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03 リオのタクシー

タクシーの話です。
4年前は、まだ雲助タクシーが横行していたものでした。
「空港に着いたらタクシーには気をつけて」
これが旅行者に対する最初の忠告だったのです。雲助は勝手に荷物を自分の車に乗せようとするから、そういう時は危ない。つまり、荷物を載せてしまえば客は逃げられないということですが、「空港ではタクシーに注意だな」と心していました。

空港に着いて、ぞろぞろと荷物受け取り場へ歩き、トランクを引き取った後、通関を終り、いよいよブラジル国内へ足を踏み入れることになります。
「タクシーに注意、荷物を渡さないこと」
心の中でそう繰り返しながら、歓迎ロビーへ出て行くと、大勢の人が乗客のお迎えに来ていました。そういう人々に混じって、いかにもタクシーの運転手然とした男たちもいて、
「タクシー?」
と話し掛けてきます。
「ナオン(いいえ)」
と、まず答えておいて、キョロ、キョロ、悪くなさそうなタクシーを探しながら出口に向かっていたところ、すぐにそれとわかるような制服を着た空港の従業員が親切にも寄って来て、
「タクシーでしょ?だったら、こっちへいらっしゃい」
と案内してくれました。やっぱり、空港のほうでも悪質タクシーには手を焼いていたわけです。

その案内で、無事にタクシーに乗り込み、イパネマのホテルへ向かったのでした。カタコトながら英語もできる運転手で、陽気に喋りながら、
「リオには悪いタクシーがいるからねぇ、気をつけないと」
と言っていました。
空港からホテルまで、およそ40分ほどでしょうか、おぉこれがリオか、と興奮の道のりでしたが、ちょっと気になるのは、この運転手氏、ホテルまでの料金を言わない。尋ねても、ごまかして答えない。

(おや?もしかすると……)と思ったものの、もう遅い。そう言えば「タクシーに乗る前に料金を確認するように」ということも注意事項に入ってました。
疑心暗鬼でホテルに着いて料金を払ったら、運転手氏、トランクを玄関の前まで運んで、そそくさと帰っていきました。その時に領収書をもらい、電話番号ももらいました。
さて、フロントにその領収書を見せたところ、
「こりゃ、法外だ。2倍ほど取られてます」
つまり、空港の従業員とグルになっていたわけです。まぁ、ここまでは考えなかった。フロントは領収書に書かれていた電話番号へ電話してくれたけれども、その番号は勿論デタラメ。あ~あ、しょっぱなから失敗でした。

これが4年前。

ところが今年はその様子がガラリと変わっていました。前回は、タクシーのうち、冷房が付いている車は、そう、2割くらいのものでしたが、今回は、車もフォルクスワーゲン社のものが多く、清潔で、ほぼ全てが冷房車(ただし、「冷房使用時は追加料金を頂きます」という注意書きが書いてあった)でした。
「ホテルまでいくらですか?」
と尋ねると、「そんなことを何故聞くんだい?」という感じで、胡散臭そうに、
「メーターを見ればわかる」
という答えが返ってきたものです。
こういうところに、ほんの4年ですが、社会の意識が変わってきているのを感じたものでした。

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