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花ざかりの校庭 第31回 『寒い朝』

麻里は試験の準備を終えて、早朝に床につく。

どうだったんだろう?

麻里は試験の前日、父と母の過ごした日々のことを考えていた。


やがて、床のなかでうとうとしていたが、携帯の着信に気がついた。
「……!」
麻里は高志かと思った。


胸が高鳴る。
見るとしおんからだった。
「……はい?」
……差し入れ持ってきた。


「今、どこ?」
ふいにチャイムが鳴った。
「もう来てるわけ?」
麻里はドアをチェーンを外した。
「あたりー!」


しおんがショッピングバッグを差し出す。
「どうせ今から頑張っても明日の試験に影響はないでしょう!」


なるほど、それは言える。「どうぞ」と麻里は彼女を招き入れる。

しおんは「これね」と言って差し入れを麻里に渡した。


中には『倉木商店』という荒いフォントのロゴみたいなのがプリントされた紙袋が入っていた。
ドアを開くと肌寒い外気が入ってくる。


霧がかかっているのだ。
しおんが部屋のなかに入ってくる。
「あっ」
と、しおんが声をあげた。
眼鏡が曇っていた。


麻里は寝間着にしていたジャージの匂いに気づいた。
つまり、男の匂い…?
ヤバい。


「ちょっと着替えてくるから」


麻里は洗濯機のあるユニットで替えのジャージーに着替えた。


なんという敏感さだろう……。
麻里がLDKに戻るとしおんがぼんやりと突っ立っている。


顔が赤くなっていた。
「私、思うんだけど。芳香剤、おいておいたほうがいいね」
「……はい」
子犬のように鼻をくんくんさせている。「バレバレよ」と、歌うように呟いた。
「……彼の匂い」
「ちょっと、やめてよ」
しおんはニヤニヤしている。



「ねぇ、浅子さんは?」
「いない、外を見たらわかるでしょ?」
しおんはベランダの外を見た。


「ホント、フィアットないね」
紙袋からクラブサンドを出してくる。

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