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ダメ元で起業したら二年も生き残れてありがたかった話

こんにちは、じゅんです。
Hokkaido MotionControl Network (#DoMCN)という、HoloLens・VR技術好きの技術者コミュニティの勉強会を運営していて、開発者の知見の交流を促進しています。また、元・物性研究者として、研究機関に所属する若手研究者でxRに興味を持つ人を見つけてはHoloLensを被せに行き、開発者コミュニティへの橋渡しを行う事を続けています。これらを適切に表現する職名が無いので、勝手にScientist/Developer Relations と名乗っています。

 先日二回目の確定申告が終わり(15日提出)、放心状態のまま過ごしています。実際二年目はどうだったのかを去年の差分に着目して書いてみようと思います。今回はXRの話もコミュニティの話もないただの回顧なので、「なぜか生きてるあの人の活動の裏側」みたいな感じでとらえてもらえればと思います。

 公開にあたり関係先の確認をいただきました。ご協力いただきありがとうございます。

「バイトした」

 今年度の一年でお仕事をさせていただいた相手も去年に引き続き、株式会社金星さま、株式会社ホロラボさまです。ありがとうございます。
 金星さまではVR・AR関連の継続的な情報収集と社内チーム作りのお手伝いを行いました。また、事業に実際にVRを取り込むかもという検討会に随伴させていただき、現況の界隈の状況などのシェアをさせていただきました。また、日常の情報収集に加え、札幌の事業所の通常業務(非VR領域)をお手伝いできそうな人も並行で探していたりします。まとめるとチームビルド・採用まわりという感じでしょうか。

 ホロラボさまでは、昨年末のアプリパッケージ販売促進キャンペーンのあと、スタッフSIHOさんのアシスタントとして居残りました。年度明けに新入社員向けアプリ体験会実施のお手伝いをしました。オンラインデモをやる形になりますので、機材面の環境整備と体験設計を場面に合わせて組みあわせてアプリの特性が引き出せるように進行するというのが求められるスキルになります。
 マニュアルやwebページの文言チェックといった、文章を非VR領域の人目線で読んで評価するお手伝いもしました。これは前職の文章読みのスキルです。そんな感じの社内向けのサポート専任で時々やっています。

「バイトしなかった」

 北海道大学URAステーションさま、北海道立総合研究機構(道総研)さまのお仕事は今年度は発生しませんでしたが活動はいくつかしました。北海道大学URAステーションさまでは、秋口あたりに地方自治体の方と地域振興の検討をするためのVR体験会など実施させていただきました(写真を撮り忘れてた)。道総研さまからは、工業試験場で毎年冬に行われているAR系のセミナーの運営について、体験会の実施などを相談されたり、代わりに2022年2月に実施されたUnity講座の事前告知の協力などをさせていただきました。まいど思い出していただきありがとうございます。

収益構造の変化:ほぼ全部東京から

 2020年度→2021年度の収益の状況を帳簿で見てみると、総収入は2割程度増えていました(それでもカツカツだけど)。総支出が3割増えたのは2回分の出張費関係だったようです。コロナの混乱が少し緩和された影響です。
 収益源の地域分布にも変化があって、2020年:東京8割、北海道2割 → 2021年:東京9割9分、北海道ほぼ0 という状況です。決して北海道に仕事が無いわけではない(と信じたい)ですが、新参の私ができるお仕事はそれほど多くないようです。
 アカデミアをよりデジタル活用な方面へという目的を掲げて続けているにもかかわらず収益がそこからあげられていないのはひとえに私の怠慢です。

心がまえの変化はあんまりない

 お仕事を頂ける以上は価値を提供して効果を実感して頂かないとダメでしょうというのはもちろんですが、それ以上にフリーランスとして猛烈に心がけている事があります(正しいかどうかは知らない)。「人のまねをしない」「競争にしない」「ステークホルダ(関係者)を最少にする」の基本3つと、『痕跡を残す』『あらゆる仕事をコミュニティまたぎの構造にする』『Not sell "to" the community』などのコミュニティならではもののセットです。私がパラレルワークで疲れないために実践しています。

