【中】意味が分かると笑える話(入学式)

「カバンよし!学生証よし!制服よし!よし、じゃあいってきます!」
爽やかな朝に似合う元気な声が鳴り響く。
「智春、まだ朝5時よ...入学式が楽しみなのは分かるけど、そんな大きな声ださないの。」
彼の名は青野 智春(あおの ともはる)。今日から始まる高校生活に胸を踊らせている少年だ。
智春がこれから通う「海原学園(うなばらがくえん)」は県では有名な進学校で、中高一貫校でもある。
海原学園への高校からの編入はかなり難易度が高く、年に10名ほどしか通らない狭き門なのだが、智春はその門を潜り抜けた秀才である。
またポジテイブな思考の持ち主で、内部進学者がほとんどの高校への入学には普通少なからず緊張するものだが、彼は本気で全員と友達になれると信じている。よく言えばポジティブ、悪く言えば少し天然なのである。

-----------------------------------入学式-----------------------------------

智「ようやく待ちに待った高校生活が始まるんだ!楽しみだ!」

智春はこれからの生活への期待を胸に会場の体育館に入る。海原学園は中学高校で合同の入学式を行い、その日の午後にオリエンテーション、次の日からは授業がはじまるという、そこそこハードなスケジュールである。

智「1年A組はここか?席はどこだ?」
?「あ、決まった席はないみたいですよ。A組はこの3列で早い人から前に詰めていくみたいです」
智「そうなのか!ありがとう!君は?」
弘「僕の名前は田中 弘樹(たなか ひろき)っていいます。おなじ1年A組です」
智「そうか!俺の名前は青野 智春だ!これからよろしく!」
弘「智弘さん。こちらこそこれからよろしくお願いします。」
智「しかし、君も来るの早いな!俺が一番かと思ったが先こされてしまったよ」
弘「そうですかね?やっぱり初めての登校に緊張してしまって、夜あまり眠れなかったんですよね...。で、じっとしていれなくて早く来てしまったんですよ。智春さんは?」
智「俺は今日という日が待ち遠しくて、早く来てしまったのだよ!」
弘「すごいポジティブですね。僕なんて友達ができるかとか勉強についていけるとか、不安で一杯ですよ...」
智「そうなのか?俺はこれからが楽しみだがな。勉強だって入試を突破したんだから、努力を怠らなければついていけるだろう。それに友達だってもう大丈夫だろ?」
弘「どういうことですか?」
智「俺と君は初対面だがこうして楽しく話せているんだ。もう友達だろ?友達が一人できれば後は繋がりで増やすことは簡単だ。だから君はもう大丈夫だ!」

弘樹は目が点になっていた。そんな簡単な話なのか?と思いながらも智春の根拠はないが自信だけたっぷりの顔に思わず吹き出してしまった。

弘「智春君、本当に面白いね!そうだね!智春くんがいるクラスなら本当に楽しく過ごせそうだ!」
智「ん?そうか?だが面白いならそれはいいことだ!」

そんな二人の笑い声につられてか、後から来たクラスメート達も二人の話に入ってきて入学式が始まる頃には1年A組だけ先生に静かにするようにと叱られることとなった。
そうして入学式が終わると各々担任に自分の教室を案内された。
智春のクラスも担任の先生に教室まで案内されたわけだが、移動中も智春を中心に明るい話声が廊下に響かせながら彼らは1年A組の教室に入っていった。この短時間で彼らはこの少し天然だけど、でも同年代よりも少し風格があり周りを明るくできる智春に少なからず好感を持っていた。
そしてA組の生徒達はこの智春を中心に、これから6年間切磋琢磨し楽しい思い出を作っていくのだろう思い始めていた。
それが15分後に夢物語になることをこの時は誰も知る由がなかった。

------------------------------高等部1年A組---------------------------------

今日は淳の高校の入学式。
淳はこの春から「海原学園(うなばらがくえん)」に通う。
彼の高校は入学式が終わった後に教室に行き、そこで自己紹介をかねてオリエンテーションを行うのであるが、彼のクラスの1年A組ではちょっとした事件が起きていた。新入生が一人来ていないのだ。保護者に連絡をとっても大分前に家を出ているとのことで、新入生が事故に巻き込まれたのではないかと先生達が大騒ぎなのである。
そんな騒ぎをよそに淳は教室に置いてある座席表を見ていた。

淳「青野 智春か。入学式早々にサボりなんて肝が据わっているか、とんでもないアホかのどっちかだよな」




【回答】
海原学園では中高合同で入学式をしていたこと、そして座席を固定にしていなかったことが悲劇の原因である。
彼は1年A組の情報をもとに席を選んでしまい、自分の席が高等部の席であるかどうかを確認しなかったのだ。そして、誤って中等部の1年A組の席に据わってしまい入学式を終えてしまったのだ。
そして、ただ席を間違えただけであれば少し恥ずかしいで終わるのだが、智春は中等部でクラスの中心人物になってしまったことが悲劇である。
「もう友達だろ?」といった張本人が実は違う学年というのは恥ずかしすぎる。恐らく中等部で語り継がれる生きた伝説になるだろう。


【作者から】
「意味が分かるとシリーズ」2話目はいかがだったでしょうか?前回は少しホラー寄りだったので2話目は少し可笑しい話を用意してみました。
この作品を描くにあたり、作者は入学式のあるあるを色々調べたり、過去の思い出を振り返ったりしたのですがいいネタが見つかりませんでした。。。でも淳のストーリを考えると2話目には学校にいってもらわないと次から学園生活ものが書けないので、どうにかいいアイディアがないかな?と考えた結果がクラスならぬ学年を間違えるというアイディアです。
小学校の頃間違って違うクラスの部屋に入るととても恥ずかしい思いをするので、それを入学式でそれも学年も間違えたらどれほど恥ずかしいんだろう?と想像しながら執筆しております。学年を間違えた時の智春を想像すると智春がだんだんと可愛く見えてきて、始めは淳の友人として陰ながらサポートする役を考えていたのですが、急遽路線変更でちょっとおっちょこちょいだけど何故かみんなから愛される天然キャラになりました。
こんな感じで「意味が分かるとシリーズ」大筋のストーリを作りながらも細かい部分は話に合わせて変えていこうと思っています。
智春も今ではお気に入りのキャラなので、これからも時々登場人物として出していこうと思います。

さて文章も長くなったので、本日はここらで筆を置こうと思います。
今後の展開を楽しみにしていただきながら、こちらの「意味が分かるとシリーズ」を今後ともご拝読頂ければと思います。

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