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新学習指導要領を受けて 〜中学校英語の難化とこれからの小学校英語について考えること〜

 昨日、Yahooニュースでこちらの記事をみて、そういえばそうだったなぁと思い出しました。
 昨年度まで中学校で6年間英語を教えていた立場から、みなさんにも知ってほしいなぁと思うことをまとめてみたいと思います。

 教科化し、教えるべきことがある程度はっきりしてもなかなか難しい小学校英語。何を目指して授業をすれば良いのか?
 これからあるべき姿についてみなさんの意見が聞きたいです。

1.英語付きの小学生が減少、中学生は成績が二極化の傾向 その原因は?

 冒頭の記事のトップにきているのは、全国学力・学習状況調査で、英語の学習(勉強)が好きと答えた小学6年生が減っている、というものです。2013年度は「そう思わない」と「どちらかといえば、そう思わない」の合計が23.7%だったが、21年度は31.5%になったとのこと。

 学習指導要領の改訂で外国語活動が教科化されて以降、中学校に入ってくる子どもたちと英語の授業をしていて、以下のようなことを日々感じておりました。

・授業を行う担任の先生によってやってきたことや子どもたちが身につけてきたことがバラバラ
・得意・苦手/好き・嫌いの感じ方にも中学入学時点で差がある
・親の教育熱も加速化しており、学力の二極化が進んでいる(中1時点で英検2級を持っている子もいる)

 やはりまだ小学校の中で、外国語活動が手探りで進んでいる状況が想像できます。多くは英語専門でない先生方が苦労してカリキュラム・指導法を工夫されていることを考えると頭が上がりません。

2.中学校英語教科書の難化について

1.内容のイメージ…結構面食らいませんか?

 様々な教科書の本文を参考に、中1最初、Unit1の単元内容を参考に例文を作成してみました。左側の教科書の内容は、想像がつくと思います。挨拶の導入を交え、be導入をしています。
 それに比べて、現在はけっこう右側のような感じです。例文をご覧いただくと、be動詞と一般動詞、不定詞、Let’sなどの命令文まで登場しています。
 これまで長く続いてきた中学校英語は『文法学習』軸の構成でした。be動詞を学習してから一般動詞、三人称単数現在とすべての現在形を学習してから中1最後に過去形を学習する、といった具合です。一方、新学習指導要領は「使える英語」の学習にシフト。文法の新出順もある程度は考慮されているように見えますが、それ以上にシチュエーションに合わせた表現学習が軸となっています。「自己紹介」「道案内」「買い物」「電話での会話」「メールでのやりとり」など生活の1場面を想定して、その場面で使用する英語表現、英文法を学習する内容に大きく変わりました。三単現を教える前に、中1の2学期で過去形を教える、ということを目の当たりにし、結構面食らったことを覚えています。

2.中学校までに学習する単語数が倍増している!

 小学校で教科化され、教科書ができたことで、ある単語については小学校のうちに学習している前提で中学校の授業が進みます。単語数を見ると、小学校では600〜700語の単語が学習されていることが前提となり、中学校卒業までに、それも含めて2500語(これまでの2倍以上)の単語の習得が求められています。

NEW HORIZON 1年教科書(Unit2)より

 教科書によっては、小・中接続を意識した構成があり、ユニットの最初にこれらの単語を頼りにリスニングをしようとか、会話をしてみようという導入を経てレッスンが始まることもありますが、ここでいう『小学校の単語』は新出単語の扱いではない(もう小学校でやったよね、とされる)、ということが案外知られていません。
 小学校のうちの定着がないと、中学校英語ではかなり苦労することになるので、耳や口への定着、意味がわかることまでどう小学校で達成していくかは考える必要があるのかなと思います。

