道で会ったお婆さんの “ お彼岸 “
「お彼岸だから、亡くなった人に花を買いに来たんです」スーパー近くの路上で、おばあさんが立ちすくんでいた。
87才、杖をつき足元がおぼつかない。一緒にスーパーへ行った。
店に入ると、丹念に花を選び、おはぎを買った。お礼にお茶をおごってくれ、長年仕事をしてきたことや、亡くなったご主人のこと。ひとりでアパートに住んでいることを話してくれた。
「いろんな人に助けられて生きています。ありがとう」1時間ちょっとの"人間交差点"。おばあさんはそう言ったが、こちらがお礼を言いたい気分だった。
故郷の母への不肖ぶり、亡き者に捧げる花を丹念に選ぶ気持ち、そして、おばあさんと一緒にゆっくりと歩くことで、行き交う人々が、物凄いスピード感で流れていることをあらためて知らされた。
おばあさんの目に、世間はどううつるのか。
別れた後も、おばあさんが強く握りしめた、私の右手の感触かしばらく残っていた。
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