東大の科類別特徴(理科二類編)

久方サボっていた東大の科類別紹介の続編に入りたい。

理科二類は、多くの学生が農学部や薬学部更には理学部の生物系に進学する学科である。勿論工学部に進学する者もいるし、法学部や経済学部などの文系学部に進学するものも一定の割合で存在する。
クラスは理科三類と合同で構成される。理科一類と比較して生物系の要素が強いので、女子の割合も高い。現在の比率がどうなっているかは正確には把握していないが、当時は文科三類に次いで女性が多かった。

どのような学生が在籍しているかと言う点だが、東大の中ではかなり普通の学生が多い。東大の文科一類・二類と比較すると競争的ではないし、理科一類と比較すると陰キャラ・発達障害要素もあまりない。
本当に普通の共学から進学してきた真っ当な人が多い印象だ。中には、生物オタクもいるのかもしれないが、そのような方はごく一部だと考えて良い。
性格的にもマイルドで、世間の目はあまり気にしていないような学生が多い。世間の目を気にするような学生であれば、後述の通りその学力を活かして医学部に進学している可能性が高いからだ。
首都圏と地方の偏りも文系ほどは強くない。以前の記事にも記載したが、東大の文系は明らかに首都圏出身の学生に有利だ。また性格的にもエリサラの子息と相性が良いので特に文科二類は本当に首都圏の学生が多い。
筆者の時代であれば、理科二類に関しては結構全国色んな所から来ていた。
中学受験組の割合も理科一類と比較して少ない。
理科一類は結構がっつり中学受験から馬力を出していないと通らないのかもしれないが、理科二類の場合は高校受験組でもギリギリ間に合うのかもしれない。
筆者も高校入学すぐに進路指導担当から、理科二類なら現役で狙えると言われたのを覚えている。(結局一浪で文科二類に入ることになったが。。。)

東大の理科二類は、ある意味最もコスパが良く、ある意味最もコスパが悪い学科だと考える。

まず「最もコスパが良い」の意味であるが、これは東大の文科三類と並んで東大に入りやすい学科であるからだ。(近年では、東大理系の難化に伴い、文系の全学科よりも難しい可能性もあるが)
例えば2024年度の東大入試では東大の理科一類の合格最低点が326点程度、理科二類のそれが314点程度であり、12点の差がある。たったの12点と思われるかもしれないが、この12点はかなり大きいと考えて良い。
東大入試は、ボーダー付近になると文字通り小数点単位での戦いになるし、理科一類の場合は足切り突破後の二次試験の受験生が2500人程度なので、ざっと見積もって200~300人はこの間に収まっていると考えて良い。(もっと多いかもしれない)
つまり理科一類を受けたがために不合格であったが、理科二類であれば合格していた(かもしれない)受験生が日本にこれくらいの数は存在するのだ。
現役生であれば、浪人の選択肢を、浪人生であれば失意の下で早慶の理工や旧帝の後期に回ることになるので実に業が深い。
また進学振り分けに関しても実は、文科三類ほど冷遇されていない。
文科三類の場合は、法学部、経済学部、教養学部のどれに進もうとしてもかなりの高い点数を要求されるのであるが、理科二類の場合は、理科一類と比較して明確に差別されていると言えるのは実は工学部と理学部くらいなもので、工学部の中でも不人気学科の場合はどの道フリーパス状態なので、あまり変わらないと言える。
今人気の情報系(工学部計数工学科や理学部情報学科)に進みたい場合は、理科二類であればしんどいかもしれない。まあ、理科一類であってもどの道しんどい道のりなので、情報系を狙うのであれば最初から東工大や京大の情報系を狙った方が確実だ。

更に言うと理科二類の場合は、進学振り分けで10名の東大医学部医学科への進学枠が用意されている。これは理科一類にはない特権だ。昔はこれ目的で、理科二類に後期入試で進学している者もいたくらいだ。
このような点を踏まえると、どうしても東大ブランドが欲しいのであれば、理科二類と言う選択肢は悪くない。理科一類に落ちて失意の数年間を過ごすよりかはよっぽど良いだろう。
また農学部や薬学部等理科二類の傍系進学ともいえる進学先に興味があるのであれば、理科二類は最適な選択肢となる(ちなみにこれらの学部に行く難易度は理科一類と二類で同じなので、やはり理科二類には医学部医学科以外は入試が簡単な分、ペナルティーが与えられていると言えよう)

次に最もコスパが悪いという点を説明したい。
確かに理科二類は、あくまで「東大の中では」入りやすい方かもしれない。
だが実態はかなりの難関で、昨今では殆どの国立医学部よりも難しいと言われている。
つまり殆どの理科二類生は、行こうと思えばどこかの国公立医学部に行けたはずの存在なのである。
では肝心の理科二類生の進路であるが、実は結構な割合が文系就職する。
金融とかコンサルが多い。農学部を卒業していた場合は、アクチュアリーやクオンツのような金融専門職ではなく、普通の総合職として就職する者もいる。専門職として合格する可能性があるのは、投資銀行部門くらいだろう。普通の文系と同じ進路を辿ってしまうのだ。
上記の選択肢の場合は、経済的には悪くない。遅くとも30代前半には大台には乗るだろう。
研究職に就く場合はもっと厳しい。農学系や生物系の研究者は工学系の研究者と比較すると潰しは効かないだろう。民間の研究職であれば待遇は悪くないが、アカデミアに残った場合は経済的にはかなり厳しいはずだ。
まとめると文系就職した場合は、普通の文系と同じ進路、アカデミアに残った場合は、もはや食べていくのが難しいという状態に陥る。
どこかの医学部に行けたはずの存在が、上記のような進路に落ち着いてしまうのをかなり寂しく感じてしまうのは筆者だけであろうか?

東大ブランドが欲しいのであれば、理科二類も悪くないが、そうでない場合は医学部進学や、東工大、京都の工学部の方がよっぽど実利的な気がする。

筆者の周りの理科二類生の進路はどうなのよ?ってところだと思うが、かなりの確率で金融やコンサル、たまに総合商社等文系就職している。
農学部を出ても就職先はなかなか確保できないのだろう。

日系の金融機関で東大卒を見れば結構な割合で理科二類だったりする。理科一類であれば、ややオーバースペックかつエンジニアなどの進路に進んでいるのかもしれない。

正直、理科一類ほど書くことがない。本当に普通の人が多い学科、それが東大理科二類なのだ。