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異国に身を晒す

 初めての海外旅行はインド。当時、小田実氏の「何でも見てやろう」を愛読し、瞑想に惹かれ、非日常の旅を通して自分自身を見つめ直したいという気持ちがあった。カルカッタの有名な安宿街サダルストリート周辺の喧騒感、リキシャーのベルの音、スパイスの香り、五感を刺激する混沌さは今でも肌に沁みついている。その後も藤原新也氏、沢木耕太郎氏、池澤夏樹氏と旅を通して表現されている作家に惹かれ続けてきた。

誰も身寄りのいない異国で非日常の中の空間に身を晒す旅。そこでのハプニングや出合う人、ものも何かのサインとして受け止めていくことで非日常の旅は日常で意識していないことへの気づきとなる。      

 インドの旅から40年経過した。長女から陸路でタイからラオスに旅した話を聞かされたり、ラオスの北部の村で伝統的な織物と出会い、村に10年以上も暮らしつつ定期的に日本で展示販売をされている方との出会いを通して、ラオスの北部に惹かれた。 

https://www.kobe-np.co.jp/news/odekake-plus/news/detail.shtml?news/odekake-plus/news/pickup/201809/11677893

何かを見たりしたりする目的のない旅。バックパックに必要最低限の衣類や備品を準備していく作業も楽しい。 目的もなく、知人もいないことで、これからの自分において大切なものが浮き彫りになる予感があった。そのためにも予定を決めず、出合う出来事や人を気づきのサインとして注意深く観ていこうと思った。              

ルアンパバーンはバンコクからまたプロペラ機に乗り換えて2時間程度。ルアンパバーンは古都として世界遺産となった小さな街。メインストリートにはおしゃれでセンスのよいお店が立ち並ぶ。 

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 今回の旅においても先ず足が向いたのはラオスの職人によりクラフトショップやおしゃれなカフェやナイトバザール。ラオスの竹で編まれた容器や笊は芸術品の領域である。また、泥染めによる草木染め、手紬ぎ、手織りのショールの肌ざわりや色合いは見てて飽きない。路地でラオスのNGOのアンテナショップを見つけて、そこのスタッフと仲良くなった。ナイトバザールで売られているものは、かなりのものが国内ではなくタイなどから輸入して販売され、ラオス国内の伝統的な織物や竹細工の技術を伝承していくための活動をしているとのこと。20代の頃にシャプラニールというバングラディシュの農村に関わるNGOに参加していた頃の記憶が蘇った。その土地の民衆が自立していくための教育と技術の育成という課題は、村人との信頼関係が築かれた中で地道に続けていくことが大切であると改めて感じた。


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ルアンパバーンで2泊してその後どうするか考え、さらに北部にバスで4時間かかるノンキャウという北部の村に行くことにした。ノンキャウから先は舟でのルートしかない辺境の村。山と川以外特に観光名所はないようだ。ノンキャウまでのミニバスの乗客は私も含めて4人のみ。大半の道は舗装がまだ十分でなく凹凸と埃の中を突っ走る。ノンキャウは川の谷をつなぐ橋のたもとにゲストハウスが点々とあるばかりで、そこからの主な交通手段であるぽんぽん船の船着き場がある。

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ノンキャウでは3泊したが、朝は続けているあくびをする健康体操、散歩、朝市の散策から始まる。現地通貨「キープ」の両替を村ですればよいとあまりキープを持たずに村に入り、唯一の両替できる銀行も休日で閉まっていたというハプニングに直面。(お金は持っているのに使えないというとても象徴的な出来事)

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朝市で見つけた黒米のプッティングと麺をバナナの皮に包んでもらいブランチに。とても美味しく、翌日の朝も同じおじさんに装ってもらった。

ゲストハウスは欧米人ばかりで、夕方になるとカフェやレストランに旅人が溢れ出す。ちょうど滞在時期は満月の時期で、遠くから太鼓の音も。


何とかノンキャウから古都ルアンパバーンに戻り、ラオス最後の夜は大好きな春巻料理とLAOビールで旅を締めくくった。

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太陽と水星が牡牛座3室の私は、旅が好きで、五感を刺激するカフェ、レストラン、市場、工芸雑貨等が大好きで、出合ったことを文章や詩で表現していくことに惹かれる。非日常の中で、身寄りもいない中でこそ、自分の思考や行動パターンの好みが浮き彫りとなる。あらかじめ計画した旅でないからこそ、そこに象徴的な出会いや出来事が生まれる。今回の旅で感じたことを俳句に残した。改めて俳句を味わってみるとその場の情景が蘇ってくる。


「春塵」

零時過ぎたる立春の滑走路
初蝶やてのひら合はせコーブチャイ(ありがとう)
何をするわけでもなくて河のどか
凄まじき春塵に村塗れたり
これよりは舟のみ通ふ春霞
屋形舟春夕焼けに消えにけり
対岸は旅人の街春の月
太鼓鳴る春満月の村々に
喧噪の古都に戻りて夕永し
日本語の恋しくなりぬ春夕べ












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