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2020年を振り返る・・・学生局顧問から #48

顧問の高松です。今年一年、学生局の皆さんの活動にまず心より感謝申し上げます。

学生局への問い合わせが学生さんからある、という連絡から始まったのがこの5月でした。学生局はまだ機能していない頃で、外部からのアクセスもままならない時だと思います。いい天気で、コープこうべで買い物していた駐輪場から折り返し電話で話をすると、相手は高校生というのでまずは驚きました。

当初、局長は私が担当のはずでしたが、それよりも学生自身がやるほうが絶対によい、と、本部とも話し、局長に長野の高校生・宮沢君が就任。その後、彼のネットによる拡大と定例会をつづけてきました。週一回、きちんと運営していましたが、当初は定例会といっても参加は数人で、なかなか組織が固まらないという状態で退局する人もありました。組織作りの方法は局長も宮沢君の経験によるところが大きかったと思います。

その宮沢君の活気あふれるリーダーシップ、その後就任していただいた副局長の菊池さんの温かいサポートによりたくさんの入局申請があり、入局が相次ぎました。当初の入局は申請シートとご本人へのZOOMによる局長との面談、その記録を私も見て、定例会で承認という、比較的慎重に行いました。これは今のコアメンバーとまりました。その後、菊池さんが副局長になった10月ごろから徐々に組織も整い、いよいよ次世代の活躍の基盤が準備されたこと、これが今年の成果であると感じます。

さて、今年は私の生きてきた今までのなかでも未曾有の年という印象をもちます。しかも歴史は新たに作り出されていきます。いつも新しいページに何を書くのかが問われるのです。

コロナという未経験の目に見えない脅威が2月から世界に蔓延し、その後3月下旬にはアメリカ株式が大暴落し、1929年以来の経済の停滞がはじまりました。先が見えない状況に不安がいりまじる。ところが、いま12月28日現在、株式は暴落前の水準以上にもどっています。ドルも円もお札の流動性を高め株式は金融相場になっています。決して企業の業績相場ではないので、経済格差は増幅している可能性があります。実態なき経済回復、実感なく景気回復です。

見えない危機といえば徐々に忍び寄る地球温暖化・環境破壊、この長期にわたる可視化されにくい未曾有の危機こそ重大です。その被害の多くは弱者であり、若者であり、正統的周辺参加に位置する人たちにおよびます。

1929年の大恐慌はニューディール政策で乗り越えたと通常いわれていますが、歴史の検証では、実際には第二次大戦による戦争需要でした。もちろん、そこには、それまでの経済学の常識を覆すケインズの有効需要論がありました。危機とはまず認識され対処方法が議論され方法論が構築され実行され検証される過程をいうのです。危機が認識されない危機感のなさが危機であるという認識から出発しなくてはならない。その言語化と可視化がSDGsです。

豊かな社会では、こうした目に見えない潜在的な貧困、相対的貧困があります。基本的人権の生存権の保障が不十分だとすれば、それは既存の社会構造とわれわれの持つ世界観が不一致を意味します。変更・修正が必要です。

社会構造または世界観の修正とは既存の思想の修正です。パラダイム転換です。修正に必要な哲学と倫理はまだ十分に準備されいるとはいえません。人間はそうした不十分な準備を行動しながら考えてきました。ミネルバのフクロウは夜に飛ぶ、のです。(注:「ミネルバのフクロウは、迫り来る黄昏に飛び立つ」とは、ドイツの哲人ヘーゲルがいった有名な言葉で、Minerva(ミネルバ)はローマ神話の知恵と芸術の守護神であり、フクロウは、ミネルバに仕え世界中の知識を集め、一つの時代が終焉を迎えんとし、古い智恵が黄昏を迎えたとき、新しい智恵を開くために飛び立つ。)

不十分な準備にもかかわらず現実は、GAFAMという巨大な情報産業が国家枠組みをこえて、世界市場と世界政治への影響を強めていることです。個人を保護する既存のコミュニティはこれらの仮想空間に移り、個人は暗号化と番号化されています。すでにパスワードとマイナンバーにより統治機構の中に人々はくみこまれています。統治機構の政治システムもこの中にくみこまれることで、政治と経済が一体化した情報産業が個人の家庭に侵入し、家庭の生活空間は産業の植民地になりつつあります。その功罪は常に監視されなくてはならない。

コロナという脅威はすでにこうした高度情報社会のもつ脅威の中に潜んでいた我々の後術革新と思想が本来隔離してきたウィルスかもしれません。パンデミックではなくインフォデミックにより脅威は増幅され、リアルな国境移動の一方で情報の国境移動という2つの移動が脅威を増幅してはいないでしょうか。

だからこそ、その脅威の正体を見極めなくてはならない。つまりそれを可視化すること、言語化し言語を共有する努力がもとめられます。そこに可能性があります。

バイオンテックとファイザーがワクチンを開発投与しています。日本も近いうちに投与がはじまる。しかし、コロナが人類に与えた問いを私たちはきちんと正しく深い問いとしてたてているのだろうか。なにが問われているのか、深く考える必要がある。

愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ。いや、より正しくは、人類は歴史にも学べていないかもしれない。歴史は繰り返す。つくづく人間はそれほど賢くないと思いつつ、一方、小さな可能性の種を蒔くことができる人間がいることも事実です。(注:「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
と述べたのは、ドイツの名宰相であるオットー・ビスマルクということになっている。)
だが彼が本当に語った言葉は微妙に異なる。正確には、
愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶのを好む。
Nur ein Idiot glaubt,aus den eigenen Erfahrungen zu lernen.
Ich ziehe es vor,aus den Erfahrungen anderer zu lernen,um von vorneherein eigene Fehler zu vermeiden.
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コロナ対応をめぐる日本の政治状況も国民の前に明白になってきました。国会における言語の貧困は民主主義の貧困であり、19世紀以来の資本主義の語ってきた言語とは何だったかを検証する必要があります。

次の時代を大人と若者が協働することで可能性は深まります。最初は傍流でもいつか主流になります。今、学生局は次の時代を準備する傍流です。そこに真摯で謙虚な態度があれば主流になる。学問における態度もそのようなものであり、社会と向き合うときに必要な資質です。

このような学生各人も持つ課題意識を集約し学生局の理念として4つの柱があります。


■学生力
➤私たちは「学生である」ことを「力」とします。若さ,活気,独創性,創造性など,学生が持っている力をもとに,学生相互の自由闊達で協働的なSDGsの活動を推進します。
■予測力
➤私たちは自らがこれからの社会の担い手であることを深く認識し,自分たちよりも更に若い世代の未来をも据え,想像します。また,これから更に変化していく社会,経済,環境について予測し,持続可能な開発を目指します。
■対話力
➤私たちは平和・公正・幸福・正義を規準に、それぞれの立場や考え,行動を尊重し,参加者全員の議論と合意形成を大切にします。また,組織における対話を重視し,共感を生む組織作りを目指します。
■向上力
➤私たちは現状に満足をせず,自らも学び,成長し続けます。日々の進化を望み,よりよい社会の実現に向けて活発な協働をし,向上心を持って活動します。


最後に、21世紀を拓く多くの学生の皆さんの知識と技能と活動に多くを期待しながら、今後もSDGsを基盤にした社会を創造していこうと思います。

文責・学生局顧問 高松昭彦


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