学ぶ意欲を高める授業づくりを目指して 6年 資料の調べ方の実践報告

 学ぶ意欲を高めるためには、受動的な学びではなく能動的な学びが必要なのはよく言われていることです。
 では、能動的な学びを成り立たせるには、どんなことが大切なのでしょうか?この問いに対する答えは、先生の数だけあると思います。
 私は、次の3点が大切な要素なのではないかと考えました。

 ①問いを持たせる問題提示
 ②大事な考えを共有する3人組での話し合いを通した能動的な態度の育成
 ③1サイクルで完結する授業から2サイクルまで踏み込んだ授業作り

 この3点を踏まえて、能動的な学びで学ぶ意欲を高めることを目指した授業実践を紹介します。

1.取り組んだ内容
 紹介する実践は、6年「資料の調べ方」という単元です。
 単元の1時間目で、5年生で学習した「平均」の考え方だけではなく、「ちらばり」にも目を向けることも大切であることに気が付かせたいというねらいの授業でした。

①問いを持たせる問題提示について
  教科書では、2つのクラスのソフトボール投げの記録が紹介されてお 
 り、「平均を求めて比較する」→「数直線上に表す」という流れが紹介さ 
 れています。このまま授業に使うと、子どもは何の問いを持たないまま授
 業に向かい、教師の言うままに受動的な活動していくと思いました。
  そこで、「バスケットボールの決勝戦でどちらの選手を出場させます
 か?」と投げかけて、次のような資料を提示してみました。

  みなさんは、どちらの選手を出場させますか?

  多くの子どもは「平均」の考え方を根拠にして、A選手を選んでいまし
 た。(A選手の平均は20点。B選手の平均は19.5点)。
  
  しかし,一人だけB選手を選んだ子どもがいたので、そこから、めあて
 「B選手のよさって何?」を設定して、その子の思考に寄り添う形で授業
 を進めました。
  既習の学習を活かせば答えを求めることができるはずなのに、もしかし
 たら違うのかもしれないという意識のズレを感じさせることで、次の活動 
 に意欲的に取り組むことができたと思います。
  ちなみに、A選手は平均点ではB選手よりも勝っているものの、散らばり
 が大きいので不安定な選手、B選手は平均点では負けているけど、散らば
 りが小さい安定した選手と子どもたちは読み解きました。明確な正解はな
 いので、子どもたちの意見の交流の様子は、とても面白かったです。

②大事な考えを共有する3人組での話し合いを通した能動的な態度の育成
  一人の子どもが考えを発表して、「いいですか?」と尋ねて、聞いてい
 た子どもが「いいです」と答える姿に疑問を持っています。短時間に一方
 的に説明されるだけでは、すぐに理解できない子どももいて当然だからで
 す。
  そこで、「授業のねらいに迫る大切な考え方(この実践では、「バラバ
 ラ」とか「確実」という言葉)」を発表した後には、3人組でその考えを
 確認して、さらにその後に数人の子どもを指名して、発表したことを自分
 なりに再現させるようにしています。
  このように、「話し合った後には誰かが指名される」というルーティン
 を全員が意識していることで、発言者や3人組の話し相手の話をしっかり
 聞くようになり、受動的に学習に参加するような姿勢が少なくなります。

③1サイクルで完結する授業から2サイクルまで踏み込んだ授業作り
  文部科学省は、「グラフを作成したのち,考察し,さらに新たな疑問を
 基にグラフを作り替え,目的に応じたグラフを作成し,考察を深める」
 「ある目的に応じて示されたグラフを多面的に吟味する」ことが大切であ 
 ると示めしています。このことを踏まえ、最初に提示された資料を考察し
 て終了という1サイクルで完結する授業ではなく、違う視点で資料に向き
 合い、再考察する2サイクルまで踏み込んだ授業を考えてみました。

  A選手とB選手のどちらを出場させるか判断させた後,次のような資料を
 提示してみました。

  みなさんは、この資料から、C選手のよさって考えられますか?

  子どもたちは、この資料を見て、だんだん調子が良くなっていると解釈
 していました。

  学習したことが定着しているのかを確認したり定着を図ったりするため
 に、類似問題を解かせるのは大切なことです。しかし、せっかく能動的に
 学習してきたのに、適応問題の場面で急に受動的に取り組むことはありま
 せんか?
  時には学習したことを違う視点で考え直しつつ、学習したことを定着さ  
 せるような類似問題の出し方も大切にしたいものです。

2.おわりに
 
算数の授業では、「答えはいつも1つ」という場合が多いです。でも、たまには、明確な答えがない授業もおもしろいと思います。実際、子どもたちは授業後も自分の考えの根拠を言い続けていました。
 これからも、そんな学ぶ意欲があふれるような授業づくりをしていきたいと思っています。そして、「算数が好き!」って言ってくれる子どもが一人でも増えたら嬉しいなと思います。

                        チーム算数 むらまこ


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