見出し画像

別れ?

「初めて会った時、覚えてる?」
帰りの車、ふとした瞬間、唐突に聞く彼女。

もっのすごい勢いで脳みそを働かせる。
いつだ?いつ出逢った?何年前だ?どこだ?どこで出逢った?
そもそも何でこんな綺麗な女性と俺は友達なの?
いや、これは間違いの許されない質問だ!
気合を入れろ!
何とか思い出せ、俺。
きっと、5秒未満。
彼女は焦点の定まらない目で狼狽しきった僕を見て、「〇〇の△□だよ」と言った。
忘れていた。
「うん、覚えてるよ。綺麗な人だなって思った」ホッとしつつも死に物狂いで平静を装う。
でも、次の一言でまた狼狽の極地に追い込まれる。

「初めて会った時、こんな風になるとか全然思わなかった」

街灯に照らされた彼女がポツリと呟く。
色白の彼女は街灯のLEDで薄らと青みを帯び、明るく染めた髪はその光を受けダークトーンの服とのコントラストを作っていた。
ブラウンの少し悲しそうな瞳。

消えてしまうんじゃないかと思う程綺麗だった。

視線の先、ダッシュボードの上には弱々しく歩く小さな蛾が1匹。

…これは…別れのフラグだなってぼんやり思ったんだ…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?