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#49 『ユニクロ』杉本貴司著を読んで

UNIQLOでは決まったもの(主に下着)を購入、柳井さんの事は宇部の個人店を世界的に企業にした方の、という位の距離感で思い入れは無く、UNIQLOについて書かれた書籍を手に取ることもありませんでした。

講談社の碓氷早矢手さんの推しがなければ、今回も拝読する事は無かったと思います。

現在は、アメリカで老年内科医をされている山田悠二医師と新里百合子さんで放送されているvoicy『医者のいらないラジオ』。当初は、碓氷早矢手さんが加わるお三方の番組でした(正確には男性陣お二人に、新里さんが加入)。

2022年末に碓氷さんが番組を離れてから、お一人で始められた番組が『ほぼ1日1冊、おもしろくてためになる本の話』です。

『ユニクロ』を取り上げてくださった放送をご紹介します。

「こうした本は何冊も読んできたので、今回は読まなくていいかなーと思いましたが、読んで良かったです」という趣旨のお話しを聞いて、読まなくていいと思いながら、読んで良かったということは、ものすごくお勧めなんだな!これは、読んでみたい!と思い手に取りました。

実際に、拝読して、本当に良かったです。そして、この本を読んで、特に印象に残った点を2つ書き残します。

まずは、著者杉本さんについて。碓氷さんも放送で触れていらっしゃいますが、この本がグイグイと読み進められるのは、著者が杉本さんだから、という事が多分にあると思います。

日本経済新聞編集委員を務められている杉本さんは、京都大学大学院経済学研究科修士課程修了ご、日本経済新聞社入社。電機、鉄鋼、自動車を担当、米州総局(ニューヨーク)、通信やスタートアップを担当されているそうです。

経済・経営の知識をベースに、登場人物へのインタビューを織り交ぜて、映像が浮かぶ様な筆致で分かりやすく臨場感をもってUNIQLOについて、余す所なく書いてくださっています。こちらを読んで、90年代にUNIQLOに就職したかった、初期にユニクロで働いてみたかった、と思いました。これを機に、杉本さんの別のご著書も読んでみたくなりました。

2つ目は、柳生さんの人選び、特に、最大のパートナーである奥様の照代さんについてです。

何と柳生さんは、後に奥様となる女性・照代さんとスペインで出会っています。

1968年、柳井氏は怠惰な暮らしを送りながら迎えた大学2年生の夏休み。父親に懇願して世界一周旅行費用を用立ててくださったそうです。

アメリカ、デンマークからフランスを経てスペインへ。グラナダからマドリードへ向かう夜行列車に乗車する為、列に並ぶも切符が無い。その列の先にいた日本人女性は、とりあえず来た列車に乗り込み、汽車の中で運賃を払う交渉をすると。柳井氏も一緒に列車に乗り込んだそうですが、ここで出会った女性と後にご結婚されます。

この車内でのやりとりも凄く面白いですが、私の書く拙い文章ではなく、是非、杉本氏の文章を味わって頂きたいです。

2年後の1970年。大学4年生の柳井氏が帰省先の宇部で見ていたテレビに大阪万博のニュースが流れ、そこにスペインで出会った女性が映し出されます。そして、実家の紳士服店の人達と万博会場を訪れた際に、訪ねて再会を果たしたそうです。

スペインでの出会い、テレビに映し出された女性の気づき、見つけ出して会場を訪問。ここまでの偶然と積極性に加えて、周りのアシストも特筆したいです。

・再会の日、未来の奥様照代さんはお仕事お忙しくできた会話は挨拶程度で。柳井さんが再訪した際に、照代さんに代わって対応した職場の年長の女性が、まじめそうだからと「自宅の電話番号を教えて」くださいました。

・自宅で電話を受けたお姉様が、「妹は寝ているから、家にきますか」と提案。

・柳井さんに会ったお姉様も、まじめそうと判断。

・履いてきた古くて質素な靴が、ちゃんと磨いて丁寧に使い込まれている。まじめそうな人だから、嫌がらない方が良いと助言。

・結婚を決意し実家に送った手紙を読んだ父上、俺が貰いに行くと大阪へ。

・父上の貫禄に安心し、結婚を決意。

電話番号を教える等、時代に合わない具体的な事柄は横に置き、周囲の方の絶妙なアシストにより、お二人は目出たく結婚された様に思います。お二人だけでも結婚できた、かと思いますが、周りの方の応援は結婚後にも好影響を及ぼしています。

昨今、問題化している非婚化。これ、周りに上手くアシストする人が減っていることが一因だと思っています。当人たちが迷惑や負担に感じる事なく、程よく、水を差し向けることができる人が少なくなっている様な気がしてなりません。

長嶋茂雄さんの奥様も、大阪万博のコンパニオンをされていらっしゃいましたが、当時、大阪万博でコンパニオンをされた方は超優秀だったはず。柳生さん、照代があってこそ、会社の繁栄は勿論、お子様も優秀にお育ちになられたのかと思います。因みに、スペインで出会った頃、照代さんは英国留学中でいらしたそうです。

『ユニクロ』の感想・書評で、杉本さんと奥様にだけ触れているのは、私だけでは無いかと思います。この本にご興味を持たれた方は、もっと内容に触れた書評を読んで、こちらの著作を読むかどうかご判断ください。

以上です。

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