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『最長片道切符の旅』を旅する day6 うまいものとなると魔が差すのである

倶知安(くっちゃん)から旧胆振線(いぶりせん)跡をバスで伊達紋別(だてもんべつ)へ、室蘭本線長万部(おしゃまんべ)、函館。函館から旧青函(せいかん)連絡船、現在の本州連絡航路で青森へ。

【6日目】倶知安ー青森 9月24日(木)

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倶知安 0710(バス)0934 伊達紋別 1007 1039 長万部 1300 1603 函館1730(連絡航路)2110 青森

胆振線は倶知安から羊蹄山の裾を回り、洞爺湖と有珠山の東側を通って室蘭本線の伊達紋別に至る83.0kmの線である。戦争末期には線路の下から昭和新山が盛り上がってきたし、つい最近は有珠山の噴火による降灰や泥流で線路が埋まるなど、火山活動の被害をよく受ける線である。

倶知安(くっちゃん)駅始発の伊達紋別(だてもんべつ)行き始発バスに乗る。「札幌お願いします」と言って乗り込んでくる客が多い。喜茂別(きもべつ)で札幌行きのバスに接続するためだ。無線で札幌行きのバスに連絡している。鉄道と同じサービスだ。JR小樽駅経由で札幌に出るより、バスの方が安くて早いそうだ。どっしりとしたよい形の羊蹄山がよく見える。

このバスのばあさんたちはずいぶん静かだ。喜茂別から大滝までほぼ60%ほどの乗車率である。これなら大滝まで鉄道を残しておけばよかったのにと思う。冬場は鉄道の方が強いだろう。ただし鉄道は「病院前」「高校前」「町役場」には停まらないか。

洞爺湖東側の大滝バスステーションで運転手が変わる。「伊達までけっこうかかるよ。昔の胆振線の通りに走っとるからね。あと1時間ぐらいかかっからここでトイレに行っときなよ」

胆振(いぶり)の痕跡は全くない。広島峠は深くて、鉄道はここをどうやって抜けたのかと思う。山の中に入るとこの森のどこを鉄道は走っていたのか全く分からない。旧大滝駅には線路跡があり、遊歩道として整備されていた。北湯沢温泉の手前にホーム跡がちらっと見えた。蟠渓(ばんけい)温泉に小さな朽ちた鉄橋があった。ずいぶん小さい鉄橋だ。

列車は壮瞥(そうべつ)に停まっている。ホームも駅舎の屋根も灰で被われていて、殺伐としている。有珠山の降灰である。畑も家も一面に灰黒く、ディーゼルカーは線路際に積もった灰を巻き上げながら走る。

壮瞥(そうべつ)で有珠山の肩に赤茶けた昭和新山が見えた。かすかに蒸気を噴き出している。「横綱北の湖記念館」がある。

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伊達紋別(だてもんべつ)から接続がよい特急で長万部(おしゃまんべ)へ。ここで砂原(さはら)経由の各駅に乗り換える、予定であったが乗り過ごした。

汽車は出て行く、弁当は残る

ことの顛末はこうである。

伊達紋別には売店がなく食料は売っていなかった。そうだ、長万部には「かに弁当」がある。長万部駅では次の各駅停車の乗り継ぎまで4分ある。4分あれば弁当が買えるだろう。

長万部駅、ホームに弁当売り場無し。改札口に走る。ここにもなし。駅売店で聞く。「駅前の信号渡ったところの食堂で売ってるよ」。信号を足踏みしながら待つ。お弁当屋「はい、今すぐ作りますよ」、でタイムアウト。列車は出て行く、暖かい作りたての弁当が残る。仕方が無いので、お弁当を定食にしてもらって食堂で食べた。

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時間があるのでもう一つの名物駅弁「合田の盛りそば」も食べる。

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先生も『時刻表2万キロ』で唐津の伊勢海老で一駅乗り損ねた話を書いていた。うまいものとなると魔が差すのである。ま、ありがちな話だ。しょうがないので2時間30分待って1300の普通列車に乗った。これで青森着は夜になるだろう。

室蘭有珠

室蘭本線普通渡島砂原経由函館行き。旧砂原線である。途中、標識「横取り」というのがあった。横風注意の意だろうか。ディーゼル一輌ワンマンカー。一駅で一人拾い、一駅で一人降ろす。のんびり静かにゆっくり進む。しかし駅にはきっかり45秒に停車し15秒後に発車する。恐るべしJRの定刻運転。

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列車は駒ヶ岳の裾を大きく巻きながら緩い勾配をぐんぐん登って行く。左窓に対岸の室蘭を望み、駒ヶ岳のなだらかな山腹を走るのでなかなか爽快である。裾の美しい貴婦人のような駒ヶ岳の全容を眺めるには旧線の方がいいが、砂原線の車窓も捨てたものではない。

駒ヶ岳は山裾だけ見える。「駒ヶ岳災害避難道路」の標識が見える。現役活火山の貴婦人である。

室蘭大沼

「青春18切符」ポスター。大沼湖。

函館 1603 着。連絡船 1730発まで1時間30分ある。なにかおいしいものを食べたい。

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タクシー運転手池田さん「そだねえ、ラーメンなら江戸八の塩ラーメンが昔の味だ。松楽の味噌ラーメン、ホタテ湯麺もいいよ」(今の旬は何ですか)「今はババガレイの煮付けがうまいよ。岩魚のふっこ(卵)の醤油付けもうまい。ソウハチは11月まで。塩で洗って一夜干ししたのがうまい。夏だったら奥尻のウニ、アワビの味噌汁がいい。ウニのつぶ、味噌まで食べると船酔いすっからね」「でもまあ時間があるなら阿佐利のすき焼きがいいんでないかい」「今年は台風の塩風で葉がやられて紅葉しねえで落ちてまった」

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ということで、池田さんイチ押しの「阿佐利本店」ですき焼き 3000円。創業1901年の趣のある建物。二階座敷は床の間、障子、中庭。肉もうまかったが野菜が格別にうまかった。連絡船乗り場へ急ぐ。

青函連絡船。和室の二等船室、2800円。30%ぐらいの入り。毛布と枕で陣地を作る。隣に秋田から来たオーストラリアの医学生。車で北海道を回ってきたそうだ。4時間、爆睡。よく寝た。2110 青森着。

青森駅前のビジネスホテル泊。駅で翌日回る予定の「リゾートしらかみ」の指定券を予約した。明日からは本州を回る。


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