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COO1年目が感じた、本当の経営者目線

「経営者目線を持て」

会社の上司や先輩にこう言われた人は多いと思います。

かの有名な松下幸之助も、昭和49年の著作「社員稼業」でこう述べていました。

自分は単なる会社の一社員ではなく、社員という独立した事業を営む主人公であり経営者である、自分は社員稼業の店主である、というように考えてみてはどうか、ということである。

言葉は違えど、この時代からすでに言われていたようです。

私も過去、冒頭の言葉を投げかけられ、自分なりに経営者目線を持ったつもりで働いてきました。

しかし、本当の「経営者目線」ってどれくらいの人が理解しているのでしょうか。「経営者目線を持て」と言っている先輩や上司は正確にそれを理解してるのでしょうか。

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以前、私が働いていた会社でこんなことがありました。

そこは定期的に合宿をするのですが、会社の具体的な課題に対し、チームに分かれて解決案を考えて全社に対してプレゼンし、役員が1位を決めるのが恒例行事となっていました。

また1位とは別に、社員の投票で決まる「社員賞」なるものもあり、投票の時は「社長になったつもりで選ぶ」のがルールとなっていました。

私は6回ほど合宿に参加していたのですが、確か1回を除いて1位と社員賞とは異なる案になっていたのです。

みなが経営者目線を持っていたら、そんな事態にはならないはず。このズレがずっと不思議でした。

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私は昨年の12月末に今の会社のCOOになり、ちょうど1年が経ちます。

経営者1年生なのでまだまだ未熟なのですが、経営者を1年間やったなりの気づきや見えたものがあったんですね。

そして、自分ができていると思い込んでいた「経営者目線」は、経営者目線でもなんでもなかったと気づきました。

経験として「経営者目線」を誤解して働いていると、なかなか評価されなかったり、経営者のやってることが理解できず、働いていて不満が溜まってしまいます。

そこで、私が今年1年で気づいた本当の「経営者目線」について書いてみました。これを知れば、ずいぶんと働きやすくなるはずです。

本当の経営者目線とは言いつつ、まだ1年目なので至らない部分もあります。ただ、1年目だからこそ、そんな恥を捨てた発信に意味があると考え、思い切って公開してみることにしました。

全社定例の意味

全社定例の時間を内職タイムにしてる人は多いのではないでしょうか。私もそうでした。

しかし、なぜ全社定例をするのかを本質的に理解していれば、内職なんてしないはずなのです。

1つの事実として、経営者は社員に理解されたがっています。なぜなら、なかなか理解されないから。

経営者はあくまで役割であり、その観点で言えば他の社員と平等です。ただ、影響力の高い権限を持っているが故に、すべてを決められる全知全能の神のように扱われたり、「全てを決められて、うらやましい」なんて思われます。つまり、一線を引かれてしまうんですね。

なので、いわゆる「会社」の決定事項に反発が起きたり、陰でグチを言う人が出てくるわけです。

でも、経営者としてはそんな一線を引いて欲しくありません。社員一丸となって会社としてやるべき行動を起こしていきたい。

だから、理解されたくて全社メールで社長からのメッセージを送ったり、週に1度全社で集まって話す時間を設けるんです。

私のチームでは週に1度定例があって、メンバーが懸念点を共有する時間があるのですが、役員で決めたルールや施策に対して「なんでこうするんですか?」とケンカ腰で言われた時もありました。

そして都度説明をしつつ、伝わってないのだなと強く反省します。社内コミュニケーション不足の表れですから。でも背景がわからないと負が増幅してしまうので、丁寧に説明するよう心がけています。

COOになるまで、全社定例は無駄だと思ってました。情報共有するならメールとかチャットで良いじゃん、と冷めた目で見てました。

でも、顔を突き合わせて伝えれば、文字では乗りきらない感情や熱量が伝わる。そこも含めて理解してもらいたくて同じ時間に全員で集まるのだと。

もし全社定例の時に内職を定常的にしている人は、1度真剣に定例に参加してみてください。そして経営者が何を伝えたいのか、裏にある意図を汲み取ろうとしてみてください。

もちろん、社員が理解しようとしないのがいけない、だなんて思っていません。経営者は理解してもらう努力、伝わるための努力を最大限すべきです。

ただ、経営者に寄り添ってくれる社員が増えると、お互いにハッピーになれるし、そんな社員は貴重なので、経営者にとっても重要な存在になれるのではないでしょうか。

なかなか決めない経営者の正体

経営者に意を決して直談判をしたが、何も変わらない…。そんな経験が私にもありました。

それを「経営者の覚悟が足りない」「変化をする気がない」といった精神論で語ってしまったり、「あの人は何も知らない」と知識不足のせいにして否定ばかりしてました。(お恥ずかしい話ですが…)

でも経営者は覚悟が足りないわけでも、何も知らないわけでもなくて、判断する材料が少ないから決められない場合がほとんどだと思われます。

判断するための情報が100%そろうことも無いとは思いますが、あまりにも情報が少なかったり直感に反する提案だと、情報収集や提案の検証に時間がかかります。

もちろん、特に中小企業やベンチャーでは、すぐに判断してすぐに動けるのが強みの1つです。なので一般的な大企業よりかはすぐ決められるとは思いますが、会社の方針であったり大きな施策についてはすぐに決められません。

