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素人のワイン造り (11)

前回書いたように、酵母には天然酵母と培養酵母の2種類があります。日本ではこの2つを天然酵母とイースト(またはイースト菌)と言っています。実際はどちらもイーストですから、こういう言い方はおかしい。なぜ酵母とイーストは別物だと誤解されるような言い方をしているのか、摩訶不思議ですね。

天然酵母は自然に存在している単細胞の微生物で、いろいろな種類(現在わかっているのは 1,500種ほど)があります。天然酵母が自然そのままの(雑多な)酵母なのに対して、天然酵母の中から発酵させる素材に適した種類の酵母を取り出して培養すると、その素材に合わせて効率良く発酵をする酵母を得ることができるのです。これが培養酵母。これは化学的に生成したものではなく、基本的には天然酵母の一部ですから、「オーガニックじゃない!」と嫌うのはお門違いですね。これだと単一種の酵母なので、その性質は良くわかっており、ぶどうの量や品種、温度などがわかっているならば必要な酵母の量もわかっています。

したがって量産されるワインを安定的に造るには培養酵母。発酵の効果を操作してワインの品質を操作したい場合も培養酵母。あるいは、発酵作業に慣れていない場合も、癖のない培養酵母。というわけで市販されているイーストはおおむね培養酵母、僕が使ったのも培養酵母でした。そしてぶどうの品種によってイーストの種類も違いますので、収穫したぶどうに合わせてピノ ノワール専用を選びました。

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酵母に関しては重要なので最後に追加して書きますと、天然酵母を使っていることを強調するワイナリーもあります。意図的に天然酵母を使う意義は何でしょうか。それを考えるためには、もともとワインの楽しみは何か、その基本に戻る必要があります。ワインは自然に近い飲み物。ということはぶどうが栽培された土地や気候がそのまま表現されたものですね。とすれば毎年同じような香りや味覚の、同じ品質のワインを造るのはむしろむずかしい、はずです。栽培した土地や年度によって、また製造を担当したワインメーカーさんによって、提供されるワインは毎年変わっているかもしれない。それを楽しむのもワインの楽しみの一つです。毎年同じようなワインを楽しませてくれるブランド品は、確かに安心なものではありますが、天然酵母にこだわった(少量生産の)ワインで冒険をしてみる、そういうワインの楽しみがあってもいいですね。(つづく)

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