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「、、、あんさん。恋してるやろ?」

「集中してへんな〜」

池田のその言葉で、俺は我に帰った。池田は俺の相方で、喫茶店で2人、ネタ合わせをしていた。

「あ〜、ごめんごめん。ボーとしちゃって。」

俺はまだ、天使こと藤田ニコルさんで、頭がいっぱいだった。喫煙所で微笑む彼女の顔が、今でも頭に焼き付いて離れないでいた。

「ジャンボはん、今日はず〜と集中してへんで!困りますわ〜、わて、この後デートでまんねん」

「またデート?お前、この前別れたんじゃないのか??」

「ジャンボはん!なにいうてまんねん!女なんてこの世にごまんとおるんやで?遊ばな損やで!わてと遊びたい女からインスタで毎日連絡来るんや!無視したら殺生やろ〜?」

池田は女癖がとにかくひどい。次から次へと女性を取っ替え引っ替えする。悪いやつではないんだが、ここだけはどうにもならない。呆れる俺に池田は言った。

「、、、あんさん。恋してるやろ?」

俺は池田に確信を突かれ、一瞬何も言えなくなってしまった。

「うわ!図星やん!なんやねん!ええやん!応援するで!女はなぁ、何人でも相手してなんぼやさかいな〜」

「別に恋なんてしてねえよ!ただ、、」

「ただ?ただなんやねん?」

「忘れらんないんだよ。その人の笑顔が頭から離れねえんだよ。」

「ぶぶ!ぶひゃひゃひゃぴー!」

「何がおかしいんだよ!」

池田は目の前のルノアールのアイスミルクを飲み干して、音が出るくらい荒々しくグラスを置いてこう言った。

「それが、、、恋やで?」

池田にそれを言われた瞬間から、俺の鼓動は急に早くなり、身体中が熱くなった。

「あんさん、なんで急に鼓動が早くなり、身体中が熱くなったかわかるか?」

池田に、何故か俺の身体の情報が筒抜けだった。そんなことより、続きが気になった。

「それはな、あんさんが頭までどーっぷり浸かって恋してるのに、それを恋と認識できてなかったやろ?それを恋だと脳が知ったら、身体中が反応すんねん!恋してる気持ちが爆発すんねん。わかるか?それが、、、、恋や。」

「、、、なぁ!池ちゃんも、恋するとこんなに鼓動が早くなって、身体中が熱くなるのか?」

「ちょいと落ち着き〜な!すんまへ〜ん!お姉ちゃん!アイスミルク追加で?お姉ちゃん可愛いなぁ〜!俺知ってる?池田や!インスタでめちゃ人気やねんで!よかったら、DMくれや〜」

「もういい。お前に相談なんてしたくない。」

「いけずやな〜。ジャンボはん。話聞かせてくださいまへんか?」

池田は確かに女癖も悪いし、人として欠如しているところが多々ある。ただ、こいつはどこかいつも確信を突いてくる。さっきだって、、

「池ちゃんさ、、藤田ニコルって知ってる?」

「ジャンボはん!なにいうてまんねん!当たり前やないか!今めちゃめちゃ人気やで!若い子のカリスマなんやから、、、んで、その好きな人と藤田ニコルはんとなんの関係がおますんや?」

「、、、、いやだからさ、」

「え??ま、まさか、ジャンボはんが、好きな人ってのは、藤田ニコルはん??」

「そうなんだ。」

俺は池田に笑われると思った。お前みたいな売れてない芸人が、あんな有名人を好きになってどうする?身の丈にあった女探せと。でも池田の答えは違った。池田は真剣な面持ちでタバコに火をつけてこう言った。

「、、、ええやん。」

「でも、向こうはスターなんだろ?俺みたいなのがさ、、」

「関係ないやん。好きになったんやろ?あれは間違いなくいい女や。3000人の女とやった、わてが言うんやから間違いない。ジャンボはんは、わての相方やろ?あれぐらいの女、手にして欲しいもんや。」

池田は女癖が酷く、人として欠如している部分も多々ある。だけど、漢気があって、時にすごく頼りになる時がある。世の女性は池田のこういうところに惚れるんだろう。

「ありがとう池ちゃん。でも、どうしようもないよな。俺らネタパレしかテレビは出れないし。」

「確かにな、、なかなかそう都合よく、、、ん?嘘やろ?神様っておるで、、ジャンボはん。」

「ん?池ちゃん、。どうゆうこと?」

池田はスマホの画面を俺の顔にこれでもかと近づけてこう言った。

「次のネタパレの収録、ゲストは藤田ニコルはんや!!」

その時、俺が真っ先に思った感情は、、、

(また、天使に会える。)だった。


続く。



これはフィクションです。


前の話はこちら

https://note.com/jumbo_takao/n/na48ab3d6d499



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