走る時の腕振りについて

こんにちは。少しずつ春めいてきましたね!そろそろシーズンインに向けて取り組んでいる選手の皆さんも多いのではないでしょうか?

本日のテーマは「腕振り」についてです。実は先日、Twitterの方で質問をいただきまして、その方とやり取りしながら回答していたのですが、終わった後もずっと腕振りのことを考えていて、ここで記事にしてまとめた方が良いかなと思って書くことにしました。もちろん読んでくださっている皆様のため、そして自分の頭も整理したいのでどうかお付き合いください。主に短距離の話になりますが、跳躍、長距離にも少し役立つかもしれません。

さて、いきなりですが、元も子もない話をしてもいいでしょうか?

実は、ずっと考えていたのですが、腕振りの正解が何なのかは正直わかりません!

怒らないでください!今から、腕振りについて事実に基づいて説明します。その中で、もしかしたら、自分なりの正解が見つかるかもしれません。そうです。わからないのは客観的な正解であって、自分に合った腕振りは見つかるかもしれません。その手助けとなる知識を解る範囲でお伝えできればと思います。

ちなみに「客観的な正解」とは、例えば「腕振りの時は手のひらパーに開いた方がいい」とか、「目線まで高く腕をあげなさい」とか、そういう類のものです。オレゴンの世界選手権、男子100m決勝は、手がグーの選手とパーの選手が半々くらいでした。ということは、正解はなくて、どっちでもいいということですね。

では本題に入ります。

走る時に腕を振る役割は、大きく3つあると思っています。1つずつお話しします。

1 身体のバランスをとる

腕の役割として1番大きいのはこれなんです。身体のバランスを取るためには腕がいかに重要なことか。綱渡や足場が狭いところを渡る時に、よく腕を小刻みに上下したり、落ちそうになった時にはグルグル回したりするでしょう。腕は身体のバランスをコントロールする役割があります。試しに腕を後ろに組んで伸ばした状態で全力疾走してみてください。きっと上手く走れないと思います。むしろ転ぶ人もいるかもしれません。

なので、逆に言えば身体のバランス次第で腕振りも微妙に変わってくるはずです。私は側湾があって背骨が左に少しだけ傾いているのですが、無意識に走ってしまうと右半身が前に出て、だんだん走りが左に寄ってしまいます。その時の腕振りも、左が小さく、右が大きくなっています。今もジョギングする時はそんな感じです。なので、例えばまっすぐ走れるように、レーンを2つ使って、線の真上を走り、右足は線の右、左足は線の左に、同じ感覚で接地できるようにトレーニングをしていました。また、左脚を有効に使えるように、カーブを逆走して右に内傾をとって走ることもしていました。そうして身体のバランスを取っていくと、腕振りも両方が均等に近い形で振れるようにもなっていました。

この場合、腕振りは、身体のバランスを意識したトレーニングを行った結果として外見も良くなった、という話です。

2 ピッチとストライドを助ける

腕振りの役割り2つ目は、ピッチとストライドの話です。以前の記事も読んでいただけると幸いです。

ピッチは脚の回転の速さ、ストライドは1歩の長さですが、これらを助ける働きが腕にはあります。皆さんも経験したことがあるのではないでしょうか?思い切り脚を細かく速く動かした時は腕振りが小さくなって、逆に大股何歩で渡れるか、みたいなゲームをする時には思い切り大きく腕を動かすと思います。走る時も一緒で、スムーズに脚を動かす手助けをしてくれるのが腕振りの役割です。先ほど例に出した「腕を後ろに組んだまま走る」でも、やってみると、バランスの他に、脚がうまく動かないということも起こると思います。

ここで、では課題に応じて腕振りの改善ですね!といきたいところなのですが、実は大事なのは腕振り自体を直すのではなく、腕を振ることと脚を入れ替えることのタイミングを改善することがとても重要になってきます。見た目だけの改善では走りは変わりません。タイミングです。最適なピッチとストライドもタイミングを意識すると見つけやすくなります。

色々なコツの言い表し方があると思うのですが、自分が1番しっくりくる言葉に「空中で脚を入れ替える」というコツがあります。しかも鋭く(速く)、かつ、脚を入れ替えた後、片足立ちでピタッと止まれるくらいのバランス感覚で。

ちょっと真ん中は誇張して描きました。空中にいる感じを出したかったので。矢印で3つ絵を繋げましたが、時間にして一瞬です。一瞬で行うためには身体全体を使いながら(難しく言えば連動させながら)腕をシャープに振れないとできません。このタイミングを意識して走ることが重要で、腕がそのタイミングの舵取りの役割になります。どうしても遅くなるという人は、足よりも腕を先に動かすくらいがいいかもしれません。この辺の感覚は人それぞれです。

また、実際走る時には、腕を後ろに振ることよりも、脚が接地した瞬間に腕を前に出すことを意識すると上手くスピードに乗れる場合もあります。あれもこれもお伝えしたのでこれは余裕があればお試しください。

このタイミングさえ取れれば、ピッチとストライドが改善されやすくなります。イコール、腕振りも改善されているはずです。

3 地面に力が伝わる

これは、1と2ができた結果だと思ってください。バランスが取れ、ピッチとストライドを舵取りできるようになれば、地面に伝わる力がより大きくなって、地面からの反発も多くもらえるようになると思います。

以上、今自分の知識にあり、事実としてわかっていることとそれを走りにつなげるポイントをお伝えしました。ちなみに、これは聞いた話なのですが、安易に腕振りを変えると、かえって走りのバランスが崩れて、タイムが落ちたり、怪我を誘発したりするケースがあるそうです。私はそれが女子選手特有であると昔聞いたのですが、きっと男子選手でも起こり得ることだと思います。

まとめると、腕振りの正解を求めるのではなく、バランスを取ること、腕と脚のタイミングを意識することで、逆に腕振りが改善されるかもしれません。見た目の正解ではなく、個人個人のバランスやタイミングの正解を導き出す必要があると思います。

ただ、ここが伸び代になっている選手もきっといると思うので、「こうやって腕を振ってみようかな、次はこうしてみようかな」など、自分で実験するつもりで走ってみるのもいいと思います。

それでは。

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