去年の6項目は変わらず継続して活動しています(↑記事に細かい解説もあります)。それぞれについてコメントを新たに付け足すとしたら以下な感じです。

人のまねをしない
 エンタメ方面の相談が多少増えた気もしていますが、これは基本的に自分自身では受けない方針です。事例紹介して完全にハマっていそうであれば当事者にお繋ぎするとかはやりますが、間に挟まり続けることはないです。
競争にしない
 単一の価値観だけで競合(特に東京)とやりあうと絶対に負けるので、何かしらの付加価値が発生するようにはしています。判断の速さが保てる環境づくりが唯一の競争項目という感じです。空いた時間で付加価値を作るイメージです。
ステークホルダ最少を目指す
 100人規模の大きな勉強会(DevRel/Japan Confとか)に運営サポートでお呼ばれする事が増えたのでステークホルダはさすがに増えます。ただし、オンライン経由でのリモートサポート特有の存在感の薄さを悪用して、過度な深入りなど無くしています。なので自分のリソースの消耗とかは無いです。
『痕跡を残す』
 ここが個人活動の最大のキモだと思います。継続してアウトプットし続ける事で自分が何者であるかが決まっていくと同時に、なされたアウトプットは他の人が同じような内容で迷った時の道しるべにもなります。半年前の自分自身に向けて分かるものを書いて残しておく意識で、コミュニティへの知見の還元を続けています。
 アウトプットがある程度溜まっている時にプロフィールのデータベースが出来た時にはそのコミュニティの文脈に合わせて再編集することもできますので、こまめに発信しとくといい事があるかもしれません。この例はサイエンスコミュニケータの文脈の例です。
『あらゆる仕事をコミュニティまたぎに』
 たとえば「DevRelのイベントで体験したコレのこの部分はアカデミアのイベントのこの部分にも使える」などの例を逆方向(アカデミア→DevRel)にも、他のいろんな領域のコミュニティにも作っておけるようにしています。今自分が視ているコミュニティがxR、アカデミア(物性・材料系)、DevRel、コミュニティマーケティング、サイエンスコミュニケーション、音楽と6方向くらいあり、↑の作戦でちょっとずつ良くできるようにはなっていると思います。
『Not sell "to" the Community』
『Share through the Community』を頑張っている感じです。売りつけたいものが特にあるわけではないので気楽に続けています。行った先で様子を見て便利な物をそれぞれ紹介していたら後日それが買われている、くらいな感じです。

 これらから外れる事をやらないと決めています。やらないことを明確にすることで他者から見た時の軸もハッキリしてくると考えています。

一石四鳥→一石六鳥システム

 もともとは複業(not 副業)のフリーランスとして、一つの行動で複数領域にインパクトを残したい考え方で行動していました。ビジネス・大学・研究機関・xRの四領域横断で知見が共有できるようになっていたのが2020年で、最近はそこに加えてDevRel、音楽が加わったので六領域横断になってきました。領域は違えど、「なにかを伝える」みたいな共通点はうっすらとあります。同一領域での複数社支援とかにならないため、世間一般にいうパラレルワークではないです(多分)。

とはいえ大変なこともある

 心が折れるタイミングはいくつもあります。2021年は出張デモ関連壊滅したので、大学とかの実験現場から遠のいたな~とかは常に思っています(ここの支援をメインにしたいのに)。いっそのこと事業会社になって何かをぶち上げておいた方がよかったかな~という後悔もしたりします。また、強力な競合が現れた瞬間に終わるビジネスモデルが今の状態なので、毎日ドキドキします。これらの悩みはまだまだ続くと思いますが、同業他社というものが存在しないので仕方ないよねと割り切ってがんばります。
 あと大学辞めてなかったら今頃大手を振ってデジタル化の取り組みが出来てただろうかと考えても暗い気持ちになります(辞めてなかったとしても主体になれてたかは怪しいです)。学位取得が12年で今年で10年経っていたり、年齢も40なのでもうアカデミアのポストにも普通の方法では戻れないんだろうなという絶望もあります。頑張ったのにね。

勉強会のハイブリッド化による地方勢の取り残され問題を今年は再度感じる事になりそう

 ハイブリッドイベントが日本各地で開催されるようになり、オンライン側の参加者体験が下がる事を今年予想しています。今参加している学会(3/22-26)もハイブリッドですし、ちょっと前の顕微鏡学会もそうでした。現地会場がある場合は、従来の運営の心情として現地参加者の体験を良くさせようとするはずなので、いろいろな仕掛けがそこにはあるはずです(運営が私だったとしても多分そうします)。
 この流れが各領域で進むと、オンライン参加者の現地側からの顔の見えなさは今以上に進むことが予想され、オンライン側から現地側に仲良くなりに行く事が激ムズになります。会場の外からのネットワーキングはもともと難しかったので2018年までは手っ取り早く私が現地に遊びに行って知り合いを増やしていましたが、今は前の様にノーリスクというわけに行かないので、どうしようか考え中です。
 運営に近い側での参加であれば、こないだのJapanXRFestの様に全く現地会場と無関係なところに価値が生まれるような仕掛けをしたりもできるんですけど、そうでない場合は工夫のしようがない事が多いです。
 コロナまん延の緊張感が緩んで各地で対面イベントが始まり始める頃が地方在住組の真の冬の時代です。ほんとどうしよ…。

