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褪せていくのは



この前、抗うつ剤の副作用で体育を欠席した。
何もせずにぼぅ、としているのは
時間を損しているな、と想い
余り好きではないボールペンと手帳を持ち
グラウンドへ向った。

その日は景色を見て歩く事にした。
変人だとクラスメイトには思われただろうが
僕にはどうでもよかった。

その時の記録。


2023 2/21

木々がさざめいている。
さらさらと擦れる音が余計に寒さを助長させる。
白い砂を踏む。
やはりこれもさらさらと音をならす。
少し焦げた様な色褪せた木が居場所なく、空き地に育っている。
脂ののった葉、小さな赤い実がなっていた。
気づく。
この季節が何か寂しいのは花がないからかだと。
枯れた枝、余計に白くなった葉、揺れる木陰。
空の色彩と薄い。覇気を感じない。
昨夜の水たまりでさえ、蒸発せずに大地に残っている。
やるせなさを感じる。

日がまた少し昇った気がする。熱がこの眼には眩しい。
シラカバに焦がれたのだろうか。
模倣したのだなと思える木々が他の木々の陰に埋まっていた。
古い石垣と色が同じに見えたので、薄まっているのは僕自身なのかと思った。
寒さは意識しなければどうにかなった。
元々、そんなに深く、色濃いつながりはないのだなと思った。
人工物が沈んで見える。お陰でここが日本だとも一瞬忘れた。
柵の向こうに紅い木が見えた。わずかな喜び、高揚感。
自然のパレットはこんなものか、と僕は校舎に戻った。


視界が半透明だった気がする。


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