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[BKK通信05] バンコク普通列車事情 後の席はお坊さん専用だ

東北地方のコーンケンに行った折、せっかくなので帰りは鉄道で帰ることにした。一緒に行ったタイ人はみんな尻込みしてついてこない。全員、高速バスで帰っていった。結局、一人で鉄道に乗って帰ることになってしまった。450km8時間の旅である。

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450kmといえば、仙台東京。新幹線なら1時間40分、特急なら4時間30分、在来線なら8時間(おっ、これは変わらないね)、飛行機なら1時間の距離である。

コーンケンからはバスで6時間、飛行機なら1時間。いずれもほぼ30分おきに出ているから、1日5便の鉄道は分が悪い。

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コーンケンの駅から乗った列車は長距離普通列車・バンコク行き。コーンケン発 0832ー1710 バンコク着。切符は三等車・冷房なし、77バーツ、250円である。冷房車もあるのだが高くて(二等450円)、しかも窓が開かないし、日除けのため真っ黒なフィルムが貼ってあって、外がよく見えないのだ。それでは鉄道に乗ったことにならないではないか。(現在は全て二等車エアコン付き、急行または特急列車になった)

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乗り込んだ三等車は、木のベンチで、大きな荷物を抱えた家族連れ、出稼ぎ組などで満員である。もう太鼓を叩いて歌や踊りで盛り上がっている連中もいる。

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しかたがなく、どんどん後ろに歩いて行くと、最後部車両の後ろ半分が、紐で仕切ってあってガラ空きである。タイ語で「お坊さん専用席・一般立入禁止」と害いてあるのだが、タイ語がわからない日本人の振りをして、ありがたく座ってしまう。お坊さんが来たら立てばいいか。

タイではお坊さんは一生修行中の身であり、尊ばなくてはならない。朝、托鉢で食事を差し上げることも、日々お寺に寄進することも信心である。公共の乗り物、バスや列車では一番後ろの席がお坊さんの席と決まっていて、ここには普段一般人は座らないのだ。

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列車は荒涼とした東北地方の高原を走り抜ける。もう半年も雨が降っていないこの季節、土地は干上がり、赤土の土煙が舞い上がる。窓から顔を出すと、むっとした熱風が顔を打つ。しかし、車内は窓から適度に風が入って気持ちがよい。

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泥水に体を埋める水牛。池で今晩のおかずを釣るおばさん。丹念におかずになる木の葉をつんでいる少年。涼しそうな木陰でごろんと横になっているお婆さん。広い校庭でサッカーをする子どもたち。ぽつんぽつんと建っているは高床式で、床下には人間の背丈より大きい雨水を貯める水瓶が並んでいる。窓の外はいつまで見ていても飽きない。

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おっと、お坊さんが乗ってきた。あわてて席を立つと、私の前の席に悠然
と座り、目で座りなさいと合図する。ありがたい。

年の頃は私と同じくらいだろう。寂びた良い顔をしている。もう何にも恐くないという顔だ。持っているのは頭陀袋だけ。身にまとっているのは、もう色があせた渋いオレンジ色の法衣一枚である。これは腰巻と一枚の布だけで出来ている。ちなみに、下着は付けないのが習慣だそうだ。

 咳がとまらないようなので、水のビンを差し上げたら、頭ひとつ下げるでなく至極当然のように受けとってそのまま頭陀袋にお仕舞いになった。タンブン(喜捨)は自分のために行なうのだから、感謝するのはこちらのほうなのだがいささか拍子抜けした。

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そのうちゴム草履を脱ぐと、シートの上でほれぼれする結跏趺坐(けっかふざ )の姿勢に入り、そのままの体勢で半眼の世界に行ってしまわれた。これはすばらしく美しく見事でほれぼれと見とれてしまった。と、ふと目を開けて、サラブリーに着いたら教えてくれ、とおっしやる。はは、参ったな。かしこまりました。

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列車はようやくバンコクに近付く。ドムアン空港が見えてくると、今まで裸足で走り回っていた子どもたちが窓にへばり付いて、飛行機だ、お母さん、飛行機だと賑やかだ。出稼ぎの家族に違いない。子どもたちは初めて見る高速道路渋滞ビルに興奮している。

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ようやく八時間の旅も終わりだ。やれやれ。いやあ、もう汗と埃で体中べとべとだ。水浴びがしたいなあ。腰が痛い、マッサージにでも行くか。

(お坊さんの写真は真正面からは撮ってはいけないので、掲載の写真は全てフリーフォトからお借りしました)




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