私立は高い_ぶっちゃけ_お金のところが聞きたい2

私立は高い! 公立行ったらどうなるの? ぶっちゃけ「お金」のところを教えてほしい

宮:宮本さおり(“親子のための中等教育研究所”研究員)
長:長さん(同研究所エグゼクティブアドバイザー)


宮:中学受験のいろはをいろいろと聞いていますが、そのもっと前のことを少し聞きたいという親御さんもいます。そもそも、受験して入る私立中学は学費がかかりますよね。最近は公立中高一貫校も増えてきて、国立大附属とかもあるから、選択肢は広がりましたが、私立に行かせるのは普通のサラリーマン家庭では結構な「気合がいる」と漏らすパパさんが先日もいました。

長:まあそうだな。

宮:この間、ある学校の取材に行き、学費の載ったパンフレットをいただいてきたのですが、入学金などもかかる中1の学納金が110万円、中2で66万円、中3も66万円となっていました。内訳をみると、年間授業料が48万円、施設拡充費が年間20万円、維持費が年間18万円。月に5万5000円くらいの計算です。これに交通費もかかりますから、月に6、7万円はかかるかと。高校からは助成金がもらえる家庭もあるし、塾代を考えたらトントンだとも聞きますが、でもやはり、みんなが行けるところという気はしないです。

長:みんなが行けるところは市区町村立の中学校がある。どこでも同じ教育だよね。私立学校は、どんな教育かで選んでいくところだから、みんなが等しく行くところじゃない。言ってみれば、公立中学校はオプション無しのベーシックプラン。いろんなオプションが付けば、費用はかかる。公立中学は水道水で私立は名水百選の水って感じかな。子どもの将来を考えた時に、多感な思春期にどんな友達や先生を得て、どんなふうに成長してほしいかという選択の問題だと思う。安いとか高いとか言っても、教育はスーパーのお買い得商品を探すのとは違うでしょ。お金をかけてもより良い教育を与えたいって思う保護者は昔からいた。例えば、ビートたけしの母親は「貧乏の連鎖を断つには教育しかない」といって、とても教育熱心だったという話もある。明治の頃だって、おかずを一品減らしてでも子どもの教育にはお金をかけたという話を聞いたこともある。教育は子どもに継承していく財産だという考え方。

宮:たしかに、教育は財産という部分はアグリーで、私の場合も子どもの教育費のために働いていると言っても過言ではないのですが、それでもやっぱり、公立に行くってこともありますよね。そうなった時にどうなるのかなと。東京都の場合でお話を伺いたいのですが、公立中学に入った場合、高校の進路を決める時にどのような道をたどるのでしょうか。

長:公立中学のベーシックな教育に何を足していくのかは自助努力ってことになる。教育は学校教育のほかに家庭教育が大切だし、地域社会の教育力も重要。トータルで子どもを成長させていくことになる。子どもの成長を見守るうえで、保護者が自覚的に関わっていくことが、より強く求められるんじゃないかな。

そして当然、高校受験をすることになるよね。公立高校の入試制度は都県ごとに違うし、年度によって変更点もある。中学入試に比べると、ちょっと複雑。大きな違いは内申書の存在。都立高校の場合は推薦入試でも一般入試でも内申書が必要で、学力検査と内申点の比率は7:3。学力検査の点数だけでは決まらないんだ。内申点というのは通知表の9教科の評定を合計したもの。東京は中3、神奈川は中2と中3、千葉と埼玉は中1、中2、中3が記されるなど、都県ごとに制度が違うから調べたほうがいいよ。

宮:よく、公立中の親御さんが「内申点を取るのが難しい」と言われています。最近は、内申点がどのように決まるかを説明する会を保護者向けに開く中学もあると聞いています。そもそも、私立高校を受験する場合は内申点は関係ないってところもありますよね。入試一発勝負のところ。

長:最近話題になっているのが、開成高校で入学辞退者が多かったという話。ほかにも、中学入試で難関校と言われているところで辞退者が多いそう。高校からの入学者が馴染めないのか不利だと感じるのか、あるいは高校受験で難関校に合格できるくらいなら、授業料が安い公立の難関高校でも十分にやっていけるという自信が付くってこともあるかもしれない。ということもあってか、中学受験で人気が高い学校は高校募集をしていないところが多い。私立では本郷が2021年に、豊島岡女子学園が2022年に高校募集を停止することを発表しています。都立中高一貫校でも、2022年までに5校(武蔵・富士・両国・大泉・白鷗)が高校募集を停止する。つまり、高校受験で入れる学校が少なくなるということです。

宮:あ~、この話、受験ママたちの間では結構話題になってます。え、じゃあ高校受験の方がフリになるってこと?って。それから、都立高校は中間層が無くて、成績が上か下かでパッかり分れてるなんて都市伝説的な話も耳にします。あと、東大・早慶上智の大学現役合格割合を見ると、都立トップの日比谷も私立と比べると合格率は真ん中あたり。トップはフェリス女学院と聖光学院という結果がでていました。東大や早慶上智に合格したのが勝ち組みだという考え方自体が古いって話もありますが、まずは一つの基準として知りたいところです。私の聴く範囲でも、都立高校に行って浪人だという子は結構聞きます。浪人すると結局予備校代がかかりますよね。これも成績がよければ予備校の特待生とかありますけれど、結局、どこの時点でお金をかけるかの違いになるだけということなのか?と思ったりもしてしまいます。

長:高校でも、公立校は原則としてベーシックな教育を行うところ。大学受験のための演習などは個人でやりなさいってことだと考えたほうがいいでしょうね。だから、浪人して大学受験の準備をするってことになるんじゃないかな。その点、私立は高2で高校の履修範囲を終えて、高3は大学受験のための演習にあてるというところが多い。

でも、コスパがいい学校とかいうけど、どういったパフォーマンスに対してのコストなのかな? 大学合格実績を教育成果として見るというのは、あまりにも浅い見方じゃないかなって思う。大学入試改革の背景にあるのも、入学後に学び続けていく意欲も測ろうというものでしょ。合格はゴールじゃありませんよってこと。中等教育の成果は長い人生の中で困難なことがあった時、重要な分岐点に差し掛かった時、自分で判断して充実した生活を送っていける基盤をつくること。だから、多くの私学で20歳代半ばとか、あるいはもっと先に幸せであるための教育をしますよといっている。

宮:そうかぁ。そういうことなんですね。


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