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電車は止まらない




図書館の新刊コーナーでふと目が止まった写真集。
表紙には電車の屋根に立つ赤いシャツを着た少年たちと流れていく風景。
タイトルも斜めにレイアウトされて、疾走する電車のスピード感や躍動感が伝わってくる。



表紙に引き寄せられたかのようにパラパラと本文をめくる。
著者である松本時代氏(以下、松本氏)はインドを旅して写真のテーマを探しつつも手応えのないまま何気なく立ち寄ったバングラディシュで電車の屋根に乗って移動する人々に魅せられた。

松本氏は電車の屋根で移動する人々に触れ、直感的にこれだと感じて、安宿に長期滞在し、毎朝、決まった時間に決まった道順で、同じお店でバナナ2本とチョコレートケーキを買う。そしてそれを食べながら30分かけて駅まで行って電車の屋根に乗って移動する日々を1年半も重ねた。

同じことを毎日繰り返しすることで精神的な安心感が得られるという点は太陽牡牛座、山羊座土星と地のエレメントが強調されている私においても共通するものを感じた。
電車から落ちて足が骨折したり、目の前で少年が振り落とされたり、夜中に強盗にあったりとまさに身体を張った一年半。
松本氏の中には、まさに出合って撮らざるおえない衝動が生まれたのだ。

バングラデッシュといえば私も今から40年ほど前にダッカ郊外のNGOの農業センターに勤務する知人を訪ねに遊びに行ったことがある。
当時はシャプラニールというNGOの会員にもなっており、ダッカ市内にあるシャブラニールの現地事務所にも訪れて少し話をした。
シャプラニールとは異なるNGOの農業センターに行くためにダッカから乗ったバスにも屋根に荷物と一緒に沢山の人が乗っていた。
降りるバス停の名前を書いて乗る前にドライバーに確認し、降りる際は乗客もここだここだと私に目配せしてくれたような記憶がある。
松本氏のような長期滞在ではないが、バングラディシュの国の優しさ、貧しいながらもその中にある豊かさを私もまた感じていた。
写真集をめくる中、私自身の古い記憶も蘇ってきた。
夜明けのコーランの響き、夕日の落ちる広場で食べたモンキーバナナ、男性しかいないバザール広場等々、断片的な記憶。
この写真集は、身体を張って撮られたものだからこそ、読み手に対しても無意識なところを刺激するものがあるようだ。


松本氏のホロスコープを誕生時間12時で調べてみた。
9室天秤座太陽でMCと合。天秤座25度のサビアンは「秋の葉の象徴が伝える情報」で現象的な写真を通して説明できない力の働き、迸る生命の躍動感、豊かさを松本氏は伝えようとしていることと繋がる。

星野道夫氏や藤原新也氏も太陽とMCが合であったが、今年に入って気になってホロスコープを調べた作家や写真家の方の太陽が全てMCと合というのもとても象徴的である。
ASCが射手座で自由を求める気質がベースにあり、9室の天秤座太陽、乙女座水星で海外での旅の中での人との出会い、写真という表現を通して自己実現につなげていこうとする働きがある。
1室射手座海王星、7室双子座月、獅子座金星/火星(合),天秤座冥王星/蠍座土星(合)の4点による複合アスペクト「クレイドル」が形成されており、まさにバングラデッシュの電車に乗る人の姿に海王星的に直感が強く働き、
10室蠍座土星で1年半も怪我やトラブルがありつつも真実を撮り続けたのだ。

松本氏は1室射手座海王星、12室の魚座の場所に木星と天王星があり、海王星の影響が強い。小さな頃にホームレスの人たちと垣根なく親しくしていたことや、屋根の上で出会う少年たちとも垣根なく繋がり合えたという海王星の要素が働いたからこそこのような写真が撮れたのだと感じた。
写真を撮る以前の電車の上で笑う少年、踊る少年、眠る少年と一体になれるという関係性があることを改めて感じさせられた。

毎日、駅に向かう途中で立ち寄ってきたお店に、日本に帰国する当日に挨拶に立ち寄った際の松本氏と少年とのやりとりがとても印象的であった。
1年半に渡る撮影の日々で毎日、同じ時間に同じ店で同じものを買うという行為を通して得られた安心感は松本氏においても大きな心の励みであったに違いない。

「電車は止まらない」というタイトルは、私の中では「太陽は止まらない」とホロスコープの太陽3室牡牛座27度の衝動と重なった。



朝焼けの見知らぬ街を目指したり


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