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澄ヶ崎村の禁断の儀式

東京から遠く離れた山あいの村、澄ヶ崎。深い森に囲まれたその地は、まるで世界から隔絶されているかのようだった。村の中心にある神社は、古びた木造の社で、幾星霜の風雪に耐えてきたことを物語っていた。

綾香は、祖母の病床に付き添うために、久しぶりに生まれ故郷へと戻ってきた。都会の喧騒から離れ、緑豊かな山々に抱かれた村の静けさに、彼女は不思議な安らぎを覚えた。しかし、その平和な佇まいの下に、恐ろしい秘密が隠されているとは、綾香は知る由もなかった。

ある夜、祖母の寝言に、綾香は耳を傾けた。「儀式が、また始まる…」その言葉に、彼女は戸惑いを隠せなかった。翌朝、祖母に尋ねても、はぐらかされるばかり。澄ヶ崎村の歴史について調べようと、綾香は村の図書館へと足を運んだ。

埃っぽい書架の奥から、偶然見つけた古文書。「澄ヶ崎の儀式」と題された、数百年前の記録だった。それによれば、村の繁栄と安寧を願い、特別な日に生贄を捧げる儀式が行われてきたという。綾香の心に、不吉な予感が忍び寄った。

さらに衝撃的だったのは、次の生贄の名前。そこには、赤い文字で「綾香」と記されていた。信じられない思いで、一族の長である翔太に問い詰めるが、すべてを否定され、逆に精神の異常を疑われてしまう。だが、その夜から、綾香の周りで不可解な出来事が続発し始めた。

窓の外から、人の気配。電話に出ると、不気味な呼吸音だけが聞こえる。綾香は、誰かに命を狙われていると直感した。恐怖に怯えながらも、彼女は親友の健介とともに、村の闇に隠された真実を暴くことを決意する。

二人が進めた調査で明らかになったのは、儀式がもたらす超常の力の存在だった。生贄の魂が、村を守る結界となり、病や災いから村人を守ってきた。だが、その代償は、一人の尊い命。綾香は、自分が犠牲となることを拒み、儀式を止めるために立ち上がった。

神社での最終段階。翔太たちに捕らえられた綾香は、絶体絶命のピンチに陥る。まさに儀式の刃が振り下ろされようとしたそのとき、一人の老婆が立ちはだかった。綾香の祖母だった。「わたしが、次の生贄になる」そう告げる祖母の顔には、深い覚悟が滲んでいた。

涙を流す綾香を抱きしめ、祖母は静かに微笑む。「あなたには、まだやるべきことがあるでしょう。この村のために、新しい歴史を刻んでください」。そう言い残し、祖母は綾香を健介に託すと、歩みを止めた。かくして、儀式は中断され、村に新しい風が吹き始めるのだった。

祖母の勇気ある行動によって、古き因習からの脱却を決意した村人たち。綾香もまた、祖母の遺志を胸に、村に残ることを選んだ。彼女が紡ぐ新たな歴史が、澄ヶ崎村に光明をもたらすことを信じて。

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