世界観をつくれ!小売の未来は編集にあった。
最近「編集」が旧来の意味からどんどん拡張されていて、個人的にめちゃくちゃ興味のあるキーワードです。
そして「小売」と「編集」は深く関わりがあるのだとNewsPicksアカデミアのシリーズ「新小売概論」に出て気づき、そこから毎回行くようにしています。もう毎回面白い。
今月は「雑誌が"百貨店"になる日」というお題で、登壇者は博報堂ケトルの嶋浩一郎さんと、集英社のコマース事業を運営する石塚雅延さんのお2人。ちなみにファシリテートはnoteでおなじみの最所あさみさん。
石塚さんのお話は「出版社がECをやること」の実態や苦労について非常に具体的にお話しいただき、とても勉強になりました。
集英社さんのEC、なかなかの規模になっていて驚いた…。
嶋さんは、意外な切り口から論理を展開するため面白く、印象的な言葉がたくさん出てきました。
今日はそんな嶋さんの言葉の一部をご紹介します。
「ネットは世界観を作りづらい。雑誌は世界観を作れる。」
これ、直感的にはわかると思うのですが、それがなぜかって説明できますか?
私は出来ませんでした。今回のイベントに出るまでは。
なぜネットは世界観を作りづらいのか?
大きくイベントの中で3つ語られていました。
①:ネットの特徴
ネットは「顕在化した意識」にむけてコンテンツを提供するのは得意だが、データにならない「潜在的な意識」に訴えかける世界観をつくるのは難しいから。
②:ネットコンテンツの制作事情
ウェブ編集者は書いた記事のPVが良かったとしか言われないので、1個1個の記事でしか評価されない。
③:ネットコンテンツの消費のされ方
ニュースサイトだとメディアの異なる記事がバラバラに並んでいるから。
もやっと思っていたことを言語化されて、非常にスッキリしました。
PV主義に疲弊してきたネットメディアは、世界観を作る必要がでてくるでしょう。
その時に潜在的な意識に訴えかけるためにSNSで流通するようにしたり、製作者の評価を長期的に実施していったり、ニュースサイト等にRSS配信をなるべくしないようにしたりすることはマストになるでしょう。
ちなみに世界観が作れているネットメディアの例として挙げられていたのは「ほぼ日」「北欧、暮らしの道具店」「東京カレンダー」「NewsPicks」でした。
東京カレンダーを意外に思う人もいるかもしれませんが「港区女子」「港区おじさん」という言葉をネット発で生み出した部分を評価しての選出です。
(さらに余談ですが、最所あさみさんが「東カレって最初、雑誌があるって知らなかったんですよ!」という衝撃の発言がw 東カレすごい。)
「乗り物(メディア)が変われば、免許(コンテンツお作法)も変わる」
例えのわかりやすさに感動しましたw
雑誌のコンテンツをネットにそのまま出してもダメだと。
その理由として3つ挙げていました。
①週刊誌は主観が多めでよいが、ネットだと嫌われるから
雑誌は主観が多めでも、その主観を求めているため問題ないが、ネットだと「自分で考え方は選ぶ!」という人が多いため、下手すると炎上をする可能性もあると。
②ネットニュースは余白があるべきだから
ネットは「なんかこの記事に言いたい」と思わせる必要があるが、雑誌は余白がなく完成されているため。
③雑誌は閉じた世界だから
雑誌は雑誌を買ってる人だけに通じる専門用語を使っていいですが、ネットに出すと「意味わからない」となってしまう。
そもそも雑誌とネットでは読む態度も文脈も異なるため、コンテンツをそのまま展開したら通用しません。
逆に雑誌は「秘密の共有」の要素もあるため、コミュニティとして機能させるには適切なメディアなのかもしれません。
「編集者はもっと多動であれ!」
嶋さんはしきりに「編集者こそ多動であるべきだ」と言っていました。
今は小売含めたあらゆるビジネスは、世界観をつくり、ライフスタイルを売るようになってきた。
だから編集者は最強ビジネスマンになれるのに、自分の能力を拡張していない。
編集者が多動になって、教育をやったり旅行をやったりと、世界観を中心にして幅広くビジネスが展開できるのに、紙の出版社は紙の上で整理するのが仕事だと思っているフシがある、と嘆く嶋さん。
冒頭で、私が編集にワクワクしたという記事を載せましたが、嶋さんのお話を通じて、編集は広い範囲に適用できる「世界観をつくるスキル」だからこそワクワクするのだなぁと感じました。
小売の話が編集になるのはある種必然で、ファシリテーターを務められた最所さんもTwitterでおっしゃっていたことから考えても、資本主義によって小売の本質に立ち戻っているが故に「編集」のニーズが高まっているのではないか。
つまり小売の未来は「本質への回帰」なのだと。
自分という存在もある意味「メディア」なので、その観点でどう編集していこうか、とアイデアが1人止まらない夜になりました。あぁ、楽しい。
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