自分自身に無茶振りを出来る幸福とアウトプットのクオリティコントロールについて

 逆風だらけですが、自分が意識的にコントロールしているフリーランスの良さみたいなものはまだ保持しています。
 望まない人に無茶振りをすることはEvilだと思っている私ですが、自分自身が解決すればいいタスクに対して気軽に自分自身を割り当てられる今の身分はまあまあ気にいっています。
 一方で、地元の社会一般の人々に認められようという努力を一切していないため、札幌でこの活動一本で生計を立てられる状況になるには程遠く、まだまだバイトが必要だと思っています。この自律性を失わないで済むように日々工夫をしていきます。
 また、前世でのお仕事と決定的に違うのが、アウトプットのクオリティを自在に選べることです。前世では"書くのが当たり前、修正は基本出来ない”の世界でしたので、アウトプットについては極めて慎重な態度が求められましたし出した後も取り扱い注意みたいな感じでした。一方で現在は"誰も求めてない文章、修正は必要に応じて"の世界ですのでアウトプットに対する見方は基本的に加点法になります。ツールとしてどんどん共有できるので私自身の時短にどんどん使っていける点がとても今風な感じがしています。物書きに対するストレスがとても減りました。

個人で出来ること(主に信用面)は少し増えつつある

 象徴的な出来事としては日本HP社さまから新型ヘッドマウントディスプレイセットを体験会向けに借りることができたことが機材調達面でのハイライトです。こちらのまとめでも触れていますが、昔は最低でも法人じゃないと相手にされなかったような物事にもアクセスできるようになってきています。現在のお互いの利害関係が一致しているからゆえかなとも思いますが、この流れはいい流れなので大事にしていきたいです。

(4/12追記)
 前回のレンタルの時の体験がお互いにとって良かったようで、4月からHP Reverb G2 Omnicept Editionを札幌の自宅にお借りしています。国内では未発売で、SNSを見る限り大っぴらに触って発信しても怒られない国内唯一の機体になっています。興味ある方はコンタクトください。

学会方面もいくつか進展がありました。
 応用物理学会の分科会でVR空間内でのシンポジウムが開かれた際に、主催側の先生に参加のお誘いを頂いたりもしています。様子を見に行って運営面など気づいたことのフィードバックなどしました。
 春の応用物理学会学術講演会ではVR空間を介した遠隔での実験施設の操作の発表をされていた先生の研究発表に関連して、後日行われたデモ会にお繋ぎ頂け、Kosen Chapterの皆さんに混じって実際の操作感などを体験することができました(ありがとうございます)。

経営上(?)の課題

 私の活動先は、ある程度信用できる個人からの紹介・仲介で広がっていくことが多いです。口コミネットワークに乗ることでコミュニケーションコストを抑えている側面があります。なので課題を抱えている人を知ってたら紹介してねとデモ先で言って回る事が多いです。
 現状としては1.5次つながりくらいで止まってる感じなので、まだまだ私に信用力は足りていないのだろうと認識しています。それはそうで、私が他人の立場だった時ですら、こんなワケわかんない仕事しててマルチ商法っぽい人を知人に紹介したくはないです。なので地道に中身で示していくしかないかなとは思っています。あるいはもっと弱い紐帯を活用するために空から攻めるかとかですね。悩ましいところです。

まとめ

 世間一般にあるような夢と希望を持った起業ではなく、なんかどうしようもないけど起業しとけば(補償とか新制度とか)いいことあるかもしれないくらいの超消極的な起業でなんやかんやで2年生き延びてしまいました。ひとえに皆さんのおかげです。ありがとうございます。ちなみに補償とか新制度の対象になれてないので当初目論んだ恩恵にはあずかれておりません。
 色々な実践と発信を繰り返した結果、外の人から「コミュニティを知る者」として扱われる事が増えて個人が果たせる機能も多少増えては居ますが、起業当初からブレずに活動を続けてこれていると思います。関わっていただいている皆さんに感謝です。
 健康第一の行動方針なので、これからも地味なポジションを取り続けると思いますが、細々と活動は続いていくと思いますのでよろしくお願いします。対面イベントをする前後10日程度の対面ミーティング自粛などは継続して続けていきます。
 なにかお手伝いできそうなことがありましたらお声がけいただけると嬉しいです。今年は出張の経費が増えて、これまでののほほん路線も正念場という予感があります。それに加えて特に燃料値上げと食品値上げで大変。どうしよ。

(2022/3/24 初稿 4730字 180 min
 2022/3/30 各所OK サムネイル追加 一般公開 5370字)

(コミュニティ活動(趣味)の進展については年末にまとめてあります。)