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写真か否か

AIを使って生成した画像が世界的な写真コンテスト最優秀賞を受賞し、作者が受賞を辞退したという出来事が最近ありました。

AI が生成した画像が世界的な写真コンテストで最優秀賞を受賞

これに関する受賞を辞退したBoris氏の主張を読んでみました。

以下そこからの抜粋翻訳です。

AI画像と写真は、このような賞で競い合うべきではありません。違う存在なのですから。AIは写真ではありません。だから、私はこの賞を辞退いたします。

原文:AI images and photography should not compete with eachother in an award like this. They are different entities. AI is not photography. Therefore I will not accept the award.

Sony World Photography Awards 2023

1989年から写真を撮り始め、2000年からフォトメディアアーティストとして活動しています。20年間写真を撮り続けた後、私の芸術的焦点はAIジェネレーターの創造的可能性を探ることに移っています。
SWPAが選んだ作品は、私の豊富な写真知識を生かしたプロンプトエンジニアリング、インペインティング、アウトペインティングの複雑な相互作用の結果です。私にとって、AIイメージジェネレーターを使った作業は、私がディレクターとなる共創です。ボタンを押すだけでなく、それを実行する。テキストプロンプトを洗練させることから始まり、複雑なワークフローを開発し、さまざまなプラットフォームやテクニックをミックスして、このプロセスの複雑さを探求することなのです。このようなワークフローを作り、パラメーターを定義すればするほど、クリエイティブな部分は高くなります。
私はドイツで初めて、これをCraft(*技術あるいは手工芸と訳しましょうか)としてオープン・オンライン・ワークショップで教えています:www.promptwhispering.ai
私は自分の画像を「イメージ」と呼んでいます。それらは、視覚言語としての「写真」を使って、合成的に作られたものです。それらは「写真」ではない。
公募に参加することで、アワード主催者がこの違いに気づき、AIで生成された画像のコンペティションを別に作るというプロセスを加速させたいですね。

原文:
I am very happy that I won the creative category of Sony World Photography Awards 2023 / Open Competition / Single Image.
I have been photographing since 1989, been a photomedia artist since 2000. After two decades of photography, my artistic focus has shifted to exploring the creative possibilities of AI generators.
The work SWPA has chosen is the result of a complex interplay of prompt engineering, inpainting and outpainting that draws on my wealth of photographic knowledge. For me, working with AI image generators is a co-creation, in which I am the director. It is not about pressing a button – and done it is. It is about exploring the complexity of this process, starting with refining text prompts, then developing a complex workflow, and mixing various platforms and techniques. The more you create such a workflow and define parameters, the higher your creative part becomes.
I have been the first in Germany to teach this as a craft in open online workshops: www.promptwhispering.ai
I call my images “images”. They are synthetically produced, using “the photographic” as a visual language. They are not “photographs”.
Participating in open calls, I want to speed up the process of the Award organisers to become aware of this difference and create separate competitions for AI-generated images.

Sony World Photography Awards 2023

余談になりますがこれを読むと、先のHEPEBEASTの日本語記事のタイトルには「AIが生成した」とありますが、Boris氏のクリエイティビティを考えて「AIを使って生成した」とする方が適切だと思います。

さて、以前から写真は無修正であるべきか否かという議論があります。AIを使った画像のついての議論は、この古くからの議論と重なる部分的も多くあります。しかし写真をまったく使っていない作品は写真とは呼ぶべきではないもので、異なった問題の議論と考えるべきだと思っています。

僕は写真についてはこのように考えています。

  • ジャーナリスティックな記録写真:露出を変えるくらいで特定の印象に誘導するような編集はしない。ましてやあるものを消したり、ないものを足したりしない。電線も消さない。画像素子の汚れは消すことがあり。

  • アートとしての写真:なんでもあり。ただし合成しているか、写真ベースか否か明示すると親切。写真に見えるが写真をベースとしていないAIベースの画像は写真とは区別する

写真に見えるが写真をベースとしていないAIベースの画像が曲者ですね。
(AIを使って生成したものは写真ではない別の立派なアートだと考えています)

断るまでもありませんが、この主張を押しつけるつもりはまったくありません。あくまで僕個人の意見として読んで下さい。

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