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2024年米大統領選の行方(5)

ニューヨーク駐在したことが、アメリカの政治に深く関心を持つきっかけになったことは間違いない。
というのも、自分がニューヨークに駐在していた時期は2014年~2018年、まさに2016年大統領選、トランプショックを目の当たりにしているからだ。

当時、ニューヨーカーは、ヒラリーが大統領選に敗れたショックの思いをポストイットで貼り付ける。(地下鉄改札付近で撮影)


海外駐在を意義あるものにする秘訣について幾つかのTipsがあるのだが、「政治」に関心を持つことはそのひとつだと思う。
他国で「政治」や「宗教」を扱う、論じることは、より神経を使う必要があるのだが、それには基礎的な知識、理解が不可欠だ。
”知らない”ことは、異国の地で仕事をする、生活する上で、致命傷になることがある。


幸いにも、米国や英国(ロンドン駐在経験あり)は「政治」が面白い。
この理由について考えると、日本とは比較にならないくらい、国民の政治への参加意識が高い、熱がある、ということだと思っている。
個人主義がベースにあるからか、税金の使い道については、強く主張する。日本では代議士のことを「先生」と呼ぶが、特に英国では「公僕」の印象が強い。
「自分たちの払った税金の使い道を自分たちの”代わり”に決めてもらう」という基本的な共通意識がベースにある。

「政治」を知ることは、もう一つのメリットが”英語力の向上”。
アメリカでは、主要各局で著名なホスト(コメディアン)によるトーク番組があり、冒頭のモノローグでは「政治」に関することが多く取り上げられる(大半がジョーク、こき下ろし)。
語学力について、「ジョークを笑えるようになれば一人前」という言葉があるようだが、今でも、これらトーク番組をYoutubeで観て、米国政治の感度のバロメーターを、トーク番組で笑えるか?に置いている。


前置きが長くなったが、今回のテーマは今年の11月に行われる米国大統領選の行方、つまりバイデンVSトランプをどうみるか、ということだ。
日本で「もしトラ」、「ほぼトラ」という言葉も出ているが、実際のところ、どうなのだろうか?


その答えをProfessor Allan Lichtmanが用意してくれる。
彼の唱える「The Keys to the White House」、詰まり、大統領選で勝利をするためには、13の決定要因があり、それを多く確保した候補者が大統領選を制する、というロジックがあり、これを深掘りしてみたい。
彼は、1984年からの大統領選をこの手法で当てており、特に彼を一躍有名にしたのが、2016年のトランプの当選を予想したことだ。

13の決定要因とは何なのか?見てみよう。
以下13の質問を現政権を基準に正しいか、誤っているか、をカウントしていく。彼のロジックでは、大統領選というのは、現政権がいかに国を治めているかで判断される、ということだ。(ちなにみ、13の決定要因の内、候補者の資質、キャラクターは2つしかない)

ちなみに、現時点を基準に、客観的な情勢を基に自分なりに評価してみたが、バイデン8、トランプ5でバイデン優位となった。

(1) Midterm gains: After the midterm elections, the incumbent party holds more seats in the U.S. House of Representatives than after the previous midterm elections.(中間選挙での下院の議席獲得)

(評価)共和党が2022年中間選挙で苦戦したものの、2018年よりは議員数を増やしている。【トランプ1】

(2) No primary contest: There is no serious contest for the incumbent party nomination.(予備選で競合がない)

(評価)バイデンは予備選無風で勝利【バイデン1】

(3) Incumbent seeking re-election: The incumbent party candidate is the sitting president.(現職が再選を目指していること)

(評価)【バイデン2】

(4) No third party: There is no significant third party or independent campaign.(第三の党がない)

(評価)独立系候補者は存在するが、実質的な「第三の党」には存在なし。【バイデン3】

(5) Strong short-term economy: The economy is not in recession during the election campaign.(選挙期間中の景気状況)

(評価)不景気ではない。【バイデン4】

(6) Strong long-term economy: Real per capita economic growth during the term equals or exceeds mean growth during the previous two terms.(中長期的に強い経済)

(評価)過去2期に比べ、経済の状況は良い。【バイデン5】

(7) Major policy change: The incumbent administration effects major changes in national policy.(重要なポリシーの変更)

(評価)共和党から民主党になり、様々な重要に変更があった。
【バイデン6】

(8) No social unrest: There is no sustained social unrest during the term.(社会不安がない)

(評価)移民の問題が選挙の争点になっている。【トランプ2】

(9) No scandal: The incumbent administration is untainted by major scandal.(現職大統領にスキャンダルがない)

(評価)実質的なスキャンダルはない。【バイデン7】

(10) No foreign/military failure: The incumbent administration suffers no major failure in foreign or military affairs.(外交・軍事上の失敗がない)

(評価)アフガニスタンからの撤退、パレスチナ問題で現政権が批判されている。【トランプ3】

(11) Major foreign/military success: The incumbent administration achieves a major success in foreign or military affairs.(重要な外交・軍事上の成功)

(評価)現時点では成功事例がない。【トランプ4】

(12) Charismatic incumbent: The incumbent party candidate is charismatic or a national hero.(現職大統領のカリスマ性)

(評価)バイデンは不人気。【トランプ5】

(13) Uncharismatic challenger: The challenging party candidate is not charismatic or a national hero.(挑戦者にカリスマ性がない)

(評価)トランプは一部の支持者にカリスマ性を発揮しているが、全国的にみて「National Hero」とは言い難い。【バイデン8】


この動画は、2020年8月6日に投稿されているので、2020年11月に行われた大統領選に関しての予想をしているのだが、彼はバイデン7、トランプ6でバイデンが勝つことを予測している。

そうなると、Allan Lichtmanが2024年の大統領選をどうみているか、気になるところ。
この動画は2024年3月6日に公開されているが、この13のファクターを基に評価すると、現時点ではバイデンが有利(6分47分~)、としている。(ただ、流動的要因があるので、最終評価ではないとしているが)

彼が強調している点は、世論調査はあてにならない、ということだ。
まさにトランプ選出でそれが証明された。
(ちなみに、New York Timesは選挙当日、ヒラリーの当選確率を80%としていた!)
現在、幾つかの世論調査でトランプが有利と出ているが、これをあてにする必要はない、としている。


最後に自分の肌感覚。バイデン有利だ。
追加的にいうと、現在、トランプに不利な要素が幾つかあり(裁判の行方、選挙資金調達不調、共和党全国委員会(RNC)の混乱等)、それらについては、いつかまた投稿してみたい。

また、本選で考慮に入れる必要があるのは、米国大統領選の選出は、5つ程度の”SWING STATES"の行方で決まってしまうということだ。(2016年の大統領選でも全国レベルの総獲得数ではヒラリーがトランプを上回っている)
このSWING STATESを個々に観ても、必ずしもトランプ優位とはいえない状況だ。



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