デヴィッド・ラドニックのアルバムのデザイン。色々と考えさせられるところがある。
音楽史を大きくアップデートするのではないかと誰もが期待を寄せる革新的音楽家ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)が2018年にリリースしたアルバム『Age Of』。
そのデザインには、アメリカ現代美術シーンでカルト的人気を誇るアーティストのジム・ショー(Jim Shaw)の作品「The Great Whatsit」を取り入れている。
The Great Whatsitって「素晴らしい何か」っていうタイトル、Apple社を信仰する消費社会を宗教的に皮肉った祭壇画のような絵が面白い。オリジナルとは反転しているのは何か意味があるのかな?
ジム・ショーは、架空の宗教「O-ism」をテーマにした作品、故マイク・ケリーと活動していたデストロイ・オール・モンスターズ(DESTROY ALL MONSTERS)というバンドのメンバーとしても有名で、まさにカルトヒーローといった肩書が良く似合う。
さらに『AGE OF』という印象的なタイポグラフィとアルバムのデザインはデヴィッド・ラドニック。彼のインタビューのなかでいつくか心に残っているものがある。
「デザイナーは、ミュージシャンにとってナラティブな存在でなければならない。なぜなら、彼らはその名前とともに視覚的イメージを生み出しているからです。」
活動のシンボルとなる固有名詞をタイポグラフィで表現し、ミュージシャンのことを語ってあげることが必要ということですね。確かに深い話です。
固有名詞(こゆうめいし)とは、同種類の事物からそれ以外に存在しない一つを区別するために、それのみに与えられた名称を表す名詞のこと。
またデザイナーであるデヴィッド・ラドニックは、こうも語っています。
発信者である「デザイナー」と受け手である「観客」との関係は
「デザイナー→観客」
・観客を作品に参加させ、観客自身が主人公となる機会を与えること
「観客→デザイナー」
・観客の感じたイメージをデザイナーが追体験し、観客から刺激を受ける
機会をつくること。
ヴァーチャルリアリティが普及すれば、観客が単なる観察者ではなくなり、主人公にもなり、コンテンツ作成者にもなるという世界があたりまえになるということ。グラフィックデザインの歴史では、グリッド構造の重要性が1984年にApple社より発表されたデスクトップコンピュータにより、「解体」されたことで新たな表現が広がったという歴史があります。
ニューヨークのパーク アベニュー アーモリーで行われたプレミア ライブ「マルチメディア コンサートMYRIAD」ポスター。
ジェイムス・ブレイク(James Blake)がアルバム全体のミックスを担当しているほか、3曲でキーボードを演奏しており、アノーニ(Anohni)もヴォーカルで参加している。さらにパーカッショニストのイーライ・ケスラー(Eli Keszler)、シンガーにしてチェリストのケルシー・ルー(Kelsey Lu)、ノイズ・アーティストのプルリエント(Prurient)らが参加している。
などなど検索すればするほどネタは尽きないというか、各界才能ある人たちがこのプロジェクトに集まっています。ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー:ダニエル・ロパティン(Daniel Lopatin)という一言では説明できない奥深い存在(固有名詞)をデザインするということは、こういうことなのかと色々と考えさせられました。