酸素摂取量とは

マラソンや駅伝を見ていると鼻にテープをつけている選手を見かけますが、あれを見ると酸素摂取という話の理解は全くされていないんだな、と思うわけですが、まぁ詳しい解説を受けたことが無い人がほとんどだと思いますし、何だか難しそうな説明がされる気もしますし、仕方がないと思います。
VO₂MAXと表示されますが、Vの上にドットがつけて毎分の摂取量を示したり、体重で割って相対的な値で摂取量を示したりというのがよくある例だと思います。

さて、これはどのように求められるのか?

Wikipediaの説明は上記のようになっています。最大値の求め方ですね。

もう少し説明しますと、
Q=心拍出量。心臓がドクンとなった一回で送り出される血液の量

CaO₂=動脈酸素含有量。肺で酸素を受け取って心臓から送り出されるというのは、中学校で勉強したと思います。

CvO₂=静脈酸素含有量。動脈を通って運ばれてきた酸素は末端の細胞で利用されます。この時に二酸化炭素と交換されます。

CaO₂-CvO₂=動静脈酸素較差。末端の細胞でどれだけ酸素を利用し、二酸化炭素を放出したか、という数値になります。

この点で察する人はいるかと思いますが、大事なのは細胞でどれだけ酸素が利用されるか、二酸化炭素との交換が行われるか、ということになります。酸素の摂取というのは鼻や口からの取り込みの能力ではなく、より多くの赤血球に酸素・二酸化炭素を結びつけるか、どれだけ末端で使うか、という能力になります。肺での酸素と二酸化炭素の交換は酸素分圧に応じて行われます(この点はもっと面倒な話なので省略。酸素の量や圧力に応じて勝手に酸素と二酸化炭素の交換は実施されているという話です)。この点が分かりますと、鼻にテープを貼って空気の取り込みを増やしても意味がない、ということが分かるかと思います。例外としては鼻づまりが酷い時ですが、それ以外の時には鼻にテープを貼っても酸素の取り込みを高めることは期待できません。


鼻にテープを貼って肺の機能が高まることはないです
鼻にテープを貼って細胞での酸素と二酸化炭素の交換が高まることはないです
鼻にテープを貼って心拍出量が高まることはないです

また、鼻にテープを貼って空気の取り込みが多くなると弊害もあります。鼻には意外と重要な機能がありまして、空気中のゴミを取り除く、空気を温める・湿らせるといった機能があります。鼻(鼻腔)・鼻毛に重要な機能がありますので、見た目を気にして整えすぎると、鼻の持つ本来の役割が果たせなくなります。テープを貼ることで鼻腔を拡張してしまうと、上記のような機能が十分に発揮できなくなります。運動中であれば口呼吸も行われますが、全てが口呼吸ではありません。鼻をつまんで走ると通常よりもすぐに苦しくなると思います。鼻も十分に機能しています。

ということで、鼻にテープを貼るのは酸素の取り込みには無意味である上に、鼻が持つ機能を邪魔するのでマイナスの効果すら生まれる、となります(既に20年近く前の論文でマイナス効果となると出ております)。

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