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貴方と2度目の人生を生きる

長女が小学校を卒業する。学校から「卒業する生徒に向けてお家の方からお手紙を書いてほしい」と宿題が出た。
せっかくなので、娘に書いた手紙の内容をそのままnoteに記録しておこうかと思った。


日曜日の朝、好きな戦隊モノを観る。
1度目は自分が5歳の時、2度目は貴方が5歳の時。
好きなアイドルのトレカを集める。
1度目は自分が中2の時、2度目は貴方が小6の今。
漫画雑誌りぼんを本屋さんで買うのも、サン宝石にハガキで激安アクセや文房具を注文するのも、まるで2回目の人生を生きているような感覚です。
とても贅沢。
1回の人生で2回分楽しめているようなお得感がある。生まれて来てくれてありがとう。

いづれ恋をするでしょう。傷付く日もある。
誰かの中傷に涙する事もあるかもしれない。
或いは私の様に左手首にカッターを押し当てる夜が訪れるかもしれない。
私の1度目の人生によると、椎名林檎が救ってくれたり吉本ばななが手を差し伸べてくれたのだけど。
貴方の場合はどうでしょう。
沢山の音楽を聴いて、沢山の映画を観て、沢山の本を読んでほしいと願うのは、いつか私の手の届かない場所で貴方が傷付けられた時に、私に代わってそれらがきっと救ってくれるからです。

世界がどんなに憎くても。周りが敵ばかりでも。誰もいないように感じても、母は最後まで味方してるよ。
愛しているよ。可愛いよ、娘よ。
理由は無い。その方が安心するでしょ、理由なんていつでも覆る。でもこの愛は永遠に覆らない。
どうして分かるかって?京都のおばあちゃんが私を永遠に愛してくれたから。それを見てるからね。

昨日より今日の方が愛おしいし、多分明日の方が愛おしい。愛する事が私を支えてくれている。
愛される事で支えられて来た人生だった。
今は愛する事が私をしったりと立たせてくれています
本当に生まれて来てくれてありがとう。
卒業おめでとう。


私からの手紙だけじゃなく、もちろん夫からの手紙も。次女からも。そして両家の祖父母にも手紙を書いてもらって同封した。
本当は習い事の先生とか、お店のスタッフとか、保育園の先生とかからも手紙を書いてもらおうかと思った。どれだけ沢山の人が彼女を愛してきたかを実感して欲しかったから。

次女を出産する時。12月29日の午後13時頃。
陣痛でヒーヒー言う私の横に寄り添う長女。眩しいほど黄色のセーターを着ていた。朝早く陣痛が始まり、1人で入院。夫とお義母さんと病院に来た娘は、お義母さんのセーターを着させてもらっていたのだ。
初めて見るセーターを着た娘は、不安そうに私のお腹を撫でた。
その様子を見ていた助産師さんから言ってもらった言葉が忘れられない。
「お母さん、とても愛して育ててるのねぇ。」
私は咄嗟に
「いえ、違うんです、私、ずっと仕事で…全然一緒にいてやれなくて、本当にダメな母親で…」
助産師さんはずっと微笑んでいた。
「愛されて育ってる子どもは、見ればすぐに分かりますよ」

今まさに自分の股から新しい命が生まれようとしているのに、私は心が震えて涙が止められなかった。
娘はちゃんと愛されて育っている子どもに見えるんだ。

その当時の私は週6日、1日10時間仕事をしていて、休みの日も仕込みや買い出しに追われていた。
保育園も朝早く預けて、お迎えに行くのもほとんど最後の方だった。土曜日、子どもが少ない日に保育園に預けるのはとても心が痛んだ。
娘は、私よりも保育士さんやお義母さんと過ごす時間の方がうんと長かった。
それが、とてもとても辛かった。

助産師さんから「ちゃんと愛されている子ども」と認めてもらえた事が心底嬉しかった。
愛だけでは何か足りないように感じていたのだけれど、本当は愛さえあれば、愛だけあれば何もかも足りるのだと知った。

愛なら溢れるほどある。止めどなく湧いては溢れる愛がある。
私だけじゃない。夫も祖父母も。
貴方の命に感謝と愛を。

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