有色人種のコーヒー店経営者との談話・人種差別とレジリエンス

元記事:Conversations on Racism and Resiliency with California Coffee Shop Owners of Color - Daily Coffee News [Cassandra Yany | January 21, 2021]

ダニエル・オリバレスは、ロサンゼルスに住んでいた時の出来事を思い出していた。近所のエコーパークにサンフランシスコ発の高級スペシャルティコーヒーチェーン店が新しくオープンし、そこを訪れた時のことだ。

洗練されたバーで提供されている3つのコーヒーのうち2つは中南米産だったが、コーヒーを作っている人も、買っている人も、そこには白人しかいなかった。

スペシャルティコーヒーショップは、コミュニティにおけるジェントリフィケーション(地域の高級化)の象徴であり、コーヒーそのものにも不均衡があることは常に知られ続けている。中南米、アフリカ、アジアなどの地域で生産されたスペシャルティコーヒーは、主に白人によってアメリカで売買されている。 コーヒーは植民地主義的な歴史背景を持っており、人種問題と公正に関する長い邪悪な歴史がある。コーヒーは当初、ヨーロッパの植民地時代にアメリカ大陸に持ち込まれた。そしてその後、主に白人消費者の需要を満たすために、何世代にもわたって奴隷労働や強制労働、主に黒人と褐色の人々を使役した低賃金での重労働に依存してきた。


オリバレスはその日エコーパークで見た「多様性のないコーヒー消費」の経験を元に、5年前ロサンゼルスのサウスゲートに El Cielito Café をオープンした。2018年からはラテンアメリカのコーヒー生産者から直接コーヒーを購入し、店舗で提供している。 若いラテン系コーヒーショップの経営者として経験した苦労をオリバレスは Daily Coffee News に語った。彼は、コーヒーコミュニティ内で白人の経営者にいつもレッテルを貼られ続けてきた。彼の姓や話し方だけで彼の民族性を知っていると思い込む人や、彼がコーヒー農園の出身だと思い込む人がほとんどだった。

「21歳の時にエル・シエリトをオープンしました」とオリバレスは語った。「大きな困難の幕開けでした。ラテン系で、教育を受けていない世間知らずの若造だと周囲から思われたんです」 オリバレスは、他の店の経営者にニカラグアやグアテマラの農園のコーヒーを紹介すると、これらの国や文化について ”パッシブアグレッシブ” な質問を受けることがよくあるという。
「私はメキシコ人です。私たちはみんな違う国です」と強調した。


カリフォルニア州サンノゼの Nirvana Soul の共同経営者であるジェロニカ・メイシーは、ピーツコーヒーのバリスタとしてこの業界に入った。当時のスタッフは多様性に富んでいたが、辞める際には彼女が唯一の黒人従業員になっている場合が多く、これが出世を阻む環境を生みだしていたと彼女は言う。「私はこの業界に17年いますが、多くの場合で私は間違いなく店に唯一の黒人でした。出世したり、トレーニングを受けたり、ローストの仕方を学んだりするのは本当に難しいことでした。」とメイシーは語った。


オークランドのロースター、Cute Coffee の共同創業者であるビアンカ・アロイン・ブランソンは、コーヒーショップで働く有色人種の人々に対して、期待されることが違うように感じた経験を振り返った。「昔、バーカウンターで働く黒人をまだほとんど見かけなかった頃から私はカウンターの中にいて、様々なことを知っていました」とブランソン氏は言う。「でも多くの人々は、私が彼らより多くを知るのを嫌がっているようでした。彼らは、『見せたことだけをやりなさい。なぜ必要以上のことを知りたがる?そんなこと求めていない』といった風でした」

キュートコーヒーのもう一人の共同創業者であるサブリーン・ナイマ・ウィルクスは、この人種間格差は黒人のコーヒー消費者としても感じられると語った。「客として確かに感じます。『白人が多すぎる』という理由で行きたくないお店もありました」とナイマ・ウィルクスは言う。「私がここにいたら嫌だろうな、というような雰囲気が感じられました」


エルサルバドル、グアテマラ、ニカラグアなどのラテンアメリカの国々からわざわざコーヒーを取り寄せるオリバレスのようなコーヒーショップ経営者にとって、共通点を持つ顧客を様々な層から獲得するために人種的な区分や不公平を取り除くことは優先事項だ。ラテン系コミュニティのメンバーが足を踏み入れ、メニューに自分たちの国のコーヒーがあるのを見て興奮するようなことがいつか起こってくれればいいとオリバレスは語った。


ロサンゼルスのライマートパーク地区にある Hot & Cool Café の創業者兼オーナー、トニー・ジョリーは、白人経営の店に見られるような気取った態度でない、黒人の客がスペシャルティコーヒーについてもっと詳しく知ることができるようなオープンな空間にしたいと考えている。「ホット&クールが提供できることの一つは、黒人や褐色のマイノリティの人たちが入ってきて、知ったかぶった注文をしなくても安心していろいろな質問ができるスペースだと思います」とジョリーはDCNに語った。「白人客の多い店では、コーヒー初心者でも歓迎されていると黒人の客が感じられることはほとんどない」

ジョリーはスターバックスのバリスタとしてコーヒー業界に入り、その後独立してコーヒー農家と仕事をしたり、スペシャルティロースターに生豆を販売したりもした。この間、彼は "あからさまな人種差別" を経験したという。「アフリカ系アメリカ人としてスペシャルティコーヒー業界に入った当時は…本当に、本当に厳しい環境でした」ジョリー氏は業界を「白人支配のお友達クラブ」と表現する。

このような葛藤にもかかわらず、ジョリーは業界で培った人脈を利用して最高のコーヒーを作りたいと決意し、最終的には黒人の多く住む地域に店を構えることにした。ジョリーは人生で一番嬉しい出来事だったと話した。
ニルヴァーナ・ソウルのメイシー氏は、この5年間で多様性が大きく改善されたスペシャルティコーヒービジネスに希望を見出しているという。「自分たちが店を持ったり、焙煎したりしているのを見るのは素晴らしいことです。たまに別の州に行くのが好きで、ローカルなコーヒー屋に行けば何か新しいことを学んだりできます。私たちは確実にそういった方向に進めていますし、それはとても素晴らしいことです」


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junko