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紫乃と美甘の読書会 第6回『A子さんの恋人』

こちらは2022年11月26日にTwitterのスペースで行われた、紫乃と美甘の読書会第6回『A子さんの恋人』のログです。
本編はこちらをお聞きください。

前半

後半


紫乃と美甘の読書会とは?

このnoteの運営者・美甘と、美甘の親友の紫乃が、Twitterのスペースで、ほぼ隔週で行っている読書会。本に関することを中心に幅広く語っています。

Spotifyでも配信中!

次回開催は6/1(土)20時から、テーマは「凪良ゆう」の予定です。
サークル「箱庭」のアカウントから配信します。


『A子さんの恋人』

近藤聡乃著、KADOKAWA刊、全7巻(完結済み)。

ニューヨーク帰りの29歳漫画家・A子さんには、恋人がふたりいる。大学時代から7年付き合ったA太郎。ニューヨークで付き合い始めたA君。ふたりの間で右往左往するA子さん。そして友人のK子、U子、I子。約束の1年の間に、A子さんは答えを出すことができるのか。

出会いの話

わたしたちが『A子さんの恋人』と初めて出会ったのは、2017年2月。渋谷のBunkamuraギャラリーで開催されていたマリメッコ展の帰りに、NADiff modernでたまたま手に取った。

そのときは購入しなかったものの、その日の帰りに紫乃が購入。それを翌月にわたしが貸してもらって、みごとふたりしてどハマりしたのだった。

余談だがNADiff modernはとても好きな本屋さんだ。最近渋谷にあまり行く機会がなく、行けていないので、次帰国したときは行きたい。

好きなキャラクター

わたしが好きなキャラクターは圧倒的にあいこだ。

あいことは、A子さんの学生時代の同期で、友達と言うにはちょっと難しい関係。A太郎に10年以上片思いをしており、A子のことを目の敵にしていつつも、実は意外と冷静に観察しており、A太郎がどうしてA子のことを好きなのかも見抜いている。あいこはお姫様気質で、ずっと男たちにちやほやされるのが当たり前の人生だった。だからこそ、ひどい罵詈雑言を言われたのにもかかわらず、自分をちやほやしないA太郎に惹かれてしまったのだ。

彼女は一見わがままプリンセスに見えるけれど(そしてわたしはそういう女の子がとても好きだけれど)、優柔不断なA子さんとは正反対のはっきりした性格で、自分の気持ちを素直に言葉にできる。それだって一種の才能だと思う。

予備校時代からの友達のけいこが、あいこに対して「美術が好きな自分が好きだって別にいいじゃない」と肯定してあげたことに、わたしも勝手に救われた。わたしがBunkamuraに行くのが好きなのだって、「美術が好きな自分が好きだから」だ。だからわたしはあいこに共感するのかもしれない。

A君とA太郎

懐に入り込む男・A太郎と、懐が広い男・A君。あなただったらどちらを選ぶ?

わたしは絶対にA君派だ。A太郎みたいなタイプの人間に、むかしひどく傷つけられたことがあった。だから正直A太郎のことは苦手だ。

でもそれ以上に、A君はとても魅力的なひとである。これ以上言ってしまうとネタバレになるのだが(読書会本編では思い切りネタバレをしているので注意)、A君がA子さんに最後にあげた言葉が、とても胸に迫った。

愛の話

これもネタバレになってしまうのであまり深堀りはできないが、この作品も『違国日記』とはまた違った意味で、ひととひとがどうやって一緒に生きていくかについて考えさせられる作品である。それはつまり、愛の話だ。

人間はひとりでは生きていけない。この作品も、最後にはみんなパートナーを見つけて幸せになる。それを、ご都合主義だと笑うこともできるかもしれないけれど、でも誰だって、多かれ少なかれ自分の居場所を他人との関係の中に見つけることで安住の地を見つけるのだ。

A君が示した愛の形は、的確にA子さんの欲しいものだった。わたしもそれと同じものがほしい。

自分が好きなものとの距離感

好きなことを仕事にするか、というのも、この作品のもうひとつのテーマだ。

A子は漫画家になり、けいこはエディトリアルデザイナーをしている。一方で、ゆうこは美術予備校の先生をしていて、A太郎は美術とは全く関係ない実演販売の仕事をしている。この作品のなかでは、「好きなことを仕事にすること」を海辺での行動に例えている。ざっくりいうと、A子やけいこのように仕事にできた人のことは「泳いでいるひと」、ゆうこやA太郎のように仕事にしなかった/できなかったひとは「浜辺に留まるひと」。

わたしはずっと、自分一人の力でどこまでも泳いでいけるひとになりたかった。なんにもしないまま、それでもいつか泳げるようになる日を、ずっと夢に見ていた。でもそれは、海に出ることを怖がっているのと同義だった。失敗するのが怖かったのだ。夢は挑戦しなければ敗れることもない。でもほんとうにそれでいいのだろうか? やりたいことが、ほんとうはたくさんあったんじゃないだろうか。溺れそうになりながらでも泳いでいるひとを見ないふりをしたり、船に乗ってどんどん進んでいくひとを恨めし気に眺めたり、そんなことをして人生を終えていいのだろうか。

わたしはいま、ようやく海に出る準備運動をし始めたところだ。さあ、さっさと飛び込んでしまおう。



過去の読書会についてはこちらをご覧ください。

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