3.文法事項が学年間で移行

 また、文法事項も学習順が見直され、学年間で内容が移行したものもあります。高校で学習するこのような学習事項も、中学校で扱います。

・感嘆文 How  interesting!  (なんておもしろいの!)→中1
・仮定法 If I had a brother, I could play soccer with him. 
 (もし私に兄弟がいたら、私は彼とサッカーをすることができるのに。)→中3
・現在完了進行形 I have been playing soccer for two hours.
    (私は2時間ずっとサッカーをしています。)→中3

3.小・中英語の接続をもっと考えたい

 学力の二極化、好き・嫌いも中学校スタート段階で分かれてしまう、そんな現状。前者はもうここまでくるとしょうがないでしょう。中学校以降でそうならないように工夫して食い止めるしかありません。
 小学校でやっていて英語が好き、楽しいという気持ちにさせることが大事。その気持ちやしっかり身につけてきたことが難化した中学校英語でも生かせるという、ポジティブな状態のままでいられるよう、一層考えていかないといけないと思います。実はまもない次の教科書改訂にも備えなければいけません。
 私が考える小学校英語、大事なのかな、と考えていることは次の3つです。

①学習語彙を、イラストと【文字】と共に導入し、親しませるようにする(書くことは強制しない、興味がある児童のみ)

 中学校での英語学習での難しさは、なんと言っても文字となった英語への拒否反応から起こってきます。
 小学校英語では、アルファベットが分かり、書ける。文字言語として扱う範囲としてはそこまでで良いと思うのですが、この単語はこう綴るんだよと見せておくだけでも、何回か発音練習をしたり会話の中で使うだけで、頭の中で文字と音とのつながりが意識化されると思います。(見ただけで読めるようになる子もいるはず)
 中学校の段階で既習語彙とされてしまうものについては、小・中接続を考えて文字を見て読むことができる程度まで小学校で慣れておけたら良いと思っています。

②言語活動の意識化

 外国語活動を問わず、新学習指導要領では『言語活動』が大事な学習活動となっていて、言語活動を通じて子どもの力を育てることが大事と謳われています。
 そして、外国語科では言語活動を通じて【コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力】を育成することが求められている。

 この動画で直山先生もおっしゃられている通り、英語を使うこと、チャンツや歌で英語に慣れさせることが最終目的となっていてはダメで、あくまで教科書に出てきた表現や単語を知って、それを【会話の中で使えた/『自分の思いや意見を表現』できた】ことに繋げる活動を仕組まなくてはなりません。文法や使う単語が少しぐらい間違っていても、伝われば良いのです。
 英語でコミュニケーションをとることにポジティブな気持ちを持てる小学校英語の活動の工夫の積み重ねが大事だと思います。

③小・中教員の交流、研修等
 
 これが何気に一番大事だと思っています。①・②のことなどを意識して行なっては言っても、小・中で英語を教える先生が一緒ということは義務教育学校や小中一貫校でないとほとんどありえない話です。連携がチグハグだと結局中学校で、小学校英語を生かした授業が展開できません。
 学区内の小・中の先生が交流すること、外国語・英語の授業の研究や授業見学等を通して『お互いがどんなことを教えるのか/教えて欲しいのか』を交流し、カリキュラムを一緒に考えることが目の前の子どものためには一番大事なことだと思います。これは、外国語・英語に関わらず、他の教科についても言えることではないかと思います。

 授業てらすの中でも、学校種をまたいだ教科のカリキュラム開発、連携について考える機会をもっと増やしてもいいなと思っています。
 英語についてはいろいろな経験がありますし、ポイントも分かっているつもりですが、その他についてはやはり知らない点ばかり。例えば、来年度6年生担任となったとします。中学校に算数のどのような力をつけてあげていけばいいかをじっくり考えたことはありません。中学校の教科書をじっくり見て、接続について考える機会はそれぞれの教科で必要だなと思いました。

 今後のイベントや企画で、このような視点ももって取り組んでいきたいなと考えています。
 今日も長文となってしまいました。まとまりなくすみません。
 思うところ・感想等コメントで頂けたら嬉しいです。

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