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歴代受賞者インタビュー 第19回 安藤敬而先生

JUMP j BOOKSの小説賞を受賞した作家に編集部がインタビュー!!
これまでのインタビューはこちらから(公式サイトへ)

10月発売の新刊『天穂のサクナヒメ』小説を執筆した安藤敬而先生のインタビューを公開します! 
安藤先生は2015年、ジャンプ小説新人賞の特別賞を別名義で受賞されています。
今後の活躍に大注目の新鋭です!


それではインタビューをどうぞ!!

――小説を初めて書いたのはいつごろですか? きっかけと内容を合わせてお聞かせください。

大学生の夏休みです。幼少時から脳内で物語を展開していたのですが、文字に起こしたのはあの時が初めてでした。当時の私は大学に友達が一人もおらず、人と会話できない鬱憤が溜まりに溜まって、物語を脳内で展開するだけでは収まらず、実際に文字へ起こし始めたのだと思います。

 小説の内容は生物系のSF……そう呼ぶにはあまりにも拙い作品です。形式もめちゃくちゃで、小説の体を成していなかったと思います。他社さんの新人賞にお送りしたのですが、あえなく落選しました。

――プロデビューを志したのはいつ頃からですか? 最初からプロ志向だったのか、何かのきっかけがあったのか教えてください。

 初めからプロデビューを志していました。不純かもしれませんが、当時の私は「面白い物語を書きたい」という思いは勿論のこと、「人から認めてもらいたい」という強い欲望がありました。前述したように大学で孤独な環境下にあったため、その思いが爆発したのかもしれません。あと、会社員としてやっていける自信がなく、就活もしたくなかったため小説家としてデビューすることに必死でした。

――小説賞に応募する以前、周囲の方に小説を読んでもらうことなどはありましたか? あった場合は他人に読んでもらうことの影響を教えてください。

 小説を書いていることは誰にも明かしていなかったので、他人に読んでもらうことはありませんでした。

ただ、作品は書き上げてから二週間ほど置いておき、改めて自分で読み直し、全体を推敲していました。書いたのは自分なので間を置いても完全に客観的な視点を得られるわけではないのですが、それだけでも随分と自作への見方が変わった気がします。

――なぜジャンプ小説大賞に応募しようと思ったのかを教えてください。

ジャンプ読者だったため応募ページをよく見かけたというのが一つ。あとは、他の小説賞と受賞作品を見比べてです。ホラーにラブコメ、ミステリと幅広い受賞作品を輩出しており、私の色物のような作品(全然そんなことはないのですが、少なくとも当時の私はそう思っていました)でも、一次で弾かれずに読んでもらえるのでは……と思ってのことです。

――応募作はどれぐらいの期間をかけて書かれたのでしょうか? また、応募するとき自信や手ごたえはあったのでしょうか?

構想から書き上げるまで3か月から4か月ほどです。過去何度も応募しては落選しているのに、新作を書き上げる度に「今度こそは間違いなく受賞だ」という自信が湧き出ていました。あの自信がどこから来ていたのか、今ではもう分かりません。

――受賞の第一報を受けとったとき何をされていたのか、また当時の気持ちを教えてください。

 スマホに編集さんからの留守番電話が入っており知りました。何度もメッセージを聞き直し、夢ではないか確認した覚えがあります。次の電話が来るまで気が気ではなく、風呂へ行くときも常にスマホを身に着けていました。

――初めて担当編集者と話をしたときどんな印象を持ちましたか? 編集者から受賞作にどういった評価をもらったのかも聞かせてください。

 ひどく緊張していたこともあって、正直あまり覚えていないのですが……。た好きな作品を訊かれたときにあえてネットの一界隈で受けているような作品を出して通ぶろうとしたのですが、担当の方がその作品を知っており、アンテナの高さに驚いた記憶があります。色々と恥ずかしい思い出です。

 受賞作については、作品の出来自体よりも、注ぎ込まれたエネルギッシュさを評価した……とコメントをもらいました。好きだった作品のオマージュを大量に取り入れており、そこにも触れてもらえて嬉しかったです。それと同時に自作の課題も出され、身が引き締まりました。

――作品を書く上でどういったことに気を付けていますか? 自分のなかで大切にしていること、読者にどのような気持ちになってもらいたいと考えていますか?

一つの作品の中で、ストーリーに緩急を付けたいと思っています。シリアス一辺倒でもなければ、コメディ一辺倒でもなく、どちらも上手い具合に取り入れられている……といったのが理想です。というのも、私がそういう作品を好んでいるからなのですが。並行世界に小説を書いていない自分がいたとして、そいつが読んでも面白いと思ってもらえるような作品にしたいです。

――作品を書く上で、資料はどのようにして集めていますか? また、集めた資料はどの程度作品に反映されるのでしょうか?

基本的にインターネットと本です。以前はインターネットを好んでいたのですが、最近は資料本をよく買うようになりました。初稿では調べたことを詳細に書き連ねますが、推敲の過程で削られ、最終的にはほとんど残っていないことも多いです。自分が知っていることが重要なので、無駄ではないと思っています。

……ただ、他の創作者の方を見ていると本当に膨大な数の資料を集めており、しかもそれらが文章の上では直截的に反映されていないこともあるので慄きます。私も気合を入れて資料集めをしなければならないと思っています。

――創作をしているなかで原稿に行き詰まることもあるかと思います。そんなときはどのように気分転換をしていますか?

他の作業をすることが多いです。その作業をしながら頭の片隅でぼんやりと考えたりしています。あと時間がある場合は映画や漫画など他作品を見るようにしています。他作品を見てインスピレーションを得ることも多いですし、素晴らしい作品に触れると書くモチベーションも上がります。

――これがなくては仕事にならない! というものはありますか? 普段の執筆環境について教えてください。

周囲に人がいると集中できない性質なので、リラックスできる環境でしょうか。あとは昔からノートパソコンを使っていたからか、パンタグラフのキーボードがあるかないかで書ける速度が全然違ってきます。ネカフェなどだと全然集中できないので自宅が一番です。小説は基本、土日にまとめて書くことが多く、インターネットをやりながらだらだら執筆……という感じです。

――小説を書く際に、小説を読むこと以外で役にたったことがあれば教えてください。

シナリオ論に纏わる本は、何冊か読んでおいて損はないと思います。面白い作品を書き上げた先人たちがその技術を言語化したものなので大変参考になります。実際にその技術を自作に取り入れた方がよいのかは、また別の話になるかと思いますが……。シナリオ論を知った上で他作品を見ると、新たな発見もあって面白いです。

――今後どのような作品に挑戦したいか、また構想中の作品などあれば教えてください。

既存作品の魅力を、小説といった媒体でさらに深堀できるようなノベライズに挑戦したいです。また、オリジナルの長編ものを出せていないのでそちらも頑張れれば……と思っています。

――これからJUMPjBOOKSの小説賞に応募される方に応援メッセージをお願いします!

私は新人賞に応募しては何度も落選していますが、小説を書く力は、書き上げれば書き上げるほど付いていくものだと思っています。自分が面白いと思う作品を全力で書いて、落選して、それで駄目でも、「次こそは!」と思って全力で書けば、きっとどんどん向上しますし、また私もそうありたいと思っています。JUMPjBOOKSさんが扱うジャンルは幅広いので、自分が面白いと思う作品を全力で叩きつければ、しっかりと受け止めてくれるのではないでしょうか。応援しております。


読んでいただきありがとうございました。

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