しかし社員の負が溜まりやすいポイントは、そういった大局に集中しがちです。でも大きな決断はせめて100%近く情報があつまった状態で決めたい。

いっぽう、提案した社員側は「正しいことを言った」と満足はしますが(これまた自分がそうでした…)、提案における情報が少なかったり確からしさが怪しい場合も多いです。するとそこの検証を経営者側がする必要が出てきます。

以上を踏まえて、なにか変革を提案するときは、判断材料を十分に用意するようにしましょう。経営者は左脳的に判断します。右脳的に「なんとなく変えたほうが良さそう」では通りません。そこに注意をすれば、圧倒的に提案が通りやすくなるはずです。

もう1つ、提案した社員が信頼に足るかどうかも重要です。

情報としては足りないけれども、その社員が信頼できればその判断を信じる場合があります。

弊社で具体的にあった件だと、今まで商品の配送用に作っていた特殊な伝票の1つが「実はA4の普通の紙でも良いのでは?」と社員の1人から提案がありました。

その人は、効率化に対して熱量の高いメンバーでした。提案があった時点だと情報が足りなかったのですが、影響範囲などを確認した上でその変更にGOを出しました。

結果として、今までその伝票を作るのにかかっていた時間を1/3程度に短縮することができ、それにかかる手間も大幅に圧縮されました。

信頼は重要な武器です。信頼によって人が動くケースは多く見られます。もし提案がなかなか通らない場合は、自身の信頼力を見つめ直してみるのも1つの手です。

betterはやらない、bestしかやらない

「もっとこうしたほうが良いのに」と会社に対して感じる人は多いのではないでしょうか。

確かに「やったほうが良いこと」はたくさんあります。しかし、経営者は「本当にやるべきこと」しかやりません、betterではだめで、bestを尽くす必要があるのです。

これは弊社では商品開発で顕著に表れました。

「あったほうが良さそう」な商品のアイデアはたくさん浮かびます。しかし商品開発は下手すると数千万円の投資になる可能性もあります。それを「あったほうが良い」だけでとてもじゃないけど決定はできません。

そもそも「やるべきこと」ですらたくさんあるのに、「やったほうが良い」のレベルに投資をするのはもったいない。

なので「やったほうが良い」を「やるべき」だと説得させる必要がありますし、そのためにはやはり情報や信頼が必要です。

費用はコストでは無く投資である

スタートアップやベンチャー企業にいたせいもあってか、費用をコストと捉える思考がこびりついていました。

お金をかけずに効果を出せるアイデアが素晴らしいのであって、お金をかけるのは悪であるとすら思ってました。

しかし、費用は金額に注目するのではなく「リターン」に注目すべきだと経営者になって気づきました。

金額は小さいですが、分かりやすいエピソードを1つ。

ある社員が「ノートPCの画面が小さすぎるので、モニターを買いたい」と要望を伝えてきました。

以前であれば「画面の表示サイズを大きくすれば見やすいですよ」で済ませていただろうなと思います。

しかし、今回はモニターを買うことで効率がどの程度あがるか、そして要望が叶った場合と叶わなかった場合でモチベーションにどう作用するのか、について考えた上で購入を決めました。

「リターン」は決して、金銭的なリターンだけではありません。目に見えない価値についても考えていく必要があるし、それが中長期的に金銭的なリターンにつながってくる。

経営者になってそんな風に考えるようになったなと実感しています。

ルールを設定する意味

評価制度、バリュー、労務規定…会社はルールに基づいて動いています。

会社が大きくなると、その都度ルールが増えていき、窮屈さが増します。必要だとは理解してましたが、なぜルールをどんどん増やしていくのか、そのカラクリが直感的には分かっていませんでした。

経営者になって、ルールはコミュニケーションコストを下げ、会社を効率よく運用していくために必要なのだと理解できました。

ルールがないと、経営者にいちいち確認をしなければいけません。すると組織としての拡張性やスピード感がガクンと落ちていきます。

例えばミッション・ビジョン・バリューは、外に向けてのブランディングのためだったり、エモさで人を採用するためにあるように感じていました。

でも実際は、それは効果の1つでしかなくて、本来の意味は経営者と同じ考えを社員がインストールして組織を効率よく回すためのツールだったのです。

しかし、その分とても影響範囲が大きいです。なので新しいルールは慎重に議論されますし、経営者から大々的に発表されるのです。

ルールを制約だと思わずに、飛躍のためのツールだと考えると、素直にルールを受け入れられるようになると思います。

本当の経営者目線で、より働きやすく

サラリーマンから経営者になって感じた思考的な変化をまとめてみました。

これらを理解しているだけで、普段は無駄だと感じていた社内のアレコレに意味が感じられますし、それだけでストレスが減ります。

また経営者が何を考えているか理解することで、会社で案件を通す際にも有効に働くでしょう。

言いわけっぽく映ったかもしれませんが、実際に私が書いた内容を考えていたり悩んでいる経営者は多いと思われます。そこを理解しているだけでずいぶんとアドバンテージがあるのではないでしょうか。

ぜひ参考にしてみてください。

だいたいスターバックスで、あえてホットティーを飲みながらnoteを書いているので、ホットティー1杯くらいのサポートを頂けたら、こんなにうれしいことはありません。