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土木学会『論説・オピニオン』

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土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重…
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#人材育成

杉本昌隆八段の指導法

木村嘉富 論説委員 一般財団法人橋梁調査会 令和5年10月、将棋の王座戦で藤井聡太王将が永瀬王座を破り、史上初の将棋八冠独占を達成した。駒の置き方や動かし方、というより、動かして良い場所くらいしか知らない私にとって、メディアで取り上げられていた中で印象に残っているのが、師匠杉本昌隆八段の指導法である。 指導法の一つに、指し方に口を出さないというのがあった。細かな指し方について口を出すと、その指し方は理解できるが、それ以外の指し方について自分で考える機会を奪ってしまう。結果

ITツールの活用が求められる建設コンサルタントの人材育成

上村俊英 論説委員 (株)建設技術研究所 多様な働き方への要望の高まりやICTの活用により、OJTが質・量的に減少する傾向にある。そのため、これまで先輩や同僚と同じ実空間で自然的に共有できていた情報やノウハウを、自ら求めていく必要がある。求める情報のうち土木技術に関する内容は企業や自力での対応が比較的容易だが、ITの活用を早期に広げるには、技術者の学びへの動機付けと、指南してくれる相談役の存在が有効ではないかと感じている。以下に、私見を述べる。 多様な働き方への取組が新

イノベーションと人材育成

田中 茂義 論説委員 大成建設 土木は総合工学であり、これを担う土木技術者は人々が暮らしやすい『より良い社会』の実現のために総合マネジメント力をもって世の中に貢献してきた。土木工学は文明社会の基礎を築く工学であり、土木技術者には創造性、柔軟性、視野の広さと旺盛な好奇心などがその資質として求められる。これらに加えて土木技術者の重要な役割として社会課題の解決に資する『イノベーションへの貢献』が挙げられる。 少子高齢化と人口減少の中で、国際競争力と価値創造力が低下するという危機

建設コンサルタント業界における人材育成についての私見

中野信悟 論説委員 パシフィックコンサルタンツ株式会社 私ごとですが、土木業界に身をおき25年を目前にしている。あらためて、土木は、国や地域の未来を多くの関係者とともに創っていくやりがいのある魅力的な業界であると感じている。 昨今、コロナ禍やウクライナ侵攻等を受けて、経済の不透明感が高まっているにも関わらず、私が所属する建設コンサルタント業界は幸いにも業績が好調である。海外インフラ関連プロジェクトの売上は減少したが、国内官公庁需要が好調の主要因となっている。海外についても