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遠くの声


20代に孔子の論語、宝井其角の俳句等を自分の内側と重ねて読み込むことを熱心にしていた。
振り返れば神秘的ではなく、制限や葛藤のある日常を通して普遍的なものを掴みたいとしていた。
たとえ言語や時代が異なっていても普遍的なものは、その行間から響きとして読み手に伝わってくる。
残念ながらその響きを確かなものとして獲得できぬままに年を重ねてしまった。

悲しとや見猿の為にまんじゅさけ
声かれて猿の歯白し岑の月
腸を塩にさけぶや雪の猿

其角の揚句の猿は其角自身。其角が受け取っている普遍的なものに共振してくれる存在がいない中、それでも叫び続けていかざるをえない其角の心情が痛いように伝わってくる。


2年前にマドモアゼル愛先生の動画を見はじめて、占いとしてではなく意識を学ぶ学問、知恵としての西洋占星術と出合い、その奥深さに驚かされた。
自分自身のネイタルのホロスコープを味わうことで過去の私に働いてきたさまざまな力の要素が浮き彫りとなり、私自身にも他の人も同じように普遍的な力が働く世界の中で生きているという自覚が生まれた。

ホロスコープの12サインには神話が存在しており、それぞれのサインに関わる神話を通してサインの働きの傾向や特長を理屈ではなくイメージとして響きとして受けとることができる。
それは、普遍的なもので、働き方も二面性があり、サイン毎に支配星が存在し、実際にチャートに配置されている惑星と連動している。

占星術も言語を越えてエジプト、インドなど変遷して現在に至っているが
12サインの神話、支配星との関係性などが多くの書物やWEBで解説されてはいる。
惑星の配置やアスペクトなどの要素のは、原初的な段階は言葉では響きであり、その響きをどのように受けとめ、言葉化するのかは読み手の力量(波動量)によるものであると感じる。
そういう意味でもホロスコープを他者に読んでもらった場合は、やはり言葉を通したやりとりであり、その言葉に囚われたりすることには注意が必要かもしれない。
そのことも含めて、私は自分のチャートを他者にみてもらうという気持ちにはなれず、山羊座的に自分の力で読み込み、その過程の中で新たな気づきが生まれていくことを大切にしたい。

サビアンシンボルもホロスコープチャートの360度毎の要素を具体的な動物や人物に例えて、そこに働く力の要素をメッセージとして伝えてくれる。
私の太陽牡牛座26度で言えば「恋人にセレナーデを歌うスペイン人」。
比喩的な表現の中に含められている普遍的な要素は、その鏡となる蠍座26度は「キャンプをつくっているインディアンたち」や90度の位置になる内容と重ねていくことで浮彫りになっていく。
牡牛座26度は次の双子座の要素が入り、五感で感じたことをただ純粋に大切な人に伝えたいという衝動が生まれてくる。
ホロスコープを学ぶにつれて私の中にこの双子座的な衝動がはっきりと感じられてきた。その太陽星座の衝動を意識すれば月星座は本当に静かになる。そして鏡となる蠍座26度ではキャンプは社会、組織を象徴し、そこでの関係性という要素が加わっていく。そのためにはただ伝えたいという純粋性のみならず普遍的なものをより深く考察して要素が必要になっていく。


愛先生は若い頃に荘子を愛読されていたようだ。私は荘子はほとんど触れたことがなかった。最近になって少しずつ荘子を読み始めている。
荘子は、言葉はどうしても主観が混じるために言葉で伝えていく限界を痛感していたようだ。だからこそ寓言など具体的なさまざまな動物や人物が登場する物語を通して普遍的な内容を伝えられている。
荘子のそのような考え方をふまえ本書もまさに荘子の言葉を織り交ぜつつ、作者の日常に荘子が登場してやりとりをするという物語形式である。
最初はその軽いノリにやや引いてしまったが、敢えてそのような形式をとられていると認識するとまた違った味わいが生まれてくる。

https://genyu-sokyu.com/book/160825souji


ご縁があって時々、お話会や動画を聞かせていただいている方の物語セラピーという動画を紹介したい。その方は「アイリス」という物語を書かれ、その物語を通して普遍的なものを響きとして伝えようとされている。
その方の物語の中での具体的な人物や動物に働く普遍的な要素と肉体をもって存在している自分自身とを重ねていくことで言葉を越えて響き伝わってくるものがある。

https://www.youtube.com/watch?v=x-UcsGkOgrs

同時期にアップされた動画もひとつの物語を通して「0」という数字の意味するものを伝えてくださっている。
愛先生の0磁場、フリーエネルギーのお話とも重なる。物語にはある国の王様が登場して王様の意識の変化が語られている。

https://www.youtube.com/watch?v=m8oPOq5nd9g


話は変わるが以前に読んだことのある柳田邦男氏の「言葉の力、生きる力」の本が図書館でふと惹きつけられ、少しぱらぱらとめくってみた。
以前は読み過ごしていたもの、感じきれていなかったものが目に止まり、改めて読んでみた。
プロローグに写真家星野道夫氏の「森と氷河と鯨」に触れて、星野氏の世界、神話的普遍性に到達した言葉の深さに心が揺さぶられたとあった。
柳田氏はノンフィクション作家として事実をベースに真摯に事実を伝えようとしてこられたが、そのことの限界さを感じ、読者に人間が生きていくために大切なものを伝えるには物語性、神話的な語りかけが必要と語られている。
そして星野氏が「森と氷河と鯨」で引用したエスキモーのシャーマンの言葉を柳田氏もまた最後に添えられていた。


唯一の正しい知恵は、人類から遥か遠く離れた大いなる孤独の中に住んでおり、人は苦しみを通じてのみそこに辿り着くことができる

https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784101249186


永き日の遠くの声に耳澄ます

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