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Poppaと7Nannyと~ウェリントンに通って20年(13)

写真はウェリントンの港。豪華客船がたびたび寄港します。

 再婚してから、アーニーさんは奥さんとの連名のメールアドレスで、たびたびメールをくれた。しかし、同じメールアドレスで、おばあさんが亡くなったことを伝えてきた。
 やっぱり、そうなったか。前回の訪問でいやな予感がしていたのだが、その通りになってしまった。

 亡くなる前の訪問から、やはりおばあさんの暮らしぶりが気になり、上司に頭を下げて、1日早く休みをもらい、ウェリントンへ向かった。そして、家族のクリスマスに加わり、その場では元気であった。ただし次男のデイヴィッドが身の回りを世話しており、料理も時に手伝っていた。でも、少し不自由だが自分の足で歩けるし、大きく変わったことはなさそうに見えた。

 滞在中、朝から雨の日があり、私は外出をあきらめた。お昼にあばあさんが「サンドイッチでも作るよ」と言って作り出したが、見ていると、包丁を持つ手が震えている。
 「身の周りの、いろいろなことが難しくなり始めている」
そう感じた。でも、次男が世話しに来ているし、しばらくは元気かな、と思い直した。

 しかし、そのあとの日、ショッピングモールに出かけようとしたら、「これでたばこを買ってきてちょうだい」と頼まれた。長いつきあいで買い物を、しかもたばこなんて頼まれるのは初めてだ。このことと、手が震えるようになったことを思うと、「長くはないかもしれない」と直感した。

 帰国の日、迎えに来た乗り合いタクシーに乗る前、「また来年ね」と言ったけど、今までとは違い、おばあさんは「また来年ね」とは言わなかった。道に止められたタクシーから見ると、窓際におばあさんは立っていた。クリスマスツリーの電球が点滅するそばで。でもこちらをはっきり見るでもなく
ぼんやり立っているように見えた。

 数か月後、おばあさんは天に召された。おじいさんと50年も一緒に寝ていた、大きなベッドの上で、眠っている間に穏やかに。出来すぎな感じもするが、ほんとうはおじいさんのもとに早く行きたかったのかな。

 この次回の訪問で、おばあさんの異変についていろいろと教えてもらった。それは次回書きます。

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