持久的トレーニングにおける負荷設定の考え方

持久的トレーニング、特にマラソンにおいて今回はじっくりと考えていきたいと思います。セミナー的なやつでいつも話をしている内容をまとめ直した感じです。まず参考とするのはこれ。
What is best practice for training intensity and duration distribution in endurance athletes?
https://www.researchgate.net/publication/46403553

Int J Sports Physiol Perform. 2010 Sep;5(3):276-91.
Stephen Seiler
この論文にあるインテンシティ(強度、負荷)のZONE1を多くすべき理由を考えましょうという話です。

この論文におけるZONE1は最大酸素摂取量(VO2MAX)の50%からLT(乳酸値にして2mmol)程度としています。そうした中で持久系トレーニングを積んでいるエリート選手の解析をしてみた(Training intensity of elite male distance runners )結果、準備期の6~8週間において最大酸素摂取量の60%程度に相当する負荷(心拍数で見ている)となるトレーニングが最も多く、インターバルやレースは4%ほど。同様に4kmと10kmのクロスカントリーランナーでのトレーニングを見たものでは(How do endurance runners actually train? Relationship with competition performance)ZONE1でのトレーニング量がゴールタイムと強く関係があり、一番軽い負荷でのトレーニングが高強度の競技の結果に大事であろうとしています。

これらの理由が何なのかという点をもっと考える必要があると思われるわけです。日本においては距離信仰があり、とにかく距離を踏むというのが大事とされて低負荷でたくさん走ってきたはずですから。ここで考えるべきは、ZONE1の負荷で日本人はやっていたのか(低負荷が実は少し違っていたのでは)?ZONE2のトレーニングが欠如しすぎていたのでは?ということです。2018年にオレゴントラッククラブのマーク・ローランドが来日して中距離指導者研修会で話をされていた時も、低負荷でのトレーニングの重要性を話されていましたが、日本人が考える低負荷による持久力の向上とは違った面を大事と言われていました(研修会終了後に個人的に質問をした点への回答より)。つまり、ZONE1の低負荷で求めるものが持久力ではない。そしてZONE2を丁寧にやることで持久力向上へと大きくつながっていると思われます。ZONE2やそれ以上をやるための身体作りがZONE1に求めるものであるということです。
一方で高強度のトレーニングはどの程度の負荷設定、時間でトレーニングをするのが効果的かという問題もあります。感覚としてはキツいことを実施すると効果がありそうと思いますが、実際の効果としてはどうなのか。

作業中


これを自転車実験で確認したものがありますが、最大心拍数の90%の負荷で8分を4set実施した方が、16分×4setや4分4setに比べて高いという結果です。16分という時間であると少し負荷は低くなり、4分だとより高くなる。そうした微妙なところの中で設定としてはなるべく長い時間をそこそこ高い負荷でやる、というのが最適解として考えらえるということです。この点に関しては他の論文などを見ても同様であり、陸上競技のトレーニングとしては1マイルがおおよその設定となることが考えられます。

どれくらいの負荷で実施すべきかというのは人それぞれ、トレーニング状態などによって異なるという当たり前の話になります。

回復はどれくらいでするのかという疑問に関しては、明確な指標は無い

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