしまってたようで、xR忌避の流れも同時に観測しています。なかなか難しい局面です。
 オフラインイベントが再開されるに従い、また新たな運営ノウハウが必要になっていると感じて実践を続けています。勉強会の目的は何かを自問しながら、目的を達成できるための事前準備や当日運営をがんばります。運営者0人~1人のイベントを無理なく生やす知見だけはなんとなく溜まってきているので、これを横展開してみなさんのお役に立ちたいです。
 出張旅費を作ったので、これをなんとか次の機会に結び付けられるようにうまく工夫していきたいと思っています。
 リモートワークも徐々に廃止する企業が出てきている状況なので、旅を前提とし、かつ札幌に理由があって残っているような私の再就職とかはより難しくなると思いますが、私は私のできる範囲で頑張りたいです。
 毎年恒例にはなりますが、こんな怪しいおじさんに日頃構ってくれるみなさんいつもありがとうございます。


コミュニティについては昨年末に遠隔の拠点間連携についてまとめてありますので、興味がある方用に置いておきます。

(2023/4/1 初稿 公開 5674字 240min)