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「投資させていただく」という姿勢

先日、これからCVCの部署に配属されるという方とご一緒させてもらう機会があり、ちょろっと日本のCVC(大企業に属したベンチャーキャピタル)に対して私の考えていることを話したら、かなり興味を持って聞いていただいたので、noteにまとめてみます。

私がシリコンバレーのスタートアップの社員として、日本のCVCとやりとりしたのは、2008年頃からです。その当時の日本はCVCという業務そのものの認知が低く、なんか新規事業やったことある人があまり投資業務もわからずに担当になるってことが多かった記憶があります。

ここ数年は、日本の大企業の経営層が他の会社の事例をみて「よし、うちもCVC作って投資するぞぃ」みたいな感じで始めるケースを何件かみているのですが、まず経営層の投資に関する考え方が浅い会社はほぼ失敗します。

「投資してやるぞ」という考え方

まず日本のビジネスマンは「金を出すやつが偉い」と思っていることが多いです。予算を持っている客の言いなりになって仕事をしてきた人や、多くの予算を持ってるからと取引先に偉そうにしている人がたくさんいる印象です。大抵そういう人の投資能力はめちゃくちゃ低いです。

そもそも、スタートアップ投資というのは「金がない会社に投資してあげる」わけではないのです。
「これから価値を生み出す会社に、投資させていただく」が、本来の姿勢だと私は信じています。

世の中にはどうしようもない経営者がやっているスタートアップもたくさんあります。経験のない日本のCVCには、そういう案件が回ってくることがよくあり、「なんでも言うこと聞くから、投資してぇ」みたいなダメ経営者とばかり会っていると、この「投資してやるぞ」スタイルがさらに強くなり、良質のスタートアップから嫌われてしまいます。

スタートアップにモテることが大切

投資経験が豊富な名だたるVCは、独自のネットワークでソーシングされたキラキラのスタートアップをしっかり評価して投資しています。その投資ラウンドの戦略の中で「どこかCVCにも入れてもらって、ビジネスシナジーが出た方が良いよね」という流れでどこか手頃なCVCないかな〜って探す段階でお声が掛かることが多いと思います。

そんな時に偉そうに「うちの会社が投資してやるぜ」なんて空気読めない日本のCVCがきたら、丁重に断るどころか単に無視しますよね(笑)

名の通ったシリコンバレーのVCと一緒にキラキラのスタートアップに投資できるわけなんですから、「うちが出資させてもらえたら、こんな特典があります!」と売り込むのが正しいアプローチの仕方です。

ねるとんパーティーで、一番人気の女の子に手をだして「おねがいします!」って5人くらいがやってる時に、たいして魅力もないのに「付き合ってあげてもいいよ」みたいな態度とっている男性がいたら寒いですよね。

でも、平気でそういう態度を取る日本企業の幹部や役員が結構いるんです。今でこそ現地CVCの担当者はそういう空気を理解している人が多いですが、まだ経営層がこういう考えだから、日本のCVCはうまく行かないことが多いのだと思います。

支払いが遅いのも致命的

日本企業CVCの担当者が頑張ってようやく投資できる状態にこぎつけても、今度はその投資の入金の遅さで揉めることが多いです。
なんか日本の大企業って、お金を出す部署が異常に権力を持っていて、ものすごい稟議とかとんでもない支払いスケジュールを守らせようとします。

海外のVCが投資が決まった翌日とかに10億とかをポーンと振り込むのに対して、日本のCVCはたった数千万とかでも稟議を回して役員決裁を通して、決まった支払日(翌月とか!)までは振り込めないと平気で言ってきます。

投資の入金が遅れるということは、そのラウンドがクローズできないので、入ったお金に手をつけられず、いろんな利息とか経費とかが掛かるんです。

それを理解していない日本のビジネスマンが多過ぎて、しかも大企業で育ったから経理部の言うことが絶対だと信じちゃってるので、社内を動かせない。たった数千万のお金のために手元にある数十億円が動かせない、という事態の重大性がわかってないんです。

結果的に「そんな面倒なら日本のCVCには声かけるのやめよーね」という雰囲気になり、キラキラスタートアップの案件が回ってこないわけです。

経営層にスタートアップ経験者がいないCVCはやめとけ

スタートアップをやって投資を受けたことがある人ならば、上記の事象はうんうんと頷くことだと思いますが、いざ大企業の経営者がこれを理解できるかと言えば疑問です。

少なくともスタートアップ経験者がチーム内にいて、かなり経営層に強く物申せる組織でないと、ゴミベンチャーを掴まされるか、海外VCの笑い物にされるのがオチです。

経営層が「投資させていただく」マインドを理解できるかどうかというのが一番重要で、素敵な関係はそこからしか生まれないと言うのが私の持論です。

それでも10分の1くらいしか成功しないんですから、スタートアップ投資は本当に難しいんです。基本的にJTC(伝統的な日本企業)は手をだすもんじゃないと思っています。

なお、私が直接関わったCVCの担当の方はみなさん素晴らしい方で、スタートアップの意向を尊重することができる方でした。と同時に、彼らが本社の管理部や経営層との温度差に苦戦しているのもずっとみてきました。

これからCVCをされる、今CVCで苦労している方の心の救いに少しでもなればと思い、書き留めたnoteです。どこかの会社を批判することではないことをご理解いただければと思います。

いつか日本のCVCも世界レベルになると思っていますが、経営層がまず変わらないといけませんね。投資に必要なのはお互いへのリスペクトですから。

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