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意外と知らない労働法④ 賃金に関するルール

知っているようで意外と知らない内容も多い労働法。労働者にとって「労働法を知る=自身の権利を守る」ことに繋がり、知っていると役立つ機会も多い重要な法律です。
今回は、「賃金に関するきまりごと」についてまとめました。

賃金額のルール 

転職先を選ぶ際、給与(法律では「賃金」と呼びます)の額を重要視する方は多いと思います。転職エージェント大手のリクルートエージェントが発表した転職者調査では、約半数の転職者が給与額を重視していると回答していました。

このように多くの方にとって重要な賃金額は、「最低賃金法」によって企業が支払わなければならない賃金の最低額(最低賃金)が定められています。

「最低賃金」は正社員、派遣社員、契約社員、パートタイム労働者、アルバイトなどの雇用形態にかかわらず全ての労働者に適用されます。仮に労働者の同意があったとしても最低賃金未満の労働契約は法律によって無効となり、最低賃金額と同額の労働契約を結んだものとみなすため、後からでも「最低賃金との差額 × 実働時間」の請求が可能です。

最低賃金は地域別と産業別に定められており、ご自身の最低賃金を調べたい場合には以下の最低賃金特設サイトが便利です。

賃金の支払いに関するルール

賃金額の支払われ方について、「通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定期日を定めて支払わなければならない」と定義されています(労働基準法第24条)。

(1)通貨払いの原則

賃金は通貨(現金)での支払いが原則で、現物(物品)での支払いは認められていません。多くの企業で採用されている銀行振込みによる支払いは、労働者の同意を得た場合のみ可能です。

ただし、労働協約(※)で定めた場合は通貨ではなく現物支給が認められています。

※労働協約
就業規則とは別に、労働組合が使用者と締結した労働条件。労働基準法で定められた範囲内であれば就業規則と異なる条件を決定でき、労働組合員のみに適用される。規定が重複した場合の優先順位は、労働協約>就業規則

(2)直接払いの原則

賃金は労働者本人に支払われなければなりません。親権者や、労働者の委任を受けた委任代理人への支払いは違法です。

(3)全額払いの原則

賃金は全額支払われなければなりません。積立金、社員旅行費などの名目で強制的に賃金の一部を差し引いて(控除)支払う行為は違法です。

ただし、社会保険料や所得税など、法令に基づく控除は認められています。それ以外については、労働者の過半数で組織する労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者と労使協定を締結している場合は、賃金の一部控除が認められます。

(4)毎月1回以上払いの原則

賃金は毎月1回以上支払われなければなりません。したがって、「翌月に今月分を含めた2ヶ月分の賃金を支払う」などの行為は違法となります。

ただし、臨時の賃金や賞与(ボーナス)については適用対象外です。

(5)定期払いの原則

賃金は一定の期日を定めて、定期的に支払わなければいけません。支払日を「毎月20日~25日の間」や「毎月第4金曜日」など、変動する期日に設定するのは違法です。

定めた支払日が休日などで賃金の支払いができない場合、支払日の繰り上げもしくは繰り下げをする行為は違法ではありません。ただし、繰り上げるのか、繰り下げるのか、は就業規則に記載されている必要があります。

賃金に関するその他のルール

最低額、支払い方法の他に、賃金に関して定められたルールをいくつかご紹介します。

減給の制限(労働基準法第91条)
一回の減給金額は平均賃金の1日分の50%以下である必要があります。また、複数回の規律違反を犯した場合でも、減給の総額は一賃金支払期における金額(月給制なら月給の金額)の10分の1以下でなくてはなりません。

休業手当(労働基準法第26条)
使用者(企業)の責任で労働者を休業させた場合には、労働者に平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。ただし、地震や台風を始めとする天災事変の不可抗力による休業の場合、支払義務は発生しません。

給与明細書(所得税法第231条)
労働法では給与明細書の交付を義務付けていませんが、所得税法において、給与などの支払をする者は支払を受ける者に対して支払明細書の交付を義務付けています。

つまり、使用者(企業)は労働者に給与明細書を交付する義務があり、給与を支払う際に交付しなければいけません。労働者の承諾があれば、電磁的方法による給与明細書の交付も可能です。

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