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土木学会『論説・オピニオン』

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土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重…
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#インフラメンテナンス

土木技術者の努力を学ぶ

穴見 健吾 論説委員 芝浦工業大学 先日、明石海峡大橋建設に挑んだ技術者たちを映したテレビ放映を視聴した。様々な問題に苦労しながら立ち向かい、新たな技術を作り出して前代未聞の大事業に挑んだ技術者たちの姿が非常に印象に残った。 挑戦の過程では失敗もありながら、それを克服していく様は、我々が学ぶべきところであると思うのと同時に、講義で学生に伝えている知識や技術が、このような技術者・研究者の努力の末に生まれてきているのだと再認識するところであった。 土木技術者の活躍の場は多岐

大学教員が「橋の日」に感じたこと

穴見 健吾 論説委員 芝浦工業大学 8月4日は「橋の日」である。 鋼橋の耐久性(疲労)について研究している筆者の分野では例年「橋に関するシンポジウム」が行われているが、本年は所用により宮崎県にいた。車での移動中に一般の方々が参加する「橋の日イベント」に遭遇した。このイベントは普段使っている橋に感謝を込めて橋の清掃等も行うもので今年が37回目となる。このような橋に限らず社会基盤施設に対する理解・興味を深めてもらう行事は「橋の日」「土木の日」に限らず多く行われている。国土交通

地域のインフラメンテナンスは産学官民の総力戦で

岩城 一郎 論説委員 日本大学 教授 近年、高度経済成長期に集中整備された橋をはじめとするインフラの老朽化が社会問題となっている。2012年12月2日、建設から30年以上が経っていた笹子トンネルで天井板落下事故が発生した。この事故を受けて、政府は2013年をメンテナンス元年と位置付け、インフラの長寿命化を国の重点施策とした。さらに、国土交通省では2014年に全国に約70万ある橋に対し、国が定める統一的な基準により、5年に1回、近接目視点検を行うことを基本とする省令を制定した

メンテナンス技術の価値に適切な評価を

水口 和之 依頼論説 (株)ネクスコ東日本エンジニアリング代表取締役社長 社会資本メンテナンス元年(2013年)から10年、この間に、道路構造物の5年に一度の詳細点検は法制化され、高速道路会社はRC床版の取り換えを中心とした大規模更新事業を全国で進めており、土木学会では2020年度にインフラメンテナンス総合委員会を立ち上げ体系的・有機的な活動を開始している。 日本のインフラはすでにメンテナンスの時代、しかも大更新時代に移行していると思われるが、一方でインフラメンテナンスの

メンテナンスとロボット

小宮一仁 論説委員 千葉工業大学 学事顧問  老朽化した土木構造物が増加し、また点検・整備等に携わる人員の確保が難しくなる時代には、維持管理の生産性の向上に寄与する新技術を開発しなければなりません。筆者は、維持管理のための情報収集(点検・検査等)には小型ロボットの活用が有効であり、小型ロボットを使うためには、土木技術者がロボットの開発に積極的に関わることが重要であると考えています。  筆者は、シールドトンネル工事におけるシールド機の制御と地盤や近接構造物の挙動との関係を解