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ロック史上最大の問題作。セックス・ピストルズの『お前は売女/Bodies』を聴いたことがあるか??

セックス・ピストルズ唯一のオリジナルアルバムに収録曲。
他の過激とされている、どの楽曲よりも恐怖と嫌悪感に満ち溢れた作品がこれ。
曲中、『Fuck』が連発されているため、当然ながら、放送禁止になっていた。

因みに、1996年の再結成ワールドツアーでの、オープニング曲はこちらで統一されている。

わたしはピストルズの醍醐味は「理性と本能のせめぎあい」にあると思う。
同じパンクバンドのラモーンズの能天気さや、ザ・クラッシュの悲壮感、ザ・ダムドのお楽しみ度とは一線を画している。
ポップでキャッチーな曲の印象、また、そのファッションばかりが語られる彼らだが、もう少し、彼らの歌詞の世界観に着目してもらいたい。
そんな彼らの決定打がこちらの曲である。

原題は、Bodies. 日本盤(日本コロンビア)では当初、「お前は売女」に。
その後、売女がレコ倫の検閲に引っかかったのか、何度かこの邦題が取り消されたり、復活している。真の理由は不明。

本曲のテーマは堕胎(人工妊娠中絶)である。

こんな歌詞を聴かされたら、多くの女性は眉をひそめて、不快感をあらわにするのではなかろうか。

タブーに真っ向から斬り込む彼らでしか成せなかった行為だ。

筆者は付き合いはじめた頃の彼女に、「実は元カレの子供をこないだ堕したんだ」と打ち明けられ、「そんなの気にするなよ」と平然さを装ったが、
内心は気持悪くて、怖くて、帰宅後に思いっきり反吐を吐いた記憶がある。

それから、しばらくは嫌悪感と理解不能の苦しみで性行為が不可能となった。若年性EDの誕生である。
責めるべきは彼女でもなく、彼女の他者とのセックスでもなかろうに、あのやりきれなさは未だに言葉では表せない。


我が国では、未婚化、少子化の今、出産数は勢いを増していると言うのに、堕胎の数だけは減るどころか圧倒的に増加傾向にあるという。
もはや、産婦人科のメインの仕事は、蔓延する梅毒と中絶の後始末なのだそうだ。

望まれない妊娠。。。。。生まれてこれなかった子供たち。

繰り返される快楽としてのセックス。
果てしなく、限りなく。。。。。

こちらの作詞を一気に書き上げた、ボーカルのジョニー・ロットンであるが、こんな言葉を残している。

『セックスは過大評価され過ぎている』

『無駄なセックスは回避せよ』

『おれがピストルズで得たものは、愛のないセックスだ。もうウンザリさ』

こんな言葉を咀嚼しながら、聴くとより一層、歌詞への理解度が深まるかも知れない。

人間の三大欲求のうち、食欲や睡眠欲はリラックスして毎度語られるのに、性欲に関してはなかなかムズイお題としてそれは避けられがちだ。

「抑えきれない性欲という衝動」が、多くの男を苦悶させているというのに。

不倫も痴漢も強姦も、ヤリモクも。そして、中絶させてバックレも、非現実というよりは、殆どの男が妄想の中でむくむくと育て上げている。
法律という抑止力がなければ、そら恐ろしい性犯罪が爆発化するに違いない。

世界中の戦争史を見れば、集団レイプして虐殺など日常茶飯事ではないか。
モンゴル帝国の覇王チンギス・ハーンも、「それこそが我の生きがい」と威勢よく語っている。

『人間の最も大きな喜びは、敵を打ち負かし、これを眼前よりはらい、その持てるものを奪い、悲痛に泣き崩れる男の眼前で、その馬を奪い、その妻や娘を強姦した上で男の首を打ち落とし、女どもをおのれの腕に抱き奪い去ることである

彼のオスとしての優秀な遺伝子は、世界中に3,000万人もの子孫を残しているという医学会による研究発表があった。
女を人間として見ない、野蛮な男こそが、優秀で偉大で、英雄という、この矛盾をどう解釈すべきか。。。

男の性欲処理の道具として使われた女性の哀歌にも枚挙にいとまがない。
全くもって、同情を超えた感情を禁じ得ない。

せめて、妊娠した母体と女性の権限だけでも保護していくのが、人間の男としての役割でないかとも思う。

そんなことを考えつつ、この曲を振り返った。



なお、こちらの曲について。

クレジットはメンバー全員名義。
実際は、作詞がジョニー・ロットン。
作曲は主なリフとベースラインをシド・ヴィシャスが弾き、イントロを含めたメロディーをスティーブ・ジョーンズが考案、演奏速度はドラムのポール・クックが判断している。

レコーディング・メンバーは、これ一曲のみ、シドが実際に下手糞なベースを演奏。それにスティーブが手を加えている様子。

曲の全体的な印象としては、当時流行ったトビー・フーパー監督の「悪魔のいけにえ」などの、ホラー、スプラッター・ムービーの影響を色濃く感じる。

https://eiga.com/movie/41965/

レザー・フェイスと逃げ惑うヒロインの関係性を、「男と女」そのものに置き換えてみるとより分かりやすいかも知れない。
事実、ロットンはこの映画を何度となく観たというし、シドはこの映画のプリントTシャツを着ていた。


録音に関わった人たちを記録しておく。

ボーカル ジョニー・ロットン 21歳
ギター スティーブ・ジョーンズ 22歳
ベース シド・ヴィシャス 20歳
ドラムス ポール・クック 21歳

プロデューサー クリス・トーマス
エンジニア ビル・プライス
アート・ディレクター ジェイミー・リード

曲が作られた理由やストーリーは、ディズニープラスで公開されている、ダニー・ボイル監督のドラマ「セックス・ピストルズ」に詳細が描かれている。

ここで、ロットンを演じたアンソン・ブーンの言葉を。。

「このバンドは悪魔のようなイメージを持たれているかもしれませんが、私は母親を愛し、毎晩寝る前に牛乳を飲み、恵まれない子どもたちのための青少年センターで働くようなジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)にも興味がありました」と、ブーンは話します。「彼はとても優しい人です。こんなことを言ったら彼は嫌がるでしょうけど、それが真実です」

結婚して以来、年上の妻に対して浮気一つせず、紳士的な男であり続けるジョン・ライドン。
痴呆になり、一人で生活すらままならない年老いた妻の介護を懸命にする彼。

女性を心から愛し尊敬し、それを行動化して実践して生きる彼を知ると、
この曲を聴いた後でも救われる気がする。

この曲の問いかけに対する回答を自らが打ち出している。
そんな気がしてならない。

わたしは、今日、久しぶりに妻と手を繋いで公園でも歩いてみようかと思います。


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